もはや直球では正義は描けない
天才的な戦略を駆使して、政界を影で動かすロビイストの実態に迫った社会派サスペンス。銃規制法の改正を巡る、反対派と賛成派のパワーゲームの渦中に身を置く主人公エリザベス・スローン(ジェシカ・チャスティン)の強引な手法と葛藤が描かれる。
監督はジョン・マッデン。新人ジョナサン・ベレラの脚本が見事。マーク・ストロング、マイケル・スタールバーグ、ジョン・リスゴー、サム・ウォーターストーンら、チャスティンと絡む俳優たちのアンサンブルも素晴らしい。
エリザベスは、この女とは絶対に一緒に仕事はしたくないが、その力は認めざるを得ないというタイプのアンチヒーロー。その行動を見ていると腹が立ってくること甚だしい。ところが、ラストのどんでん返しは、大昔のフランク・キャプラの『スミス都へ行く』(39)を思わせるような、アメリカの良心を描いている。
こうした逆転の構図が、この手の映画の醍醐味だとも言えるのだが、そこに至るまでのやり取りが何と複雑怪奇であることか、これが時代の違いということなのかという感慨が湧く。それに加えて、エリザベスの挫折も描かれるので、見る側の心も晴れない。もはや直球では正義は描けないのだ。
先日も、ラスベガスで銃乱射事件が起きたばかり。そうした意味でもタイムリーな公開となった。さて、原題は単純に「ミス・スローン」なのだが、それがどうすればこの邦題になるのか…。