大局を見る
地理で大事なのは、大局を見て総合する「力」
昔見た中国の歴史ドラマのオープニング曲で「碁盤の上に世界がある」と聞いた歌詞が記憶に残っています。古代中国の賢人や英雄は囲碁に強いというのが定番のようです。
ボクは囲碁・将棋、マージャンなど駒の並べ方もわからない頓珍漢ですが、他人のやっている碁を見るとなんとなく優劣が分かるように思うのは空間を見ているからかもしれません。
地理で重要な視点は、大局を見て総合する「力」だと思っています。
「大局観」とは?意味と例文が3秒でわかる! | コトワカ/KOTOWAKA
「局」とは、将棋の盤やそれを使って行われる勝負のことをいいます。また、将棋における勝負数の単位としても使われており、例えば一回勝負することを「一局指す」といいます。そして「局」に「大」をつけた言葉が「大局」。この場合の「大」は「大きい、重要な」という意味ではなく「全体を広く見渡す」という意味になります。また「観」とは「ものの見方や捉え方」を表します。
地理は「アセスメントの科学」とも言われる
三国志の軍師、諸葛孔明は地理の素養がありました。赤壁の戦いで風を吹かせたという話は、孔明が気象を読み、地形を考えて風の吹く時を予測したのだと考えられます。
地理は「アセスメントの科学」と言われることがあります。
現在の状況から将来を見通して予測することが得意だからです。「防災」などはまさに予測の科学です。
アセスメント(assessment)は「評価」「査定」などと訳されますが、「目で見てすぐにわからないものを理解すること」などという説明もあります。
政治的配慮で教科書の記述が変わる「歴史」の危うさ
ボクは、歴史に物足りなさを感じます。「歴史観」というと聞こえが良いのですが、都合によって歴史的事象を勝手に解釈しているように思うからです。安倍政治の下では、教科書の記述にも政治的配慮が強制されました。閣議決定された事項は教科書への記述が義務付けられました。
教科書検定でコロコロ変わる「領土」の記述
20年ほど前に、ボクが関わった教科書検定で「日本の領土問題は、北方領土問題だけ」と言われました。「竹島(独島)」や「尖閣諸島(魚釣島)」と「北方四島」は違う問題として書き分けるようにと意見が申し渡されました。
現在外務省は「日本が関わる領土問題は,ロシアとの間の北方領土問題及び韓国との間の竹島問題です 」としていて、尖閣諸島の領有権は明確で「問題ではない」という立場です。「問題」はあるのに、「問題」としないということです。
これは科学的とは言えず、一つの物語を創造しているということです。
「固有の領土」って、いつから「固有」になった?
韓国は国際的な会議や学会で独島(トクト・竹島)が昔から高麗(コリョ)や朝鮮が領有していたという資料集を作り配っていました。韓国はエビデンスによって国際社会にアピールしたのでした。日本政府も韓国の動きに対応して、パンフレットをを作成していました。日本政府は「固有の領土」と主張しますが、領土のほとんどは「固有の領土」と言われます。北海道や沖縄はかつては「日本」ではありませんでした。
(江戸時代、天保年間の日本地図)
日本が一つの「国家」になったのは、明治になってから
そもそも日本がいつから日本なのかが問われます。いずれも明治以降、日本が一つの国家として成立して北海道も沖縄も日本の領土となったのでした。
(私たちの祖先は「下総国」の民であり、「日本国民」ではなかった)
革命によって「国民国家」を作った世界の国々と違い、天皇を利用し、学校教育や軍隊を通じて「国民」という意識を植え付けていった日本は、天皇制によって成立する、異質な国家
明治政府は琉球王国を併合するため、琉球王国を一度「琉球藩」としてから、廃藩置県で沖縄県を作り上げました。国号としての「日本」は8世紀ごろに表れたと言われていますが、日本が国家として意識されたのは幕末以降のことといえます。明治になると「大日本帝国」としての国家意識を形成するため、天皇を利用し、学校や軍隊を通じて国民意識を醸成したのでした。日本は世界の多くの国が国民国家として成立している中で、天皇制によって成立する、異質な国家でした。
その「国民国家」も世界中でゆらいでいる。米国も頼れず、国連も弱体化した今、世界の大局を見た外交が日本に求められているのに…
21世紀の現在、世界の国民国家は揺らいでいます。ニューヨークを襲ったテロや、「IS」、最近ではロシアのウクライナ侵略によって世界の国家秩序も大きく変化しています。一言で言うと「領域国民国家」の限界が見えてきたと言うことです。このような世界情勢の中で、外交力を弱めてきた日本は、失われた信頼を回復し、外交力を再構築する必要があります。米国も頼れず、国連も力を弱めている今、世界の大局を見て外交を進めていく必要があります。(近)
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近現代史をほとんど知らないし、教科書から、負の出来事が消え、嘘の歴史が通説化しています。
一言でいうと、江戸時代の鎖国は悪い。 明治維新で近代化し、強い日本を作り出したという歴史観ですが、
明治維新から77年して敗戦、敗戦から77年経った現在を振り返ると、貧困や戦争への危機が、人々を苦しめているのは変わりません。
大局から見るためには、歴史を知ることから。 歴史や地理の授業が暗記だけに終わっていては、いつまでたっても、自分の頭で考えることが身につきません。
江戸時代にだって評価すべき点は多々あります。 対外不侵略で長期にわたる平和がありました。 明治になり、徴兵制が敷かれ、朝鮮、中国、東南アジアに侵略し、いまだに負の遺産というべき差別や蔑視があります。
大局からみると言っても、疑問や意見が許されなければ、自分の頭で考えることをやめ、時の政府が作り出した「嘘」が「義務」になり、意見を言っただけで、「非国民」となる。
教科書だけでなく、疑問に思ったことはネット情報を鵜呑みにせず、調べてみるのが必要じゃないでしょうか? 最近は新書で研究者の書いたものがたくさんあります。
自分の頭で考えると、「意識高い系」と敬遠されちゃいますが、
騙されない歴史認識を身につけることは、大事です。