壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

昼寝せうもの

2010年07月07日 23時26分43秒 | Weblog
          東武吟行のころ、美濃路より
          李由が許へ文のおとづれに
        昼顔に昼寝せうもの床の山     芭 蕉

 李由(りゆう)へのたよりで、近くの歌枕 床(とこ)の山の縁で、「昼寝せうもの」と発想し、「昼顔」・「昼寝」と音を重ねて興じているわけである。
 「東武」は、武蔵またはその東部の称。また、江戸の別称でもある。
 「吟行(ぎんこう)」は、作句・作歌などのため、同好者が野外や名所旧跡に出かけて行くこと。
 「床の山」は、いま問題の床山ではなく、滋賀県犬上郡にある歌枕「鳥籠(とこ)山」のこと。
 「李由」は、滋賀県彦根にある光明遍照寺(明照寺)の住職。

 季語は「昼顔」で夏。「昼寝」は、現在では夏の季語であるが、当時はまだ季語として意識されていなかったようである。貞享五年六月七日の作と考えられる。

    「床の山に近い、あなたのおられる明照寺の庭には、いまごろは昼顔がさだめし
     盛りだと思われます。その昼顔を見ながら、ゆっくり昼寝などしたいものですが、
     お立ち寄りできなくて、とても残念です」


       板橋は滝の雨とよ夏ゆふべ     季 己