壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

頼もしき

2010年11月14日 22時36分20秒 | Weblog
          杜国が不幸を伊良湖崎にたづねて、
          鷹の声を折ふし聞きて
        夢よりも現(うつつ)の鷹ぞ頼もしき     芭 蕉

 句の裏に、杜国との再会の情が寓されている。逢うまでに、いろいろ再会の情を想像してはいたが、現実にこうして語り合うと、まことに心強さを感ずる、という気持である。
 この句、どこか短歌的な気息を漂わせていることに注意したい。歌を心に描いていたものととると、『古今集』・恋三
        むばたまの 闇の現は さだかなる
          夢にいくらも まさらざりけり (詠み人知らず)
 などが、発想の契機となったものであろう。

 「杜国」は貞享二年、空米売買の罪に問われて、三河の畠村に蟄居(ちっきょ)、後に保美に移った。
 「不幸」とは、現在のその境遇をさす。

 季語は「鷹」で冬。

    「古歌に、夢と現とは、いくらのちがいもない、と詠まれているが、
     そうではない。こうしてこの地にゆかり深い鷹にも比すべき杜国を
     一目見ただけでも、何とも頼もしく感ぜられることだ」


      をしどりの来さうな池の色となる     季 己