こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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人の役に立てること。

2010-05-24 22:09:32 | 読書、漫画、TVなど
日曜日の昼に、たまたま付けていたテレビ番組で「ルビコンの決断」という新番組をやっていました。

何となく見ていた私は、途中から釘ずけになってしまいました。
あわてて娘に録画をしておいてもらったものを、さっき再生してみました。

今から30年前、日本理化学工業というチョークを作る小さな会社がありました。
ちょうど、先代の後を継いで30代の若き専務がまかされたものの、業績も振るわず仕事への意欲も持てずにいました。

ある日、そこへ知的障害者の養護学校の先生がやってきました。
間もなく卒業の二人の女子生徒を雇用してほしいと言う依頼でした。

当時、知的障害者を雇用する会社は少なく、養護学校卒業後は養護施設へ入所し、そこで一生を過ごすことがほとんどだったそうです。

ただでさえ大変な時期で、一度は「無責任にひきうけられません。」として断ったものの、先生の熱心さと、このまま施設に入る彼女たちへの同情もあって、一週間だけの体験就職として、給与も支払うことを約束しました。

1週間だけでも、働く喜びを体験できれば・・と先生も喜び、本人たちも意欲をみせました。

そして、工場のおばちゃん社員の指導のもと(伊藤かずえ、久しぶりにも見ました・・)まず、出来上がった箱にラベルを貼ることから始めました。
最初は、まっすぐに貼ると言う事が難しく、思うように貼れなかったのですが、彼女たち二人は、一心不乱に仕事を続けました。
無遅刻無欠勤。怒られても、めげることなく。
やがて上手に貼る事が出来、おばちゃんたちにとてもほめられ、うれしそうにしていましたが、そのころには1週間が終わろうとしていました。

「もっと働きたい・・。」彼女たちは呟きました。

一生懸命の彼女たちに心を動かされたスタッフたちが、雇用してあげてほしいと訴え、二人は就職することが出来ました。

このことがきっかけで、年に一人くらいのペースで知的障害者が増えて行きました。

しかし、彼らの障害はそれぞれで、注意力が途中で切れて席を立ってしまったり、ラベル貼り以外の仕事をさせようにも、数が数えられなかったり、複雑な工程が覚えられなかったりと、健常者のスタッフの負担が増えて行きました。
そのうえ、賃金が健常者とあまり変わらない事でも、不満の声が上がってきました。

そんななか、毎日怒られても具合が悪くても、彼らは無遅刻無欠勤で出勤してきました。

「自分が休むとみんなに迷惑がかかるから。」そんな責任感の強さや、ひたむきさ、仕事への意欲はどこから来るのだろうと悩んだ専務は、法事の時にある僧侶にその事を相談しました。

「なぜ、彼女たちは、あんなに仕事に頑張れるのでしょうか?どんなに怒られても誰ひとりやめることなく、仕事に来ます。」
と。

その僧侶は言いました。

それは当り前のことです。人間は究極の幸せといものが4つあります。一つは、愛されると言う事。ほめられると言うこと。人の役に立つと言う事。人に必要とされるという事です。
愛されると言う事以外は、働くことを通じて得られる幸せなのです。のんびり楽しくと言う事だけが幸せではないんです。
真の幸せとは、働くと言う事。会社がその幸せをもたらすことが出来るんです。
」と。

「こんな小さな町工場の会社でも、彼女たちを幸せにする事が出来る。」

専務は、知的障害者の雇用と経営の両立を決心しました。

しかし、当初社員の反応は拒否的でした。
専務は、彼女たちの特性を生かした、作業効率の改善方法を一緒に考え、協力してほしいと頼みます。

そして、専務は色による分量の測定方法を考え、社員達からもつぎつぎとアイデアが出されました。

そして、それをみんな次々と覚えて行きました。

「出来る!」事を覚え喜び励む障害を持つ社員を見て、他の社員も一緒に意欲的となり、さらに新商品の開発にも参加するようになりました。
こうして「キットパス」というガラスでもどこでもかけるクレヨンも開発し、大ヒットとなりました。

現在この会社は新工場も設立し、ほとんどの工程を知的障害者で稼働することが出来ているそうです。

その最初の社員は、今も勤続30年社員として働いています。


その当時の専務であった大山会長も登場されました。

「自分が勉強になったのは、この子たちは人の役に立っている。必要とされていると言う事で、あんなに一生懸命働くことができるということです。
自分も、働く場所をこの子たちに提供していきたい。そういう会社を作っていきたい。」
「ある施設の人によると、知的障害者の人を施設で65歳まで面倒をみると一人2億かかる。小さな会社でもその人達を雇用する事が出来れば、その分の国庫負担の軽減にもなる。ぜひ今後もこういう社会を作っていく必要がある。」
と言っていました。

「人を雇う事は、人を活かす事。」

出来ない方法で仕事をさせるのではなく、仕事が出来るような方法で、仕事を人に合わせればいい。


愛されると言う事。ほめられると言うこと。人の役に立つと言う事。人に必要とされるという事。


究極の喜び・・・。うーん、確かに。  

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