壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

夜着

2010年02月10日 23時14分55秒 | Weblog
        夜着は重し呉天に雪を見るあらん     芭 蕉

 漢詩文のパロディーをめざした発想である。単なる言葉遊びに終わらず、生活感情がにじみ出ているところがよい。代表的な天和年代(1681~1684)の発想である。

 「呉天に雪を」は、漢詩の裁ち入れで、宗の「僧を送る」の詩中に、「笠ハ重シ呉天ノ雪」というのがあるが、これを借りたもの。
 「呉天」は、呉の国の空。呉は、中国の揚子江河口に近いあたり、今の江蘇省の辺をいう。「笠ハ重シ」を江戸生活に引き下ろして、「夜着は重し」としたもの。

 「夜着」も冬の季語であるが、ここは「雪」がはたらいている。しかし、雪はまだ直接の感動源とはなっていない。

    「夜が冴えて、夜着がひとしお重く身に感じられる。どこか遠くでは、さだめし雪が降って
     いるのであろう」
   

      良寛を愛でて信濃は雪の中     季 己