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お盆の行事ー切子灯籠

2011-07-17 11:42:06 | 高野山
Koya_bon
 お盆は、旧暦でいうと七月、新暦になぞらえ八月に行われます。
 旧暦の七月の月に入るとお盆の行事がはじまり、この月の一日は、地獄の口明けまたは釜蓋朔日(かまぶたついたち)といい、地獄の蓋が明けられる日であるといわれています。
 地方寺院Eではこの日を境に高々と施餓鬼旗(せがきばた)が立てられ、施餓鬼棚(せがきだな)が設けられて供養がはじまります。この旗が高ければ高いほど良いとされ、里帰りするとご先祖さまが目印とされるからです。
 金剛峯寺唐戸前にも七月三十一日夕刻より八月末日までの期間、純白の和紙などの長い足をつけた切子灯籠が掲げられお盆の訪れを知らせます。
 切子灯籠は盆灯籠ともいわれ、ご先祖様の魂を導く際の目印として掲げられます。その形の由来は、その昔お釈迦さまが盂蘭盆会(うらぼんえ)に出てきた蛇を追い払うために用意させた灯火に向かって飛び込んでくる夏虫がいのちを落とすことのないようにと灯火を薄布で覆わせたという故事によるものであるともいわれています。
 お盆の行事の由来については、『仏説盂蘭盆経』に次のように説かれております。
 お釈迦さまの弟子なかでも神通第一といわれる日蓮尊者という優れた方がおられました。ある時、自分の父母の死後の行方を尋ねると、なんと母は餓鬼道におちていました。
 母の姿は骨となり皮となり日蓮が悲しんで神通力を使い飯を与えようとすると、口に入れる前に火となって食べることが出来なかったといいます。日蓮が釈尊の尋ねると、「七月十五日の安吾の終わりの自恣(じし・修行僧が互いに罪を懺悔する行事)の時に衆僧に百味のご馳走をするのがよい。そうすることによって、現在の父母も七世の父母も、三途の苦しみから救われる」と教えられ、このことから盂蘭盆会が始まったとされております。
 盂蘭盆とは盆語の音写で、倒懸(とうげん)の苦しみ、つまり逆さに吊るされる苦しみという意味で、この法会を行うことによって、この盂蘭盆という言葉が簡略され「お盆」と呼ばれるようになりました。
 高野山内の寺院においてのお盆は、八月十一日から十三日とすることが一般的で、「仏迎え」には、奥之院御廟前にお参りをし各寺院より持ち来る提灯に奥之院の聖火をいただき、各院所縁の墓参をいたします。墓参より精霊は提灯の灯りに宿り寺院に帰って切子灯籠と盆棚の灯籠と移されます。聖火はお大師さまが永遠に生きているシンボルであり、先祖のそのものであるという信仰のもと、迎えられた精霊は三日間、霊供膳や供茶、読経によって供養を重ねられ十三日奥之院へ送られています。
 この日の夕刻、奥之院では、十万本ともいわれるローソクが参詣者によって手向けられ”たましいの灯火(ともしび)”がゆらめきます。
 切子灯籠がそよ風にぞっとたなびく山上、不断経・盂蘭盆などという、物忌み月に入ったという意味での法会が執り行われるこの頃、この世の営みを終えた人たちの乾いた魂をうるおす、夏の祈りに身を捧げてみてはいかがでしょうか。


参与770001-4228(本多碩峯)

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