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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

お盆の風習

2016-08-16 20:46:10 | 秋田の季節・風景
宗派、地域、家庭による違いがあるお盆の風習。
秋田(プラス隣県の津軽や庄内?)ならではのものとして特徴的なのは、盆棚(精霊棚)の上に、モナカの皮状の飾りを吊り下げるもの。「盆灯籠」とか「灯籠っこ」さらに転じて「トロンコ」などと呼ばれる。食品ではないのだが、地元の大手製パン事業者も販売する。
※お盆の風習の関連記事
風習をまとめた2010年の記事
たけや製パンのとうろうの製造風景は2013年冬
中小メーカー製とうろうについて2013年の記事
お盆のお供え物の処理方法(精霊流し)について2009年の記事
鏡天(かがみてん)についての2019年の記事(リンク先後半)

※以下、由緒・意味など詳細な説明は省略します。誤解しているかもしれませんし、地域や寺院ごとの違いもあり得ます。正確なことは、それぞれのお寺などに確認願います。

恥ずかしながら我が家では、お盆の飾りつけに関する細かい風習は継承されておらず、仏壇にモナカの皮を吊るして、花や果物・お菓子を供え、お膳も供える程度。
お盆に菩提寺に行くと、「コバボトケ」とかいう文字を書いた薄い木の板をくれる(※)のだが、なんだかよく分からず、それも仏壇に上げておいていた。※タダでくれるのではなく、お金を納めたのと引き換えにくれる。
中身より形式にこだわっているようでいて、実際にはその形式すら分かっていない家なのだった。

ところが、今年のお盆にお寺に行くと、今まで分からなかった風習の一部が、突然、理解できた。
なぜなら、コバボトケはくれなくて、代わりにカラフルな短冊を渡され、それに意味や飾り方を記した説明書が添付されていたから。
我が家のお寺では、少し前に住職が交代している。新しいご住職の配慮だろう。

カラフルな短冊は、「お盆供養幡」と書かれた封筒に入っていた。印刷された既成品。
無粋で余計な詮索だけど、楽天市場のとある店では、同じものが50組6300円で売られていた。
白い短冊1枚と、カラフルな短冊7枚のセット。7枚それぞれが、同じ配置で5色に区切られていて、書かれている文字(=仏様の名前)が違う。「幡(はた)」っていうからには、本来は布なんだろうか。同じ配色の幕のようなものが、お寺の門にかかっているのを見た記憶はある。

この短冊は「七如来幡」とか「施餓鬼幡」と呼ばれるもので、ヒモを通して盆棚に吊り下げるのだという。7枚の順番は決まっている。モナカの皮といっしょに吊るしてもいいようだ。
施餓鬼とはお盆の法会の名称だそうだから、七如来=施餓鬼ではない。「七如来さんを書いた幡」「施餓鬼で使う幡」という意味なんだろう。

コバボトケなるものは「木羽仏」で、この幡の代用として用いられ、書かれている文字は同じらしい。木羽仏は吊り下げられないから、送り火で燃やすのが本来なのかな。
【2021年8月13日補足・秋田では「木羽仏さん」とさん付けで呼ぶ人もいる。】

説明書を参考に、我が家ではこうしてみた。

ぐっと見栄えがして、いかにもお盆らしい(?)感じ。(本当は無地の短冊1枚も吊るす。位置は決まっていないようだが、中央?)


ここから、またモナカの皮の盆とうろうについて。
秋田では、盆とうろうでおそらく過半数のシェアを誇るたけや製パンだが、過去の記事の通り、それ以外の聞いたことがないメーカー製のものが、秋田市内のスーパーでもちらほら置かれている。
とうろうまでたけやの売り上げに貢献する必要もないと考え、今年は別メーカー製を購入。安かったし。
お盆供養とうろう
秋田駅前のザ・ガーデン自由が丘西武秋田店では、たけやのとうろうは扱わず(落雁などはあった)、別メーカーのものを2種販売。
どちらも5組(10個)セットで、違いはモナカのサイズ。大きいのが260円、小さいのが195円。買ったのは小さいほう。ちなみに、たけやのは多くの店で5組200円台前半。
ラインナップ【17日追記】たけやのものよりは2回りくらい小さい
印象として、たけやのより色がはっきりした感じ。それぞれの色が濃いようで、グラデーションは使われていない。ここ以外の他社も考慮すれば、たけやのが特に色が淡いのかもしれない。

1つ1つのモチーフは、ハスや菊の花、ちょうちん辺りは、メーカーで形に違いがあるものの定番。
珍しいのが、
右は米俵?

きんちゃくと…クルミ? ホオズキ?

左の楕円形の平べったいのは?
両面で色が違うから、幼児用カスタネットを想像してしまった。

このとうろうの製造元は、青森市の「(株)種金 山野辺商店」というところ。
聞いたことがない企業だけど、「山野辺最中種製造所」とも言うらしく、モナカ種すなわちモナカの皮の専門メーカーのようだ。
青森でも、地元大手の工藤パンが盆とうろうを販売して【2019年8月13日訂正・工藤パンではなくかさい製菓?】いる(おそらくたけやと同一の品)中、餅は餅屋ならぬ“モナカ種はモナカ種屋”としての自負で、製造しているのだろうか。

「この品は食べられません」と注記があって、それを前提に原材料の記載はなし。たけやでは、食べられませんとはあるが、原材料は記載。両社とも賞味期限は当然なし。

いっしょに売られていた「大」のほうは、袋のデザインや、中身の雰囲気は小とそっくり。
それなのに、製造元は違った。同じく青森の「八甲堂」というところ。

ところが、八甲堂の所在地は山野辺商店と同一。
別ブランドみたいなもんなんだろうか。どうして大小で分けているのか知らないけれど。

【2018年8月9日追記】
2017年の弘前のスーパーで、たけやのものと、中身も袋もそっくりなとうろうが売られていた。
工藤パンかと思いきや「かさい製菓」のもの。
弘前市内にあって、リンゴのお菓子やバナナモナカを作る、かさい製菓のことか?

