goo blog サービス終了のお知らせ 

竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

夕立を壁と見上げて軒宿り 上野 泰

2019-07-25 | 今日の季語


夕立を壁と見上げて軒宿り 上野 泰

にわかに空が暗くなり、「来るぞ」と思う間もなくザーッと降ってきた。とりあえず、どこでもいいから適当な家の軒下にかけこんで、夕立をやり過ごす。猛烈な雨は、句のように、滝というよりも壁のようである。でも、夕立はすぐに止むだろうと思うから、暗い気分にはならない。物凄い降りを楽しむ余裕がある。もっと激しく降れと思ったりする。道を急いでいる人以外には、自然が与えてくれた時ならぬ娯楽だと言ってもよいだろう。そんな軒先に数人の人が溜まると、どういうわけか、誰かが「夕立評論家」になるのも楽しい。「まあ、いっときの辛抱ですよ」「ほら、西の空が明るくなってきた。もうすぐ止みますからね」などと、誰も頼んだわけじゃないのに、解説してくれる人が出てくる。そのうちに、見ず知らずのその人に相槌を打つ人も出はじめて、ほぼ全員の気分がなごみはじめたところで夕立は終わりになる。最近は軒先のある家がなくなってきたから、こうした夕立の楽しさもない。楽しさがないどころか、運が悪いと、左右に家屋はあってもずぶぬれの憂き目にあってしまう。『佐介』(1950)所収。(清水哲男)

【夕立】 ゆうだち(ユフ・・)
◇「夕立」(ゆだち) ◇「夜立」(よだち) ◇「白雨」(はくう) ◇「夕立晴」 ◇「夕立風」 ◇「夕立雲」
午後や夕方、急に曇って来て短時間に激しく降るにわか雨。夏に多い。発達した積乱雲によって起こり、雷を伴うことが多い。通常1時間位でからりと晴れる。「夕立つ」と動詞にも用いる。 「白雨」ともいう。

例句 作者

夕立の早瀬となりし用水路 山王堂正峰
漆黒や鯉の跳ねたる夕立雲 秋篠光広
夕立来て暴れ神輿のなほ猛る 杉本光祥
夕立をにぎやかに来る飛騨乙女 鈴木五鈴
夕立の来さうな烏骨鶏の小屋 山尾玉藻
夕立来る暗さがワイングラスまで 山田弘子
一滴の大きく夕立来りけり 柴田佐知子
一滴の天王山の夕立かな 大屋達治
夕立に独活の葉広き匂哉 其角
言訳に一夕立の通りけり 一茶