国際森林年
美しい森を次世代へ
平成二十三年五月二十二日、新緑の中、天皇皇后両陛下のご臨席を賜り、第六十二回全国植樹祭「(社)国土緑化推進機構と開催県の共催」が和歌山県田辺市新庄総合公園で「緑の神話今そして未来へ 紀州木の国から」をテーマーに盛大に開催されました。
和歌山県は、日本の山々に樹木の種を播き青山となした神が鎮まると日本書紀に記された「木ノ国」に由来し、太平洋の黒潮がもたらす温和な気候がスギやヒノキなどの良材を生み出します。
世界においては近年森林の消滅が著しい状況です。過去二十年間に我が国の国土の四倍にのぼる森林が消滅しているといいます。国連は、本年を「国際森林年」と定め、国土の約七割を森林が占める我が国の取り組みとしては、この年を「森林・林業再生元年」と位置づけ、森林の魅力と大切さへ理解を深め、次世代により良い姿で引き継いでいくために林業の再生、森の保全活動に取り組んでおります。
お大師さまは書物による学問業績も偉大でありましたが、若い頃より大自然の中に、身をおかれてのご修行を度々繰り返されておられます。悠大な山々、広大な大地、静寂の中を流れる清水、小鳥の囀(さえず)り、人力では決して作り出すことの出来ないこれら天然の美は、人間の心の中の花を自ずと開花させ悟りの境地に導くものといわれます。
山鳥時(さんちょうどき)に来って歌って一(ひとた)び奏す。
山猿軽(さんえんかろ)く跳んで伎(き)倫(ともがら)に絶(すぐ)れたり。
春の華、秋の菊、笑(え)んで我に向ふ。
暁月朝風(ぎょうげつちょうふう)、情塵(じょうじん)を洗ふ。
(性霊集巻第一)
「山中に住める鳥は時々我が辺に来て妙音を喋り、山猿木から木へ軽快に跳び廻ること誠に巧みにして人間より以上に勝れた軽業を演じて呉れる。春の色々の花、秋の野菊らその折々に咲き乱れ恰(あたか)も吾を慰める如くである。暁の月澄みわたり、快き朝風さっと吹きわたれば自ずから煩悩妄情(ぼんじょうもうじょう)も洗い去ったかの如く情浄無垢(じょうじょうむく)の清らかな心を味わうにいたるのである。」
お大師さまご自身が、下界の都塵では味わうことの出来ない山中の絶景がもたらす恍惚なる境地を述べられた一文です。
心迷う時、大自然に触れ大宇宙の声を聞く。自然界そのものに備わる仏さまに触れることによって求められる悟りの境地。
私たちは今あらためて、様々ないのちの働きかけによって生かされていることを深く感謝し、自然環境保全活動に取り組み、自然と共生してまいりましょう。
「いかせ いのち」の理念を掲げて
時 処 自 在
全国植樹祭に私も参加させていただきました。序盤は荒天でしたが、天皇皇后両陛下御臨場の折には明るい日が差し、青空が顔をのぞかせる中、両陛下にとってはかわいいお孫さんである悠仁さまのお印。その高野槇を、遥かに高野山を望むこの地でお手播きされるというのは、両陛下にとっても感慨深い出来事であったのではないでしょうか。我々も両陛下を紀州の山々にお迎えし、この得難い瞬間に立ち会わせていただけたことに、大変感激した次第です。
森に代表される豊かな自然は、我々が生きる上で、またいのちを守り育んでいく上で欠くことの出来ないものです。この高野山もまた、お大師さまが心から喜ばれ、また大切にされた尊いものを護持し伝えていく重大な責任があるのだということを、今改めて感じます。(T.R)
参与770001-4228(本多碩峯)
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