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魁の書体変更

2017-02-26 23:31:25 | 秋田のいろいろ
24日・金曜日の秋田魁新報の1面左上に、大きな「魁」が2文字。

それは社告で「文字が読みやすくなります/25日付から順次導入」との見出し。
「新しい文字を使った紙面を読者の皆さまにお届けします。」
「25日付から順次導入し、3月末までに全面移行する予定です。」
「新しい文字の導入は、新聞製作の基幹システム切り替えに合わせて行います。」
とのこと。

新しい文字については、
「本文に使う文字はユニバーサルデザイン(UD)フォントと呼ばれるもので、一文字一文字が太くなり、見やすくなります。」
「画数の多い漢字でもつぶれないように工夫され、読みやすくなります。」
「拡大した「魁」の文字はその特徴がよく出ています。」

社告の文面も、新書体で印刷されており、上の大きな「魁」は、現行書体と新書体の明朝体を拡大して並べたものだった。
記事(社告)全体をぱっと見た感じでは、たしかに文字の大きさは従来とほぼ同じながら、太くてくっきりしている。
大きな「魁」は、拡大してしまっているので太さはさほど感じないが、「ム」や「斗」の点が明瞭になった。(でも、今後の見出しは別デザインの書体なんだろうから、本文用の書体を拡大して見せても、あまり意味はないのでは?)

以前取り上げたように、秋田魁新報では、「モトヤ」という書体メーカーの「モトヤ新聞明朝」というフォントを本文に使用している。
見出しも基本的には同社の別書体(正方形や太い明朝体やゴシック体)を使用しているようだ。(一部、モリサワの「新ゴ」など他社製も使うケースがある)

青森の東奥日報では、「UDモトヤ新聞明朝」を使っているらしかった。魁のモトヤ新聞明朝の雰囲気を保ちながら、見やすくした書体。

じゃあ、魁でも、UDモトヤ新聞明朝を使うことになったのかと思ったが、そうではない。
東奥日報のモトヤのUD書体では、「さ」や「き」の最後の部分が手書き文字のように分離しているが、魁の新書体では、従来通り曲線でつながっている
ほかにも「あ」「か」などだいぶデザインが違うし、明朝体独特の漢字の横画の止め部分の三角形の「うろこ」が目立たない。
東奥日報よりも魁新書体のほうが全体的に文字が太い印象を受けるし、細部を見ると“モトヤ”らしさがないような…


実は、社告の下では横書きで「明朝体とゴシック体融合」というのも。
「ミンゴ」という新書体も導入するそうで、「明朝とゴシックの長所を併せ持つすっきりした書体です。」「3月1日付から、テレビ欄の番組表で使う予定です。」。
※現行のテレビ欄では、記事本文とは少し違うデザインの正方形のモトヤの明朝体が使われている。

最近は、各メーカーが独自のデザインの新しい書体を作っている。「ミンゴ」もその1つだろうと調べたら、「イワタ」社の製品だった。
ということで、明朝体など本文用書体もイワタの製品と考えられ、「イワタUD新聞明朝」というのが該当しそう。

イワタの公式ホームページによれば、同社が以前から作っていた新聞明朝体を元に、「日本で初めて生まれたUD(ユニバーサルデザイン)を意識した新聞書体です。」「2009年信濃毎日新聞社殿と共同開発」し、「全国で25紙にご採用いただいております。(2015年9月現在)」。
ミンゴも新聞向けに改良した「イワタミンゴNP」を2015年に発表していた。

ちなみに、イワタでは「朝日書体」として朝日新聞のフォントを発売しているが、これはイワタがイチからデザインしたわけではなく、朝日新聞で開発した書体を市販する権利を得ている形のようだ。
また、秋田市をはじめ多くの小学校で採択されている、光村図書出版の国語の教科書では、「光村教科書体」という書体が使われている。その実体は「イワタ教科書体」かと思われる(モリサワの教科書体にも似てるけど微妙に違う)。
イワタはユニバーサルデザイン書体の開発に熱心なようで、電気製品(Panasonicのリモコンのチャンネルボタンなど)や街中の表示類で、同社の文字を目にすることがある。
 (いずれも再掲)

ということで、魁はモトヤからイワタに鞍替えすることになるらしい。
したがって、社告に「拡大した「魁」の文字はその特徴がよく出ています。」とあるけれど、それは「ユニバーサルデザイン書体としての特徴」よりも「モトヤとイワタというメーカーごとのデザインの特徴」にもなってしまっていそう。
比率は厳密ではなく不鮮明ですが、左からモトヤ(現魁)、UDモトヤ(東奥)、イワタUD(新魁)


