壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

霜夜

2010年11月24日 23時04分23秒 | Weblog
        からからと折ふしすごし竹の霜     芭 蕉

 霜夜のものさびしさの中に、竹の音をとらえ、ぞっとするほどものさびしい感じを出しえている。
 この句は、年代不詳の霜月十七日付、甚左衛門宛真蹟書簡集にあるが、疑いのあるものとされている。しかし、句そのものは、季感の真実に感動してなった、捨てがたい佳句といえよう。

 「からから」は、竹の触れあう音。冴えたものさびしい感じのする擬声語である。
 「折ふし」は、折からの意。「ふし」は、竹の縁語である。
 「すごし」は、①寒く冷たく骨身にこたえるように感じられる。
        ②恐ろしい。気味が悪い。すさまじい。
        ③ぞっとするほど、ものさびしい。
        ④恐ろしいほどすぐれている。すばらしい。
 などの意があるが、ここでは③。
 書簡の宛名「甚左衛門」は、どういう人物か不明。

 季語は「霜」で冬。竹をよく生かしている。

    「霜の冴えた夜。しんかんとした中で、竹の触れあうカラカラという音が
     聞こえ、折も折とて、何とも、ぞっとするほどの寂しさを感じることだ」


      若き子と冬あたたかく夜を帰る     季 己