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壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

畑打つ

2011年03月29日 22時44分19秒 | Weblog
        畑打つ音や嵐の桜麻     芭 蕉

 属目の吟であろう。
 冬の間休んでいた畑を、彼岸の頃から八十八夜にかけて、いろいろな作物の種を蒔くために打ち返すことを、「畑打(はたうち)」という。
 この畑打つ音を耳にしつつ、芽生えて間もない桜麻に眼をとめているのである。
 「音や嵐」と「荒し」という縁語的な発想が、この句を弱くしていることは否めない。けれども、繊細な感受力が働いている点は、評価すべきであろう。
 「畑打つ音や嵐の」が、桜麻を修飾するかたちになっているが、「や」・「の」の助詞の使い方がなかなか微妙なものを持っている。この点も学びたい。

 「桜麻」は麻の名。この名は、桜の咲くころ種を蒔くからだとも、また、麻の花が桜に似ているからだともいわれている。別に、桜麻とは、麻の雄花のことだともいわれる。

 季語は「畑打つ」で春。ここでは「嵐」と見立てられ、縁語的に桜麻に結びつけられている。

    「畑打つ音がしきりにしている。あたりの畑には、桜麻の芽が生えはじめているが、
    風に吹きなびくさまを見ていると、この畑打つ音が、桜の花を吹く嵐とも聞きなされ
    てくる」


      不慮といふ言葉たたみて菊根分     季 己