Sketch of the Day

This is Takeshi Kinoshita's weblog.

英国旅行日誌 2004/08/27(FRI)

2004-09-08 | Great Britain
エディンバラ市役所(The City of Edinburgh Council)の都市開発課(City Development)に行く。英国の役所(地方自治体)は、日本のように各セクションが入ったでっかい庁舎がでんとあるわけではなく、セクション毎に街中のビルを間借りしてバラバラと散らばっていることがほとんどである。だから、目指す課ががどこにあるかをまず確認しておかなければならない。2年前の経験から都市開発課のアドレスはわかっていたけど、英国は引っ越しも激しいから安心はできなかった。しかし、幸い目指す都市開発課は2年前と同じ場所にあった。

ここに来た目的は、開発計画(Development Plan)のレポートを入手するためだ。古い19世紀のビルディングに間借りしたその事務所内に入る。いずこの役所も同じで、図筒を抱えたいかにもデザイナー、プランナーといった御仁がなにやらカウンターで順番を待っている。僕もその列に加わる。見ていると、これまた役所らしく、デザイナー氏、プランナー氏への役人達の対応はお世辞にも真摯とは言えない。やがて僕の番が来た。役人氏、こんな所に東洋人が何の用だ?と言う顔で僕を見る。

ストラクチャープランのレポート(Written Statement)を買いたいんですが、と切り出す。「買いたい」と言ったのは、2年前、「欲しい」と言ったら難しい顔をして「文書が必要だ」と言われ、「買いたい」といったらニコニコしてすぐ持ち出してきたという経験による。だから今回は迷わず「買いたい」と切り出したのだ。ところが、やっこさん(いや女性だったが)、2年前に僕が買った古いエディションを「これかしら?」と言って持ち出して来やがった。間髪を入れず「そうじゃない、新しく発行された最新のものだ!」と切り返す。するとなにやら書棚を漁って探し始めたがどうやら見あたらない様子。

その女史、同僚に援助を求めて今度はその同僚がガサゴソと書棚を探す。どうやらストックが尽きたようで、「書庫から出してくるから待て」とその同僚氏。たいして時間はかからなかったが全部で4分冊のレポートで各5ポンド(約1,000円)するという。いい商売してるじぇねーか。同僚氏「これにするか?」と、一番大事なレポートを一冊差し出してきた。僕が全部買うなんてはなから思ってないのだ。「いや全部買う」と50ポンド紙幣*2を差し出す僕。すると「釣り銭がないから、どっかでくずしてこい、これ(レポート)とっといてやるから」とぬかしやがる。反論しても埒があきそうもないので、しかたなく、近所の土産物屋でウォーカーのバターブレッドを買ってお金をくずして再びもどると、またまた長蛇の列。また並ぶのか、やだな。と思っていると、かの同僚氏、今度は違うカウンターで手招きして僕を呼んでいる。にっこりと20ポンドを受け取って、「領収書を書いてやる」となんだか嬉しそう。お金をもらうときだけニコニコしやがる。。。まったく。

たかだかレポート4冊買うのにえらい時間を食った。しゃくだから、役所にあるフリーの資料を片っ端から漁ってきた。無料とは思えない結構いい資料*3がたくさんゲットできたので、まあよしとしよう。しかしこれだけの資料が無料で公開されている(周知徹底を図るため)というのは驚くべきことだ。日本では全く考えられないことである。

午前中の市役所訪問とは正反対に、午後のスコットランド自治政府(Scottish Executive)の訪問は大失敗(収穫ゼロ)であった。スコットランド自治政府というのは国の官庁*4だ。まず、駐車場に入れない。「何の目的で来た?」「通行証は?」。「日本から研究目的できた」と僕。しばらく看守は難しい顔をして、仕方なさそうに「こいつに名前とクルマのナンバーと来庁の目的を書け!」。ようやくゲートが上がる。後ろは大渋滞。でもこういうシチュエーションでも、英国人は文句を言わず黙って待っててくれるので気が楽だ。とりあえず第一関門突破。つづいてレセプションである。怖そうなオッサンがガラス張りのドアの横に座っている。みんななんだか磁気カードのようなものをセンサーにあてがって入っていく。うひゃー、そんなの持ってないぞ。

