こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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めぐみ在宅緩和ケア研究会「ショートでの看取り」

2013-04-16 21:46:09 | めぐみ在宅緩和ケア関連
最近めっきりご無沙汰している<めぐみ在宅緩和ケア研究会>。
今回は、「多死時代を迎えるにあたり、絶対的に必要になってくるショートステイでの看取りについて、コメントして欲しい。」と言われ、久しぶりに出席しました。

プレゼンターは、入所者の看取りに力を入れている泉区の特養の施設長小山さん。
そして訪問看護代表として私と、小規模多機能事業所代表として中野さんにも声がかかったのです。

各立場から、ショートステイでの看取りについての現状と問題点、これからの課題を話しました。
そのあとには、5つのグループに分かれてのグループワークもあり、かなり突っ込んだ意見がたくさん出ました。

毎回、この研究会には他職種の人が参加します。
今日も、訪問看護ステーションはもとより、施設系の人、患者家族、薬学部の学生、研修医、ボランティア、訪問入浴スタッフ、ケアマネ、などなどいろんな立場からの意見が出ました。

一般的には、まだまだ老人ホームでの看取りも少ない現状で、何故ショートステイにそれを求めるのか、本来看取りを想定して作られていないショートステイにそれを求めるのは無理なのではないか、という意見もありました。
では何故あえてなのか、といえば「多死時代を地域で連携して乗り越えるために。」ということになります。

今までも、うちの関わった患者さんでも、特定の特養ではショート中の看取りは何回かありました。

先日は、30年の在宅療養をしてきた患者さんが、いよいよ状態の悪化に伴い、疲弊したご家族のレスパイトをかねて、定期ショートを利用しました。
状態的には、日の単位の予後は確実でしたが、信頼関係の上に気持ちよくショートを受け入れてくれました。
そして、動かすなら今しかないというタイミングで帰宅し、翌日ご家族に看取られて亡くなりました。

ショート先には往診医が訪問し、帰宅時期の見極めをした上で、家族の希望で速やかに帰ってきたのです。
退所当日から訪問看護が再開し、看取りの体制が整った中での看取りでした。
ご家族は、30年の長い介護生活を、後悔することなく卒業され、本当に感謝してくださいました。
こういう連携ができる施設は本当に少ないですが、施設側がその気にさえなれば、可能なのです。
この施設は、デイサービスでの看取りもかつて行ってくれました。

不思議なことに、こういう問題を(医療ニードの高い患者さんの受け入れに関しても)向き合おうとするのは、老健ではなく特養がほとんどです。
本来医療ニードの高い方でも受け入れられるはずの老健は、年々面倒な患者さんの受け入れを、なんだかんだと拒否してきますから。

プレゼンターの方の施設では、最後まで関わることで職員のモチベーションを上げ、施設全体で看取りへの意識付けを行ってきたようです。
彼は言います。「在宅での見取りを支えるために、ショートでの看取りが今後必要になってくると考え、取り組みを始めました。」と。
この施設では、本入所者への看取りは当たり前に行われていて、ショート中の看取りを模索中のようです。

ここで問題となるのは、
・退所日が不明でベットの確保が難しい。
・家族との関係性がないままでの看取りに対するスタッフの不安。
・在宅ではないアウェイでの戦いになる可能性。クレームなどへの不安も含めて。

また、最初から見取りありきでのショートではなく、レスパイトとしての利用中に起こりうる急変・急死の対策も必要です。

空きベットの確保に関しては、本入所者の死亡や入院などのベットもフルに活用するなど、かなり四苦八苦しながら行っているようです。
家族に対しては、施設側の姿勢・方針・起こりうることへの対応方法を十分説明し、納得した上での受け入れとすること。
看取りに関するスタッフへの勉強会や、実際に行っていくことで、達成感を感じてもらい、抵抗感をなくしていくという既成事実を作っていく、などの対策をこうじている様です。

また、施設によっては「嘱託医の病院へ最後はみんな入院させることになっている。」という話もあり、トップの経営方針をどう転換させるかも課題となるようです。

現状での施設側のリスクはまだまだ高く、環境が整わないで「はいどうぞ。」というわけにも行きません。
施設側も守っていかなければならないし、本有所での「看取り加算」をショートでも適応して欲しいという意見は、その他の意見とともに、小澤先生が国に挙げると言っていました。

ほかにも沢山熱い議論がなされましたが、多くの施設からの参加者は、「検討課題として持ち帰りたい。」という意見が多く、なかなか効果的な啓蒙活動だったのではないでしょうか。

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