こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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河野裕子・永田和宏「たとへば君」を読む。

2011-08-29 23:03:07 | 読書、漫画、TVなど
初めて河野裕子さんの短歌を聞いた日から、私は彼女の短歌に魅せられ、半ばうなされる様に眠りに落ちる寸前にも、その一説が浮かんでは消えたりしています。

以前にも何回かご紹介したこの歌。

 たとえば君
 ガサッと落ち葉すくうように
 私をさらって行ってはくれぬか

河野裕子さん21歳のころの短歌です。

昨年、乳がんが再発、64歳のわかさでこの世を去った歌人。

牧水賞の歌人としても有名で、マスコミでもかなり話題になった方です。
やはり歌人である夫の永田和宏さんが、「四十年の恋歌」のサブタイトルで、相聞歌を含めて、出会いの頃から今までのエッセイや追想、380首の歌をまとめたものです。

  
たとへば君―四十年の恋歌
河野 裕子,永田 和宏
文藝春秋


それぞれのエッセイや、お互いをどう見ているかなど、夫婦の視点で描かれています。

そして、日々の生活の中からほとばしるように生み出される美しい短歌に魅せられていきます。
ただそれは、美しいだけではなく、精神の不調であったり、激しい激情であったりもして、夫婦喧嘩の歌もまた激しいものであったりします。

驚いたのは、乳がんの再発ですでに化学療法も効かないと言われ、ご夫婦は在宅療養を選ばれたことです。

新しい家で、最後の時間を過ごすため、往診医と訪問看護を利用し、ご家族で最後を看取られたと言う事を知り、ますます身近に感じてしまいました。

いくつもの恋の歌、子供を思う歌、夫婦の歌、病気の歌・・・
そして、呼応するように夫の詠む歌。


私の本には付箋がいっぱい貼り付けてあって、何度も読み直したりしています。

死ぬな 男の人に言ふやうにあなたが言へり白いほうせん花
                           河野裕子

ひき受けてやれない私は庭に出て雪だ雪だと君を呼ぶのみ
                           永田和宏


そして絶筆

手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が
                           河野裕子

歌は遺り歌に私は泣くだらういつか来る日のいつかを恐る
                           永田和宏

永田和宏氏 挽歌

あほやなあと笑ひのけぞりまた笑ふあなたの椅子にあなたがゐない


ぜひ一度読んでみてほしい一冊です。