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こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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黙祷

2013-03-11 22:40:35 | 訪問看護、緩和ケア
3月11日。
あれから3年経ちました。

うちのステーションのスタッフも、何人かの実家や知人が被災して、故郷を失ったり友人を亡くしたりしました。

テレビでは、このところずっと震災の特集が続き、やりきれない悲しみの中に、今なお苦しんでいる人々を映し出しています。

2時40分くらいから、ステーションのPCのテレビをつけて、ステーションにいたスタッフで黙祷の時を待ちました。

そして、2時46分その場にいたスタッフと黙祷をしました。

夕方、訪問を終えたスタッフがバラバラと帰ってきましたが、あるスタッフがこんなことを話してくれました。

彼女は、いわゆる認認介護状態の90前後の老夫婦のところに訪問に行っています。
ずっと重度糖尿病やら、その合併症で体調の思わしくない夫の訪問看護をしていましたが、今ではその妻も一緒に訪問しています。

普段は、あまり多くを語らない夫で、自分のことが精一杯で、その他のことは我関せず・・という患者さんです。
認知もかなり進み、健忘や失効もあり、傾眠傾向にある方です。

今日、そのご夫婦と3人で追悼番組を見ながら、一緒に1分間の黙祷をしたのだそうです。
そして、その1分が終わったと同時に、その患者さんが突然おいおいと泣き出したのだそうです。
それはもう「おーいおーい」という感じで泣くと、顔をぐしゅぐしゅにしながら「こんなことは、もう耐えられない。」と言ったそうです。

担当看護師は、言葉をなくして泣いている彼を見守るしかなかったそうです。

彼の身内に関係者がいるわけでもなく、普段は無気力、無関心でひがな横になることが多くなっていた患者さんだけに、驚いてしまいした。

けれど、この患者さんの心の奥底では、この震災での報道がずっとずっと澱のように溜まっていたのでしょうか。

たくさんの人の悲しみが、この老人の心のどこを突き動かしたのか・・。

「おーい、おーい」と号泣する老人の話を、涙ぐんで話すスタッフは、とても複雑な思いで見つめていたのだと思います。

本当の悲しみは、こんなふうに悲しみの波動として伝わるのかもしれません。

こんなふうに、それを受け取って泣く認知症の老人のいる反面、現地では打ち上げられたまま置かれている船の前で、ピースサインを出して写真を撮っている中年女性の話も聴きました。

とても切ない話です。

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