高3生らに突然自衛官募集の封書「まるで赤紙」 自治体が国に忖度?
(河北新報の記事より)
自衛官の募集を巡り、市町村が高校3年生ら入隊適齢者の個人情報を自衛隊に提供するケースが増えている。提供は違法ではないが義務でもなく、自治体が国に「忖度(そんたく)」している格好だ。本人の意に反する利用を防ぐ「除外申請」制度が多くの自治体で未整備の現状も浮き彫りになっている。
■入隊適齢者の情報を提供「除外申請」未整備浮き彫り
今月に入り、提供情報に基づく募集の封書が適齢者に直接送られている。仙台市宮城野区の男子高校生(18)にも3日、自衛隊宮城地方協力本部から届いた。
封書の中には説明会の開催日時や採用日程のほか、自衛隊のリーフレットが入っていた。高校生は自ら問い合わせたり応募したりしていない。「まるで歴史の授業で習った『赤紙』みたい。ちょっと気持ち悪い」と苦笑いした。
防衛省報道室によると、自衛隊が紙などの媒体で市町村から個人情報を取得した全国の市町村は、2018年度の683から22年度は1068に増えた(グラフ)。
国は元々、情報提供には「自治体として応える義務はない」(03年4月の石破茂防衛庁長官答弁)との立場だった。その後、19年1月30日の衆院本会議で安倍晋三首相(当時)が「全体の6割以上の自治体から協力が得られていない」と述べ、潮目が変わったとみられる。
20年12月に「情報提供は住民基本台帳法との関係で問題とはならない」ことを閣議決定し、21年2月には防衛省が各市町村に「(防衛相が)募集に関し必要となる情報を求めることができる」と通知した。国からの通知は「技術的助言」(地方自治法)に過ぎず「従わなかったことを理由に不利益な取り扱いをしてはならない」(同法247条3項)が、この通知後、個人情報を提供する自治体が加速的に増えた。
個人情報を巡り、自分の情報を自身でコントロールする権利が浸透し、意識も高まっている。市町村は今後、除外申請の制度整備を求められる可能性があり、これまでのような情報提供を続けられるかは不透明だ。
三重大の前田定孝准教授(行政法)は20年12月の閣議決定を念頭に「住民基本台帳法で国などが自治体に要求できる台帳の『閲覧』を『写しの提供』と解釈していいのか」と疑問を呈し、「現状は自治体の首長が裁量で提供している。その運営が適切かどうか、市民側も目を光らせる必要がある」と強調する。(以上、河北新報の記事より)
開戦から80年 命奪った「赤紙」風化させぬ
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