壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

蒲団や寒き

2010年02月13日 22時26分09秒 | Weblog
          李下が妻の悼み
        被き伏す蒲団や寒き夜やすごき     芭 蕉

 『新古今集』巻十九神祇歌の
        夜や寒き 衣やうすき かたそぎの
          ゆきあひのまより 霜やおくらん
 の口調を学んだのであろうと、考えられている。

 李下は、蕉門初期の門人であるが、詳しい伝はわからない。
 「すごし」は、寒く冷たく、骨身にこたえるようなさびしい感じをいう語。

 「蒲団」が季語で冬。これはもちろん掛け蒲団。貞徳の『俳諧御傘』によると、衾(ふすま)は、哀傷や恋に関係が深いものとして意識されたようである。この蒲団も、そういう気持ちが底にあったものであろう。「寒し」も冬の季語である。

    「李下が、連れ添った妻を喪(うしな)って、かなしみに沈んでいる。李下にとって、今は
     独り寝のひきかぶって伏している蒲団が、寒く感ぜられているだろうか、それとも、この
     夜ごろの寂しさが身に沁みているだろうか。寒さ、すごさ相まって、妻を喪うた悲嘆をい
     よいよ深刻なものとしていることであろう」


      底冷えや母の座椅子のきしきしと     季 己