壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

豆腐に落ちて

2010年11月18日 23時19分27秒 | Weblog
        色付や豆腐に落ちて薄紅葉     桃 青(芭蕉)

 軽い感興の句と思う。『山之井』に、芭蕉の師である北村季吟の、
        うすやうか紅葉がさねのかみな月
        落葉や青地のにしきこけの庭
        羽二重は人のそめたる紅葉かな
 のような句があって、この句の源をなしている。
 『俳諧当世男(はいかいいまようおとこ)』にも、
        朝風や紅葉をさそふ豆腐箱     重 秀
 がある。

 「色付」は、「いろづけ」・「いろづく」の二通りに読める。「いろづく」だと、白い豆腐の上で紅葉が色付く意となるが、やはり、薄紅葉が豆腐に色付けをしている感興にとりたい。
 古く「紅葉豆腐」というものがあり、豆腐に紅葉の印を押して売ったものという。もと堺の特産。

 季語は「紅葉」で秋。

    「薄紅葉が、真っ白な豆腐料理の上に落ちてきた。薄紅の色付けをして、
     あの紅葉豆腐をつくりあげようとしている感じであるよ」


      峻介を観て庭園の照紅葉     季 己