虎の尾を踏みつつ裾にふとんかな 蕪 村
主人公は、酒呑童子のような人物であっても、わがままな殿様であっても、放埒なお大尽であっても、いずれでもいい。ただ、このような場面と「虎の尾を踏みつつ」の言葉の活用とが、一句の眼目なのである。
蕪村の連句の中にも、
添ふしにあすら(阿修羅)が眠うかがひつ
というのがある。全く同一の発想である。蕪村においては、俳句と連句との世界の間に、芭蕉におけるようなはっきりとした区別が存在しなかったという事実を、この一句からでもうかがうことが出来る。
「虎の尾を踏む」は、非常な危険を冒すことのたとえ。
季語は「ふとん」で冬。「蒲団(ふとん)」は、掛蒲団・敷布団の類一切をいう。羽蒲団は、鳥の羽毛を入れたもの。背(せな)蒲団は、胴着に似た防寒具。腰の冷えを防ぐものが腰蒲団。肩蒲団は、寝るとき肩の冷えを防ぐもの。搔巻(かいまき)は、綿が薄くて小さい夜具。衾(ふすま)は、寝るとき体の上に掛ける四角な夜具。「布団」とも書く。
「無法なわがまま者は、ついに畳の上へ酔い倒れたまま眠り込んでしまった。
これで迷惑なお相手を務めることだけは一応免れた。けれどもこのまま放っ
て置けば、醒めた後の叱責が恐ろしい。そうかといって、へたに蒲団を掛け
て目を醒ましたら、またその怒りが恐ろしい。女は生きた心地もなく、おっか
なびっくり、とにかく裾の方へ蒲団を掛けようと忍び寄ってゆく」
背蒲団の母来て櫛の忘れもの 季 己
主人公は、酒呑童子のような人物であっても、わがままな殿様であっても、放埒なお大尽であっても、いずれでもいい。ただ、このような場面と「虎の尾を踏みつつ」の言葉の活用とが、一句の眼目なのである。
蕪村の連句の中にも、
添ふしにあすら(阿修羅)が眠うかがひつ
というのがある。全く同一の発想である。蕪村においては、俳句と連句との世界の間に、芭蕉におけるようなはっきりとした区別が存在しなかったという事実を、この一句からでもうかがうことが出来る。
「虎の尾を踏む」は、非常な危険を冒すことのたとえ。
季語は「ふとん」で冬。「蒲団(ふとん)」は、掛蒲団・敷布団の類一切をいう。羽蒲団は、鳥の羽毛を入れたもの。背(せな)蒲団は、胴着に似た防寒具。腰の冷えを防ぐものが腰蒲団。肩蒲団は、寝るとき肩の冷えを防ぐもの。搔巻(かいまき)は、綿が薄くて小さい夜具。衾(ふすま)は、寝るとき体の上に掛ける四角な夜具。「布団」とも書く。
「無法なわがまま者は、ついに畳の上へ酔い倒れたまま眠り込んでしまった。
これで迷惑なお相手を務めることだけは一応免れた。けれどもこのまま放っ
て置けば、醒めた後の叱責が恐ろしい。そうかといって、へたに蒲団を掛け
て目を醒ましたら、またその怒りが恐ろしい。女は生きた心地もなく、おっか
なびっくり、とにかく裾の方へ蒲団を掛けようと忍び寄ってゆく」
背蒲団の母来て櫛の忘れもの 季 己