新書体が導入されるという、25日付紙面。
ところが、1面も社会面も従来のモトヤ書体。

めくっていくと、投稿欄「声の十字路」の10面、「中学自習室」やキップ情報などが掲載される「情報ひろば」の20面だけが新書体になっていた。
翌26日は、日曜で声の十字路はないので、情報ひろば面だけ。
それらの面では、広告と中学自習室(アドビシステムズ製書体を使用)を除き、見出しも含めてほぼ全部がイワタ書体に切り替わったようだ。
紙面上部の「第3種郵便物認可」や日付も、それらの面だけ新書体。(扁平の「秋田さきがけ」は同じ文字)
上が新書体、下が従来書体。「6」の違いが目立つ
「株式」面や「全面広告」「企画特集」の面も、上部は新書体になっている。


新しい書体でも、1段当たりの文字数や幅は変わらない模様。
繰り返しになるが、やはり今までよりはいくらか見やすい。
ちょっと気になるのが、それがユニバーサルデザイン書体の特徴ではあるのだが、割り当てられた枠いっぱいに各文字の線が配置されているせいで、隣の文字とのバランスが若干不自然なこと。
上の3書体比較を見ると分かるかと思うが、「秋田」の「田」は、モトヤのUD書体よりも枠をギリギリまで使っているようで、大きい文字。
他の漢字も同じ傾向で、「県体協最高栄誉賞」みたいな漢字が連続する部分ではきゅうくつそうだし、「男鹿中中学校」と「中」が連続する箇所は、縦棒がつながってしまっている(だからといって「串」とは読めないけど)。
「美しさ」よりも「個々の文字を認識させる」ための文字だから、仕方ないのだろうけど。紙面の制約もあるから難しそうだけど、文字間隔をちょっとだけ広げたら、より見やすいのでは?


全部新書体になるには、あと1か月かかるらしい。ワープロソフトのように、「標準で使うフォント」の設定を変えてしまえば、全部いっぺんに切り替えられそうなのに、そうでもないのかな。
新聞製作基幹システムとやらの制約なのか、書体メーカーとの契約の都合か、急に変わって読者がびっくりしないようにとの配慮なのか。

魁でいつからモトヤ書体が使われていたのか知らないけれど、以前の記事で触れたように、かつてはワープロ専用機で、ほぼ同じデザインの書体が多く使われていたので、なじみのある文字。
これからは接する機会が減ってしまいそう。
現行の小さい見出しのモトヤ明朝。ひらがながきれいで好き
レーザープリンターでA4の紙に印刷した、簡易版の号外でも、これまではモトヤ書体(おそらく新聞用でない、一般の明朝体)が使われていたが、これはどうなるだろうか。

【追記】
この後、テレビ欄(ラジオ欄も)がミンゴになった3月1日水曜日付からは、地域面も新書体に。1面、スポーツ面、社会面は旧書体。
3月7日火曜日付は、1面と社会面も新書体になり、30面中、16・17面のスポーツ面だけが旧書体。
3月11日土曜日付からは、スポーツ面も新書体になった。たまに折り込まれる別刷り特集も新書体が使われており、これで書体置き換えは完了したようにも思われる。予定よりも早まったのか、まだどこかでひっそりと旧書体が残っているのかは不明。

2018年3月9日に発行されたA4版の号外では、モトヤでないフォントが使われていた。おそらく号外もイワタフォントに代わったようだ。

※テレビ欄のミンゴなど関連記事

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2 コメント

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ラ・テ欄が・・・ (よっしー)
2017-03-01 17:58:04
初めてコメントいたします。
今日(3月1日)のさきがけのラ・テ欄開いてビックリ。
予告の「魁」のフォントを見た時はそれほど違いを感じませんでしたが、実際に紙面全体のフォントが変わってみると、結構な違和感ですね・・・
まあ、そのうち慣れるんでしょうけど。
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ミンゴ (taic02)
2017-03-01 20:18:06
はじめまして。コメントありがとうございます。
ラテ欄のミンゴ書体について同感です。
見やすいといえば見やすいけれど、ちょっとうるさいような印象です。
(明朝やゴシックでといった)書体のくくりとして初見の文字ということもあり、慣れていないこともあるのでしょう。

今日からは地域面も新書体になりました。1面、スポーツ面、社会面などはまだです。
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