壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

身に入む

2010年11月04日 23時14分08秒 | Weblog
          赤坂の虚空蔵にて、八月廿八日、奥の院
        鳩の声身に入みわたる岩戸かな     芭 蕉

 元禄二年八月二十八日、岐阜県不破郡赤坂町の金生山明星輪寺宝光院での作。
 奥の院は、岩をえぐって造ってあったものであろう。鳩は、山鳩として聞くと、「身に入(し)む」が、いっそうひきたつように感じられる。

 「身に入む」は、骨身に徹して痛切に感じられる意で、季語としては、秋気が身に冷え冷えと沁みて、あわれを感じさせるのをいう。属目の実感であろう。
 秋冷のさまざまな感じ方、表現の仕方には種々ある。変人の感じ方としては、冷気が
    
     うそ寒む→やや寒む→そぞろ寒む→身に入む→冷(すさ)まじ

 の順に強くなっていくように思われる。作句の際には、いろいろに置きかえてみて、もっとも効果的、つまり、自分の気持にぴったり合うことばを、あてはめるようにしたい。この他に秋寒む・肌寒む、という語もある。

    「虚空蔵菩薩をまつった奥の院の岩戸のところに詣でると、陰暦八月も
     末に近いこととて、木立に鳴く鳩の声までが、秋気を深く感じさせる
     ことだ」


      身にぞ入むロマングラスの銀化光     季 己