1年前にオープン直後の様子を紹介した、秋田市の日赤病院・婦人会館跡地の再開発事業でできた「エリアなかいち」。
その1つである新しい秋田県立美術館をアップしそびれていたので、遅ればせながら… ※訪れたのは昨年10月末でした。
秋田県立美術館は、現在は広小路を渡った向かい側、千秋公園の入口にあり、それがなかいちに移転して来る形。
県立美術館には、藤田嗣治が描いた「秋田の行事」という巨大な絵が展示されており、1967年にできた建物はそれに合わせて設計されている。藤田と親交のあった平野政吉という人が深く関わっており、運営する財団法人の名称から「平野政吉美術館」と呼ばれこともある。(という理解で合ってるかな?)
美術館を再開発エリアに移転する話が持ち上がると、賛否両論が巻き起こった。
結局、移転することになって建設が進み、美術館が移転オープンするのはなかいちができて1年以上過ぎた2013年9月28日の予定となった。東日本大震災で工事が遅れたこともあるが、それ以前の問題があった。新築の美術館では、建物完成後に館内の空気が作品に悪影響がない状態になるまで待つ「枯らし」という期間を経てからでないと作品を搬入できないそうで、どのみち再開発完成時に美術館を同時オープンすることは無理だったらしい。(それなのに秋田県は当初、すべて同時オープンさせるような話をしていて、その対応は批判を受けた)
そして、空き屋になる現在の美術館の建物がどうなるかは決まっていない。
新しい県立美術館になる建物は、昨年夏から今年8月25日までは暫定オープンとして無料開放し、一部スペースでは企画物の展示など(有料)を行なっている。「秋田の行事」の移動は8月31日に行う予定。
以上のように、現在は新旧の県立美術館の建物が共存していることになる。区別するため、なかいちにある新しいほうを「新県立美術館」と呼ぶことがあり、地図サイトやさらに県の公式ホームページまでそう表記してしまっている。これでは、「新~」が正式名称なのかと誤解されそう。(当ブログでは、誤解を招かないよう「新しい県立美術館」という表現を用いることにします)
Googleマップの航空写真より。工事中の撮影。上が広小路・千秋公園
新しい県立美術館は、エリアなかいちの北西寄りに位置し、広小路(間ににぎわい広場を挟む)に面している。
設計が安藤忠雄ということで注目され、「さすが安藤先生だ」と感心する人も多いようだけど、個人的にはいまいち好きになれない建物。以下、そんな視点での感想が出てきますので、ご承知おきください。
広小路から
広小路から新しい美術館の建物だけを見ると、それなりに格好はいい。
でも、横には、ガラス張りのにぎわい交流館、背後には安っぽい立体駐車場と淡い色合いの高層マンションがある。そんな中に、コンクリートの美術館がでんと構えていて、まとまりなくごちゃごちゃしているように感じてしまう。
さらに他の方向から美術館の建物を見ると、ただのコンクリートの壁に見えてしまう。もうちょっと周囲との調和を考慮した、温かみや開放感のあるデザインほうが良かったのではないだろうか。
広小路から見ると、にぎわい広場に面した建物北側の1階にひさしやガラスのようなものが見え、そこが玄関のように思える。
しかし、
にぎわい広場の東側から。右が広小路・奥がキャッスルホテル
北側のひさしやガラス部分から出入りすることはできない。そればかりか、植え込みと建物の間の通路のような場所は封鎖されていて、立ち入ることさえできない。
ここが入口
入館者の出入口は、建物南東側「なかいち広場」に面した1か所。コンクリートの巨大な壁にぽつんと穴が空くようにして存在する。
秋田駅から仲小路を歩いてくればほぼ真っすぐだけど、広小路から見えないし、他の建物(にぎわい交流館と商業施設)に囲まれた場所で閉塞感がある。
考えてみれば、なかいちの他の2つの建物も、外の通りに面した出入口はほとんどない。
案内図より。小さい三角印が各施設の出入口
なかいち発のにぎわいをなかいちの中で留めてしまい、秋田市全体へ波及させようという気持ちが感じられない配置、と言っては言い過ぎでしょうか。
館内をざっと。
エントランスホールと螺旋階段
入り口から右へ進むと、巨大で重そうな自動ドアがある(メンテナンスが大変そう)。
自動ドアの中から、エントランスを見る
自動ドアの中は「県民ギャラリー」。展覧会などをやる場所かな。広小路側から見えたガラスは、ここの窓。
県民ギャラリー。この時はついたてが置かれていて、広小路は見えない
エントランスへ戻って、吹き抜けの螺旋階段を2階へ。
出入口を見下ろす
外観と同じく内部もコンクリートそのままの色で統一されている。螺旋階段の部分もそうで、階段の手すりも同系色の簡素な鉄製。ケチっているのではなく、デザイン性を重視しているのだろう。でも、
「らせん階段の手すりの隙間に手をはさまないようお気を付けください」
うーん。そんなにしてまで、デザインにこだわりたかったのだろうか。
僕は芸術について理解できていないこともあるのだが、安全性を度外視してまで見てくれにこだわるというのが理解できない。いくら著名な人物の設計であっても、ここは県が運営する公共施設なのだし。
オープン早々こんな注意書きを設置するくらいなら、設計段階で違う構造にするべきではなかったのか。
2階を進むと「ミュージアムギャラリー」。ここからは幾分温かみのある雰囲気になってくる。

