むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『骸骨ビルの庭』宮本輝(講談社文庫)

2024年08月04日 | 読書
一言で言うと傾聴の物語。
四十七歳で大手電機メーカーを退職した主人公が、不動産屋に就職し、取り壊される予定の骸骨ビルの住人を立ち退かせるために派遣されてきます。
戦前からある骸骨ビルは、一時的に進駐軍に利用されていましたが、そのあとは戦地から戻ってきた阿部轍正のものになり、そこに迷い込んできた戦災孤児たちを育てることとなりました。
今(平成6年)、ビルに住んでいるのは、成人して独り立ちした孤児たちと、阿部とともに孤児たちを育てた茂木という男です。オーナーである阿部は、死んでしまっていますが、孤児の一人である女性が性的虐待を受けていたと訴えたため、世間に叩かれ非業であったと言います。
茂木と他の孤児たちは、阿部の無実を晴らすため、骸骨ビルに残っているのでした。
主人公は、ビルの住人や周辺の人たちの信頼を得ながら、一人一人から話を聞き、それを記録していくのでした。
果たして、主人公は、茂木たちを穏便に退去させることができるのでしょうか。浮かび上がってくる真実とは。
奇妙な絆で結ばれた骸骨ビルの住人達とそれぞれの微妙に異なる見解がみごとに絡み合って、物語の完結へと導かれて行きます。

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