空間認識
地理のスキルや知識は日常にあるので、地理を利用しないで生きていくことはできません。ボクの授業では「道に迷わず学校に来て、家に帰ることができるのも地理の能力」と話していました。
空間の認識は、まず、上下左右の認識から始まります。そして、見えないところにも世界があると認識できるようになるのが2歳ぐらいです。
(空間認識)
それまでは、見えるものが世界の全てで、お父さんの顔が見えなくなれば、お父さんはこの世から消滅したと認識します。その認識が徐々に発達し、見えないことと、存在しないこととは別のことだと理解できるように成長していきます。これが、子どもの活動の広がりをもたらします。最初は家が見えないところには行けないのが、家の見えないところにも徐々に活動圏を広げていくことができるようになります。
認知地図
そして活動圏を広げながら、頭の中に独自の地図(認知地図)が出来上がっていきます。最初は身近な地域から始まり、少しづつ拡大し、地図は詳細なものになって行きます。かつて、認知地図の拡大は同心円的に発達していくものでした。具体的な行動範囲の拡大と認知地図の拡大は同時に進んでいったからです。
しかし、子どもたちが多くのメディアに触れ、情報も自らの興味で手に入れることができるようになると、事情は大きく違ってきます。リアルな経験によって認知地図が拡がるだけでなく、テレビやWEBで得た情報によっても認知地図が拡大します。昔も鉄道の駅名を暗記する小学生が話題になったりしましたが、今の子どもたちは日常的に、空間を超越して認知空間を拡げていきます。
(駅名記憶向上委員会ランキング)長い動画なので、全部見る必要はありません(笑)
また、空間認知の拡大は、連続的なものでなく、飛び地的に拡散してくのも昔とは違う特徴です。子どもでも、好きなテーマや地域に興味を持って、非対称的に大人以上の知識を得ることができるのが現代です。
「方向音痴」は「認知地図」の問題
さて、みなさんの中には「方向音痴」と呼ばれたり、「道に迷いやすい」と思っている方がいると思います。「道に迷う」とはどういうことでしょうか。
(方向音痴あるある)
頭の中にある「認知地図」が十分でなかったり、間違っているときに道に迷います。認知地図は常に上書きされているので、チョッとした勘違いで地図が狂うこともあります。ボクも道に迷うことがありますが、そのときは認知地図が反転していたり、現在地を大きく間違っているときです。ですから、ボクが一度迷うと、容易に修正ができません。
迷いやすい人に共通するのは、認知地図の修正が苦手なことと目の前に集中して全体を見通すことができない場合です。
土地勘(土地鑑)
認知地図は行ったことがなくても、この先で道が合流するだろうとか、さっきの道に戻るだろうと予測によって修正されていきます。こういう能力は「勘」が働くということですが、「勘」とは高度な情報処理能力です。ボクは知らない町でも良さげな居酒屋を探し当てる能力があります。全国の街を徘徊して多くの情報が蓄積され、その蓄積から勘を働かせるのです。「土地勘」(正しくは「土地鑑」)※は、その地域について知っているということですが、その発展と言えます。
※「土地勘」は「土地鑑」の誤用となって使われるようになりました。今でも誤用としての認識は高いですが、小説などでは「土地勘」と用いているものも多くあります。
元々「土地鑑」は警察用語で「事件が起きた場所(土地、地理)に関する知識」ということで使われています。「地理や地形の他にも道路の位置や状況、家の並びに生活習慣などの知識を直接の経験をもとに身に付けていることを指す」ということです。
「犯人はトチカンがある者の仕業だ」とか言いますがその「トチカン」は「土地鑑」と書き、「土地勘」は誤って使われたものが定着しているようです。
「鑑」は鑑定の意味で「土地鑑がある」ということは「土地を鑑定できるもの」という意味なのです。
目の前のものしか見ないということは、迷路で目の前の壁だけを見て出口を探している状態です。遠くの山やランドマークを頼りに自分の位置と目的地の方向を探ることによって迷路から脱出できます。言わば「俯瞰的」な視点を持つことが大切だということです。
このような能力は、日ごろから使われていても、意識されないのですが、地理の重要な能力の一つです。
漁師の「山立て」は、今ならGPS
沿岸で漁業を営む漁師さんは、昔から「山立て」といって、陸の目印になる山などから海上の位置を知りました。良いポイントを記憶するために重要な能力でした。しかし、今ではGPSで示されるポイントの「数字」を利用する漁師さんが多いといいます。
(山立ての仕方)
http://www.turikichi.biz/2013/04/11/15650/
(山立てはGPS) 長いビデオなので、前半はとばしてください。6分22秒くらいから「山立て」の説明です。
(近)
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土地勘が本来は土地鑑であったとは知らなかったです。
メンタルマップの研究を私の教え子の織田君がしておりました。
現在は、南カルフォルニア大学で、オンラインGISの講師をしています。
懐かしく、織田君の卒論を思い出しました。
地理学、地理教育に関して空間認識といってもなかなか、一般の人には分かりませんからね、 土地鑑、土地勘のエピソードは、分かり易いですね、