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ノンステップ台数の調査と報道

2012-10-22 23:51:36 | 秋田のいろいろ
20日付秋田魁新報の社会面・33面に「本県の導入率1.1% ノンステップバス/各社は慎重姿勢」という5段組み記事が出た。
国土交通省がまとめた3月末現在のノンステップバス導入率が、全国平均29.9%、県別では愛知62.5%、東京62.0%の順で高く、最下位は青森の0.8%、秋田は下から2番目の1.1%だった。
導入率の低さについて、秋田県内で路線バスを運行する3社では、雪道に適さないこと、購入費捻出が困難であることを理由に挙げている。
という内容。
毎年発表されるデータで、傾向は変わらないし、今年の話もどこかで既に知っていたので特に目新しい話題ではない。


新たな情報としては、
「(秋田県内のバス運行)各社によると、ノンステップの中古は安いもので100万円以下だが、年式が新しいものは新車並みの2千万円近く。」「新車購入には国、県で上限1500万円の補助がある」
といった程度。
中古でもずいぶんと価格に幅があり、場合によっては補助金で新車を買ったほうが安くなるのか。(記事中にもあるように、補助金購入車は運用する路線が制限されるという制約はある)


で、この魁の記事では、ある点について一切触れていない。
それは「秋田中央交通では、(小田急バスの)中古ノンステップバスを大量に導入している」ということ。

記事中では、「秋田中央交通(秋田市)が定員55人の中型3台を運行する」とあり、3台しかノンステップバスがないと受け取れる。
※この3台とは新国道経由追分方面の路線で使われる「818」「819」「904」を指していると考えられる。
また、見出しにもあるように記事全体として、秋田中央交通を含む秋田のバス会社は、どこも中古を含めたノンステップバス導入に消極的と取れる内容。

ところが、当ブログで以前から取り上げているように、秋田中央交通では小田急の中古のノンステップバスを、おそらく13台(中型12、大型1)も導入しているのだ。
国交省の統計の調査日である昨年度末の時点でも、5台(865、866、870、871、896)の導入を確認しているのに、どうしてそれを無視してしまっているのだろう。


さらに、新聞記事には写真が出ている。
秋田中央交通臨海営業所で撮影した、ノンステップバスの中ドアが開いている写真。(中ドア付近のアップなので、ナンバーは確認不可能)
この写真のバスは、「座席が無地でエメラルドグリーンであること」と「車内の握り棒が黄色と茶色であること」から、新車の3台ではなく小田急バスの中古車の1台だ。
※余談ですが、さらに「ドアが引き戸(ぐるんと開くのでなく)」で「臨海営業所所属」から判断すれば今年5月上旬に初めて見た「915」の可能性が高い。(改めて見ると、中古中型12台のうち865、866、915以外は全部秋田営業所所属であり、偏っているのに気づいた)

新車ノンステップ3台は臨海営業所に所属しているため、本社に問い合わせるなどしてそのことを知った魁の記者が営業所へ撮影しに行ったら、3台とも出払っていて、やむなく中古ノンステップを撮影したのだろうか?
ともかく、写真を撮ったのだから魁側でも中古ノンステップの存在は目に入っていたことになる。なぜ、そのことに記事で触れなかったのだろう。

 いずれも再掲
新車(左)と中古(右)のノンステップバスに外見上の違いは少ない。

小田急中古のノンステップバスのことは抹殺したいかのようにも取れる魁の記事。
その理由というか原因は、国土交通省の10月5日付リリース「平成23年度末 自動車交通関係移動等円滑化実績等について(http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000127.html)」を見ると、分かってきた。
簡単にまとめると、国土交通省の調査は単なる「ノンステップバスの台数(およびその割合)」ではなく、「移動円滑化基準(バリアフリー新法)適合車両の導入状況」の調査なのだった。

バリアフリー新法は2006年末施行で、ノンステップバスはそれ以前から存在しており、中央交通に来た小田急中古も以前のもの。
そのような基準に適合しないノンステップバスは、今回の調査においてノンステップバスのカウントから外れていたことになる。

一方で、「ノンステップバスではないけれどバリアフリー新法適合」という車両(=主にリフトやスロープの付いたワンステップ車か)もあり、実は今回の調査では、その数も調査されていた(ノンステップバス台数はその内数として掲載)。
それによれば、秋田県内ではバス総数615台のうち117台、秋田中央交通(子会社のトランスポート分を除く)では234台中51台が適合となっている。このことについても、魁では触れておらず、あたかもノンステップバスだけの調査かのように見えてしまう。
ちなみに青森市営バスは174台中40台(ノンステップ2)、弘南バスは269台中34台(ノンステップバス0)。


したがって、
国土交通省の調査は「ノンステップバス以外も含む基準適合車の数」だったのに、
魁の記事はノンステップバスだけに着目しているから実質的に「基準適合車のノンステップバスの数だけ」について書いていて、
さらに書き方(基準適合うんぬんには触れていない)からすれば読者には「基準適合外も含むノンステップバスの数」かのように読み取れるものだった。

基準に適合していないからといって、大きな問題があるようには見えない(相違点は座席や棒の配置程度)のだから、多少なりともバリアフリーに貢献していることは間違いない。その存在を完全に無視してしまうのはいかがなものか。
国の調査結果はそのまま掲載するにしても、ただし書き程度でも「この調査は基準に適合した車両数だけを対象にしたもの。秋田県内の一部では基準制定前製造の中古ノンステップバスを導入する動きもある」ことに触れるべきだったのではないだろうか。


