赤坂の虚空蔵にて、八月廿八日、奥の院
鳩の声身に入みわたる岩戸かな 芭 蕉
元禄二年八月二十八日、岐阜県不破郡赤坂町の金生山明星輪寺宝光院での作。
奥の院は、岩をえぐって造ってあったものであろう。鳩は、山鳩として聞くと、「身に入(し)む」が、いっそうひきたつように感じられる。
「身に入む」は、骨身に徹して痛切に感じられる意で、季語としては、秋気が身に冷え冷えと沁みて、あわれを感じさせるのをいう。属目の実感であろう。
秋冷のさまざまな感じ方、表現の仕方には種々ある。変人の感じ方としては、冷気が
うそ寒む→やや寒む→そぞろ寒む→身に入む→冷(すさ)まじ
の順に強くなっていくように思われる。作句の際には、いろいろに置きかえてみて、もっとも効果的、つまり、自分の気持にぴったり合うことばを、あてはめるようにしたい。この他に秋寒む・肌寒む、という語もある。
「虚空蔵菩薩をまつった奥の院の岩戸のところに詣でると、陰暦八月も
末に近いこととて、木立に鳴く鳩の声までが、秋気を深く感じさせる
ことだ」
身にぞ入むロマングラスの銀化光 季 己
鳩の声身に入みわたる岩戸かな 芭 蕉
元禄二年八月二十八日、岐阜県不破郡赤坂町の金生山明星輪寺宝光院での作。
奥の院は、岩をえぐって造ってあったものであろう。鳩は、山鳩として聞くと、「身に入(し)む」が、いっそうひきたつように感じられる。
「身に入む」は、骨身に徹して痛切に感じられる意で、季語としては、秋気が身に冷え冷えと沁みて、あわれを感じさせるのをいう。属目の実感であろう。
秋冷のさまざまな感じ方、表現の仕方には種々ある。変人の感じ方としては、冷気が
うそ寒む→やや寒む→そぞろ寒む→身に入む→冷(すさ)まじ
の順に強くなっていくように思われる。作句の際には、いろいろに置きかえてみて、もっとも効果的、つまり、自分の気持にぴったり合うことばを、あてはめるようにしたい。この他に秋寒む・肌寒む、という語もある。
「虚空蔵菩薩をまつった奥の院の岩戸のところに詣でると、陰暦八月も
末に近いこととて、木立に鳴く鳩の声までが、秋気を深く感じさせる
ことだ」
身にぞ入むロマングラスの銀化光 季 己