『THE BIG ISSUE JAPAN ビッグイシュー日本版260号』に映画『パプーシャの黒い瞳』のヨアンナ・コス=クラウゼ監督へのインタビュー記事掲載中。
本作は、史上初のジプシー女性詩人となったブロニスワヴァ・ヴァイス=通称パプーシャの生涯を、激動のポーランド近代史に重ね合わせながら、鮮やかなモノクロ映像で描いた映画。ヨアンナ監督は、夫で共同監督だった故クシシュトフ・クラウゼと二人の撮影監督と共に編集室にこもって作り上げたと語っていた。音楽も素晴らしい。
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街で販売員の方を見掛けられましたらぜひご購入、ご一読ください。
橋本治の『完本チャンバラ時代劇講座』(徳間書店)を再読。
二段組み415ページにも及ぶ大冊。1986年の刊行時に購入したものの、あまりにも内容が濃く、こちらの知識も伴わず、飛ばし読みで終わっていたのだが、今回約30年ぶりに読み直してみたら面白くて止まらなくなった。
内容は
「第一講 チャンバラ映画とはなにか」
チャンバラ映画と小説、演劇との関係について。長谷川一夫の流し目について。
「第二講 これが通俗だ!」
大河内傳次郎と阪東妻三郎の『丹下左膳』の違いについて。市川右太衛門の『旗本退屈男』シリーズを中心に東映チャンバラ映画のパターンについて。
「第三講 格調の高さの研究」
「忠臣蔵」を中心に歌舞伎との関係などについて。
「第四講 チャンバラ映画の流れと、青年の研究」
黒澤明の『用心棒』(61)『椿三十郎』(62)、伊藤大輔と嵐寛寿郎の『鞍馬天狗横浜に現る』(42)、二川文太郎と阪妻の『雄呂血』(25)、内田吐夢と片岡千恵蔵の『大菩薩峠』シリーズなどを基に、時代劇における青年像を掘り下げ、男と女の違いについて語り、最後は藤純子主演の『緋牡丹博徒』シリーズにたどり着く。
「終講 あの笑顔、そしてその笑顔」
マキノ雅弘&阪妻の『血煙高田馬場』(37)、あるいは沢島忠の諸作を中心に、“走る”ことを中心とした何でもありのゴッタ煮チャンバラ映画の魅力を語り、最後は阪妻のえもいわれぬ笑顔について語って、幕となる。
終講で、沢島忠監督について書かれた『週刊文春』の記事の引用があったが、この一文が沢島時代劇の魅力を見事にいい当て、あまりに素晴らしかったので孫引きさせてもらう。
~(沢島忠が)昭和32年に一本立ちの監督になってからは、恐ろしいもので、撮る映画のどれも、登場人物が、ひたすら走りに走っているので、映画評論家も観客もビックリしてしまった。
一心太助が走り、若さま侍が走り、お染が久松の手をひいて野崎村のドテ道をこけつまろびつ突っ走り、ふり袖小僧がふり袖をひるがえして町の中をかけぬけ、弥次さんと喜多さんが命からがら全速力で逃げ、どこへ行ったかむっつり右門の旦那を、泡を吹いておしゃべり伝六が追っかけ、
助さん格さんは若いから走ってもフシギはないとして、水戸黄門までがかけだしていたし、爺さんがかけるのは黄門だけじゃなく、大久保彦左衛門までかけ足で、江戸城のなかを、徳川家光まで全速力でつっ走るというのだから、
沢島時代劇は、下(しも)は横丁の犬から、上(かみ)は公方(くぼう)さままで、ヒタスラムヤミに狂気のごとく走り通しているというので人気がわいた。