こんな記事になったのは、記者が何も(深く)考えなくて表面的なものになってしまったのか、あるいは何らかの意図があってこんな記事になったのか。
最近は一部新聞社・通信社が妄想癖の激しい研究者に踊らされたし、以前からのエネルギー政策や政治などの報道を見せられると、報道を鵜呑みにすることがあってはならないし、それを見極める能力が試されているように思えてしまう。

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4 コメント

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ノンステップバス事情 (taic02)
2012-10-24 23:06:47
各地の積雪量・除雪態勢・道幅等々で条件は異なり一概には比較できないわけですが、国交省東北運輸局が「東北地方におけるノンステップバス導入促進について(http://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/kk/nonstepbus/nonstepbus-index.htm)」という長いレポートを出していて、以下のようなことが出ていました。
・北海道と青森で比べると、気温が高い青森のほうがわだちができやすく、底をこする恐れがある。
・タイヤ周りに氷が付着すると、床下空間が狭いノンステップではチェーン装着に支障が出ることがある(北海道のバスはチェーン自体あまり使わないそうです)
したがって条件的には、東北地方の積雪地はノンステップバスにはあまり向かないというのは、一理あるようです。
一方で、青森や秋田並みの積雪地である山形ではノンステップが多く導入されていて、最終的には各バス会社の判断(つまり経営状態?)もあるとしています。
中央交通でも、中古ノンステップを大量に導入しているので、秋田市内での走行には支障がないと判断しているのでしょう。豪雪地の内陸や山間部は、条件も運行会社も違うので別として。

運行時刻はあまり意識していませんでした。中央交通のダイヤはそれなりに正確な印象を持っています。改めて考えると、いつも3分ほど遅れる便とかありますが…
秋田市営バスでは、バスロケーションシステムを使って運行状況を把握し、ダイヤ改正に反映させていました。バスロケがなく、現場と管理部門のコミュニケーションがあまり取れていなさそうな中央交通においては、その点は期待できません。
遅れていても分かるようなバスロケ(接近表示)があれば便利ですが、バス停に設置するのは費用的に難しいでしょうし、高齢者に携帯電話を使えというのも面倒がられるでしょう。冬道の遅れも発生する土地柄ですから、ダイヤの正確さをいかに保つかの努力はいっそう必要になるのでしょうけれど、難しい問題になりそうです。
あと、利用しやすいダイヤにするため、不均一でなく極力等間隔でダイヤを設定してほしいと願っています。(牛島や大学病院方面など)
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話しはズレますが (Unknown)
2012-10-24 19:45:45
ノンステップバスに関しての報道に関してのブログで、コメントもそちらが中心でしたが、私は記事の内容の方が気になりました。もしかして過去にブログで触れられてらっしゃるのかもしれませんが、ノンステップバスが秋田に適さないという根拠がよくわからないのです。積雪が原因なら青森、秋田はわかりますが、北海道はどうでしょう。新潟は融雪設備が整っていて別格でしょうが、雪国は全てノンステップバスに不適格ということになります。またノンステップバスはバリアフリーの点でも論議すべき内容があると思います。私も時々バスを理由しますが、お年を召したかたが、買い物にバスを使われ、手押しのキャリア一杯に買い物されていることがあります。それ自体全く問題はありません。ただ重くかつお年で力がないため、乗り降りの際ステップごとによっこらしょ。私はバスの運行時間編成は全くの門外漢ですが、バス停間の時間は、乗り降りと制限速度で走る場合の所用時間だと思いますが、時刻表上で秋田市内ではだいたい一分だと思います。それがよっこらしょで一分かかる方もいらっしゃっる。これから、秋田はますます高齢化が進みます。今運転されてる方も運転が辛くなります。今まで、運転して郊外のショッピングに連れていけた、若中年層も不況リストラで県外へ出ていきます。十数年後には高齢者の移動手段はバス中心になると思いますが、その運行時間があいまいになる可能性がある。よろしければご意見をいただけましたら幸いです。勝手なコメントすみません。
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提灯記事 (taic02)
2012-10-23 21:15:43
提灯記事ってやつですよね。
独自の視点での切り込みや主張がなくて。

とりあえずこのバスの件は、魁本社の前をすべてのノンステップバスが車庫の出入りで毎日何度も通っているのだから、3台以上あることに気づき、発表と矛盾しそうなことに気づいて欲しいものです。プロの記者なんだから。
もっと好奇心を持って深く追求してもらわないと困ります。

ネットの情報も玉石混交ですし、誤った解釈が広がってしまうのが怖いですが、とにかく見る側は、書いてあることがすべてではないことを忘れず、情報を見極めていきたいものです。
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日本のマスコミは (バルログ)
2012-10-23 17:45:54
魁に限らず日本のマスコミは事実よりセンセーショナル的な記事や感傷的・情緒的な記事が大好きです。

殆どのテレビや新聞は「官報」の色合いが強く、福島原発の時は日本のマスコミの特徴がモロに出たと思います。

昔なら国民を騙せたでしょうが今はネットがあります。

東日本大震災で大騒ぎの中、密かにネットを監視する法案を通過させました。
日本の政府を含めた官庁とマスコミはネットを恐れています。

you tubeniに圧力をかけて動画を削除される等頻繁に行われているようです。

しかし海外サーバーへUPすれば日本政府は手も足も出ないのに本当におバカとしか言いようがないです。
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