2018年の青森の紅屋商事が展開するドラッグストア「スーパードラッグ メガ」の折り込みチラシでは、青森県内の店舗版ではかさい製菓のとうろうが掲載され、秋田県内の店舗版では、代わりに山野辺商店のものを掲載(価格は違う)。
たけやと競合することを避け、かさい製菓は青森県内限定販売という決まりなのか、配慮なのか、そんなものがあるのだろうか。

【2022年8月11日追記】
2022年7月末のイオン東北運営の総合スーパー・イオン店舗(旧・ジャスコ、サティ)の折込チラシにとうろうが掲載。秋田県内の店舗だけでなく、青森県の店舗でも、たけや製パンのとうろうだった。(以上追記)




先日、NHKのローカルニュースを調べていたら、別の地域にまた別の「盆灯篭」が存在することを知った。
高松放送局のニュースにおいて、
「香川県の中部や西部ではお盆に、白い紙で灯籠をかたどった「盆灯籠」という飾りを墓に供える習わしがあります。
訪れた人たちは額の汗をぬぐいながら墓石に水をかけて洗い、「盆灯籠」を墓の前につるしたあと、花や線香などを供え、先祖や亡くなった家族を思いながら静かに手を合わせていました。」
と伝えていた。

さらに調べると、広島県でも同じ風習があるエリアがあるが、こちらはカラフルなもので、お盆の墓地は鮮やかに彩られるそうだ。
香川(讃岐)のほうは、白一色ながら構造はより立派。

東北のモナカの盆とうろうと、由来は同じなんだろうか。世の中には知らないことが多いものです。

【17日追記】改めてネットでモナカ皮の盆とうろうを調べると、同じものが北海道にもあり、その名も「つるし(吊るし)」と呼ばれるそう。(「盆とうろう」でも通じるようだ。函館などのメーカーが販売)
また、青森県でも、津軽のみならず下北にもあるが、南部ではなじみが薄いらしい。南部せんべいの「八戸屋」というメーカーがとうろうを販売しているが、同社は南部エリアの八戸ではなく、下北エリアのむつ市にある。
南部では「背中あて」というすいとんのようなものを、供えたり食べたりするらしい。


【2018年12月4日追記】2018年12月1日付朝日新聞秋田版(東北6県共通?)で、東北地方のご当地最中を特集していた。そこで盆とうろうにも触れていた。
「青森や秋田、山形には、最中の皮でできた「お盆とうろう」と呼ばれる飾り物を仏壇に供える文化がある。」
→「文化」なのか? 「風習」とかでなく。以前調べたところでは、山形県庄内地方では、モナカ皮でなく落雁のようなとうろうのようだったが、山形でもモナカ皮仕様もあるのだろうか。

「青森市でこの最中を6月まで作っていた山野辺辰美さん(78)によると、元々は農家が副業で作っていたもので、山野辺さん自身も秋田県の農家から手焼きの型を買い取り、1960年代に造り始めた。」
→八甲堂=山野辺商店のことだろうか? 「6月まで作っていた」ということは、2018年でやめたってこと?? なお、2018年のお盆用は、秋田でもこれまで同様に売られていた。問題は2019年以降、どうなるか。
そして、その型は秋田から行ったものだったのか、1960年代のものを今も使い続けているのだろうか。

「山野辺さん宅でも昔から仏壇や墓前に供え、お盆が終わると子どもたちのおやつになるのが恒例だった。」
→あれを食べるの!? 食べる人もいなくはないようだけど、製造者の身内がそうさせていたとは!(安全性には自信があるということなんでしょう。建前としては非食品だけど。)
2019年の状況


【2021年8月15日】山形県(庄内?)限定のお盆の供え物を知ったので、ここに追記。秋田や青森にはないと思う。
水餅」なるものがあるとのこと。
ついた餅を水の中に入れておいて、あんこや納豆をからめて食べたり、蓮の葉に載せて供えたりするらしい。他地域ではお盆に白玉だんごを作るし、秋田の一部地域で彼岸に作る「だんし」にも似ている感じがするので、それほど不思議ではないとも言える。
ご当地ではスーパーマーケットでも水餅が発売されるそうで、酒田市のト一屋(秋田にあった同名スーパーの本家)の2021年のチラシには、8月12~13日に「水餅」が2.5合パック734円、5合パック1447円で販売。メーカー名がないので、惣菜部門製か?

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2 コメント

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とうろう!つるし!さげもの! (ポンカン君@土崎)
2016-10-15 04:33:12
ありがとうございます。「なんか毎年ばあちゃんちで見るけど名前を知らないモナカみたいなアレ」の情報をたくさんありがとうございます。
由利本荘市の前郷ではお墓にも飾ってありました。
黄色とピンクのやつ、ババヘラみたいですよね。すきだー。
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印象に残るアイテム (taic02)
2016-10-16 00:50:32
見たことがある人には、名前や意味はよく分からないけれど、印象に残るアイテムですね。
秋田でもお墓にも飾るとは、知らなかったです。西日本のほうのごく一部地域では、紙で作った似たようなものを墓地に下げるらしいです。
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