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当人相応の要求(14)

2007年04月13日 | 当人相応の要求
当人相応の要求(14)

例えば、こうである。
 ギターを抱えて生まれてくる人間がいる。
 クリケッツ。ビートルズ以前。
 その放つ音楽は、どこかのどかな音色がする。ロック&ロールという括り、エルヴィス後のなかにいるとしても。
 その眼鏡をかけた細身の音楽家の出身地は、テキサスという土地になっている。広大な土地。熟れた果実がもぎ取られるようにアメリカのものになった経緯。
 成り立ち。テキサス革命というものがあり、メキシコから1830年代に独立をし、テキサス共和国が作られる。アラモの砦というものを介して独立を宣言する側とメキシコの間でゴタゴタがあり、その後、アメリカ合衆国の28番目の州として認められる。
 だからだろうか、環境としてもラテン的なものを受け入れやすい土壌があるのだろうか。バディ・ホリーという音楽家の中にも、そうした気持ちで聴くとリズムが、単なる白人が作り出すビートとは、どこか違っているような気もする。
 彼は、疲れたときに、このバディ・ホリーやロイ・オービソンという音楽家の奏でる、ちょっとさびしげな、そして、しっかりと奥底では暖かい声やギターに 深夜の時間に慰められた記憶が残っている。世界的な、女性の熱狂した叫びを手に入れた4人のイギリスの港町の出の音楽家が、この世界に登場する前の、ケーキのスポンジのような役割の人たち。
 テキサスという広大な場所に思いをはせる。その地の大きな空港は上空からではないと、全体を把握できないというほどの規模をもっている、と彼は耳にする。そのことを理解することが難しくなる。
 また、世の中の公平と不公平を絶えず考えてしまうJ・F・ケネディという存在。彼の最終地。
1963年11月22日。場所はダラス。43歳で大統領。その三年後にはこの権力を有している人たちが大好きな地上と、別れることになる。世界的に放映されるテレビの前で。たくさんの承認の前で。オープンカーに乗る成功者。人生は公平か? 収支は、正常なものなのか? だが、銃声とともに突然、もぎ取られてしまう人生。
 その暗殺に手を染めたという、ある種の犠牲者? オズワルド。その経歴にも不可解な点がかなり残る。射撃の名手という人でもあり、ロシア人と結婚し、そのソ連にも亡命をしようと企てたこともあるらしい。だが、疑いを取り除くことも出来ないまま、容疑を認め実刑に移ることもなく、その青年も(24歳)命を、 同じような形で取り除かれる。
銃のある社会。
 希望にかえること。テキサスの自転車乗り。癌という、ある意味で無制限の負の可能性を持っている病気。彼の家族も数人、その病気に狙われ、より一層身近なものになったが、その領土を設けず繁殖することが目的の病気から、立ち直りツール・ド・フランスという自転車競技の祭典で、7連覇という偉業を成し遂げた 人間も、その土地から生まれたらしい。もっと、詳しく知りたいと彼は、思う。
 そして、彼に眠られない夜に勇気を与えてくれた(生きるってそう困難ばかりではないのかもしれないという程度で。もちろん、最重要なことでもある)歌声をもつ細身の音楽家。その青年ロッカーも22歳という人生の半ばにも到達していない年齢で命をもぎ取られる。天気の荒れる日。同乗者はリッチー・バレンス(ラ・バンバ)というまたもや若い人とミネソタに向かう上空で。




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