ちょっとしたカフェやソファがあって、窓の外にある「水庭」越しに千秋公園を眺められる。暫定オープンの段階では、人気の場所。
水庭と紅葉の千秋公園
千秋公園が水に浮かぶように見え、よく計算されている。冬は水が抜かれて、代わりに雪が積もるようだ。
ただ、窓の位置が低くかつ窓の天地も狭いので、一般的な背丈の人が立った状態では、外があまり見えない。座って初めて景色が見えるという趣向なのかもしれないが、若干、閉塞感というか圧迫感がある。
大きな窓にして、自然光や千秋公園の風景が目一杯飛び込んでくればいいのに、というのは素人の発想なんでしょうな…
さらに進むと、「秋田の行事」が展示されることになる「大壁画ギャラリー」。
大壁画ギャラリー
この時は、県関係のビデオが上映されていた。
3階から見下ろすこともできる
他に、一般的な展示室がいくつかあって、あとはトイレがあるくらい。(もちろん、来館者が立ち入れない業務用スペースは他にある)
水庭越しに現在の美術館が見える。この建物はどうなるのか
※水庭のメンテナンスの様子
その1つである新しい秋田県立美術館をアップしそびれていたので、遅ればせながら… ※訪れたのは昨年10月末でした。
秋田県立美術館は、現在は広小路を渡った向かい側、千秋公園の入口にあり、それがなかいちに移転して来る形。
県立美術館には、藤田嗣治が描いた「秋田の行事」という巨大な絵が展示されており、1967年にできた建物はそれに合わせて設計されている。藤田と親交のあった平野政吉という人が深く関わっており、運営する財団法人の名称から「平野政吉美術館」と呼ばれこともある。(という理解で合ってるかな?)
美術館を再開発エリアに移転する話が持ち上がると、賛否両論が巻き起こった。
結局、移転することになって建設が進み、美術館が移転オープンするのはなかいちができて1年以上過ぎた2013年9月28日の予定となった。東日本大震災で工事が遅れたこともあるが、それ以前の問題があった。新築の美術館では、建物完成後に館内の空気が作品に悪影響がない状態になるまで待つ「枯らし」という期間を経てからでないと作品を搬入できないそうで、どのみち再開発完成時に美術館を同時オープンすることは無理だったらしい。(それなのに秋田県は当初、すべて同時オープンさせるような話をしていて、その対応は批判を受けた)
そして、空き屋になる現在の美術館の建物がどうなるかは決まっていない。
新しい県立美術館になる建物は、昨年夏から今年8月25日までは暫定オープンとして無料開放し、一部スペースでは企画物の展示など(有料)を行なっている。「秋田の行事」の移動は8月31日に行う予定。
以上のように、現在は新旧の県立美術館の建物が共存していることになる。区別するため、なかいちにある新しいほうを「新県立美術館」と呼ぶことがあり、地図サイトやさらに県の公式ホームページまでそう表記してしまっている。これでは、「新~」が正式名称なのかと誤解されそう。(当ブログでは、誤解を招かないよう「新しい県立美術館」という表現を用いることにします)