おそるおそる受付氏に目的を告げる。「National Planning Framework for Scotlandという資料が欲しい」と僕。間髪を入れず「アポはとってあるか?」と受付氏。「いや、ない」と僕。にべもなく「それじゃダメだ」と受付氏。「日本からはるばる来たんだ。今日しか時間がないんだ」と僕。「いやダメだ」と受付氏。。。このまま引き下がるわけにはいかない。しばらく考えて、ザックから資料を取り出して。「ほらこれだ。インターネットでもちゃんと公開されてて、だれでも貰える(買える)ちゃんとした公開資料だ。この現物が欲しいんだ」と僕。受付氏、その資料を手にとってちらっと眺めてからすぐに返して、「まず、コンタクトが必要だ、それがなけりゃだめだ」。じゃ、いま開発課(Development Department)にコンタクトをとってくれ、せめて他に入手できる場所があるか聞いてくれ」と僕。「いやだめだ」と受付氏。。。こりゃだめそうだなと思って、ふーっとため息をつき、あきらめて「わかった」と僕が言うと、その受付氏「すまんな」と一言。

さすが、国の役所だ。ガードが堅い、仕方あるまいと思いつつ、役所を後にし、妻子の待つショッピングセンターへ。妻子はそこで、2年前につくったスコットランド人の友人(母子)と食事をしながら僕を待っていることになっていた。合流して、あえなく退散してきたことを告げると、最近やたらセキュリティがきつくなって、アポをとっていても、手荷物を全部調べられるとの由。テロ対策なのである。まあ、英国の国際的立場を考えれば、スコットランド自治政府といえど、セキュリティにうるさくなって当然である。アポをとっていかなかった俺が間違いだったのだ、と自分に言いきかせ、気持ちを入れ替えて、次の目的地モファット(Moffat)に向かった。途中、スコティッシュボーダーズの美しいまちピーブルズ(Peebles)で小休止。informationでこれまたしこたまフリーの資料をどっさりと仕入れる。とても、ただとは思えない資料ばかりである。庭園案内、フットパス案内、乗馬道案内、フィッシング案内等々。いずれも豪華なカラーのリーフレット。こりゃ、税金高いはずだ。。。

*1 余談だが、Developmntを我々は「開発」と訳すことが多いが、言うまでもなくこの言葉には「発展」という意味もあって、英国でDevelopment Planと言った場合むしろ後者の意味のほうが強いと思う。英国の場合、いわゆる物的な開発行為なんてのは計画全体からすれば微々たるヴォリュームで、大部分は保全系の話や経済発展、社会改善といった内容であるからだ。
*2 一般的な買い物で50ポンド(約1万円)紙幣が流通することはまれだ。差し出すとたいては偽札でないか確認される。べつに悪意はない。
*3 結局この日はストラクチャープラン(edinburgh and the lothians structure plan 2015 finalised plan, action plan, supporting statement and publicity & consultationの4冊)のほかに、Balerno, Hermiston, Colinton, Ratho, Craiglockhart Hills, Shandonの6地区の保全地区特性評価書(Conservation Area Character Appraisal)と計画憲章(Planning Charter)を6分冊(Development Control, Local Planning, Planning Enforcement, Street Naming, Tree Oritection and Access to Planning Information)を無料でゲット。実り多い市役所訪問であった。
*4 英国(UK)は現在、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドによる緩やかな連邦制をとっており、イングランドを除いてそれぞれに議会と自治政府が設置されている。法律も全く異なるし、税率もわずかであるが独自に決めてよいことになっている。イングランド議会・政府というのはなくUK政府(ブレア首相の)がこの役割を担っている。