新しい県立美術館は、エリアなかいちの北西寄りに位置し、広小路(間ににぎわい広場を挟む)に面している。
設計が安藤忠雄ということで注目され、「さすが安藤先生だ」と感心する人も多いようだけど、個人的にはいまいち好きになれない建物。以下、そんな視点での感想が出てきますので、ご承知おきください。

広小路から新しい美術館の建物だけを見ると、それなりに格好はいい。
でも、横には、ガラス張りのにぎわい交流館、背後には安っぽい立体駐車場と淡い色合いの高層マンションがある。そんな中に、コンクリートの美術館がでんと構えていて、まとまりなくごちゃごちゃしているように感じてしまう。
さらに他の方向から美術館の建物を見ると、ただのコンクリートの壁に見えてしまう。もうちょっと周囲との調和を考慮した、温かみや開放感のあるデザインほうが良かったのではないだろうか。
広小路から見ると、にぎわい広場に面した建物北側の1階にひさしやガラスのようなものが見え、そこが玄関のように思える。
しかし、

北側のひさしやガラス部分から出入りすることはできない。そればかりか、植え込みと建物の間の通路のような場所は封鎖されていて、立ち入ることさえできない。

入館者の出入口は、建物南東側「なかいち広場」に面した1か所。コンクリートの巨大な壁にぽつんと穴が空くようにして存在する。
秋田駅から仲小路を歩いてくればほぼ真っすぐだけど、広小路から見えないし、他の建物(にぎわい交流館と商業施設)に囲まれた場所で閉塞感がある。
考えてみれば、なかいちの他の2つの建物も、外の通りに面した出入口はほとんどない。

なかいち発のにぎわいをなかいちの中で留めてしまい、秋田市全体へ波及させようという気持ちが感じられない配置、と言っては言い過ぎでしょうか。
館内をざっと。

入り口から右へ進むと、巨大で重そうな自動ドアがある(メンテナンスが大変そう)。

自動ドアの中は「県民ギャラリー」。展覧会などをやる場所かな。広小路側から見えたガラスは、ここの窓。

エントランスへ戻って、吹き抜けの螺旋階段を2階へ。


外観と同じく内部もコンクリートそのままの色で統一されている。螺旋階段の部分もそうで、階段の手すりも同系色の簡素な鉄製。ケチっているのではなく、デザイン性を重視しているのだろう。でも、

うーん。そんなにしてまで、デザインにこだわりたかったのだろうか。
僕は芸術について理解できていないこともあるのだが、安全性を度外視してまで見てくれにこだわるというのが理解できない。いくら著名な人物の設計であっても、ここは県が運営する公共施設なのだし。
オープン早々こんな注意書きを設置するくらいなら、設計段階で違う構造にするべきではなかったのか。
2階を進むと「ミュージアムギャラリー」。ここからは幾分温かみのある雰囲気になってくる。


ちょっとしたカフェやソファがあって、窓の外にある「水庭」越しに千秋公園を眺められる。暫定オープンの段階では、人気の場所。

千秋公園が水に浮かぶように見え、よく計算されている。冬は水が抜かれて、代わりに雪が積もるようだ。
ただ、窓の位置が低くかつ窓の天地も狭いので、一般的な背丈の人が立った状態では、外があまり見えない。座って初めて景色が見えるという趣向なのかもしれないが、若干、閉塞感というか圧迫感がある。
大きな窓にして、自然光や千秋公園の風景が目一杯飛び込んでくればいいのに、というのは素人の発想なんでしょうな…
さらに進むと、「秋田の行事」が展示されることになる「大壁画ギャラリー」。

この時は、県関係のビデオが上映されていた。

他に、一般的な展示室がいくつかあって、あとはトイレがあるくらい。(もちろん、来館者が立ち入れない業務用スペースは他にある)

※水庭のメンテナンスの様子