Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「走ることについて語るときに僕の語ること」村上春樹著(文藝春秋)

2007-11-01 | 村上春樹
「走ることについて語るときに僕の語ること」村上春樹著(文藝春秋)を読みました。
1982年秋、「羊をめぐる冒険」を書き上げて以来、走ることと書くことは、村上春樹さんの中で分かつことのできない事柄となっているそうです。
アテネでの初めてのフルマラソン、年中行事となったボストン・マラソン、サロマ湖100キロ・マラソン、トライアスロン。
「走ること」について語りつつ、小説家としてのありようから創作の秘密、そして村上さん自身の物事への考え方について真摯につづられた最新作です。

「一度ルールを破ればあとはずるずるとだめになっていくだけだ」と
自分で定めたルールを守り抜く気概の強さ、自分の誇りを守る意志の強さを感じました。走ることについても、小説を書き上げることについても。
丹念に準備してもずるずるとタイムが落ちていくこと、自分の体の老いについて。
でも「少なくとも一度も歩かなかった」ことを誇りにしたい。
タイムが落ちても自分の納得のいくレースがしたい。

「結局のところ、僕らにとってもっとも大事なものごとは、ほとんどの場合、目には見えない(しかし心では感じられる)何かなのだ。そして本当に価値のあるものごとは往々にして、効率の悪い営為を通してしか獲得できないものなのだ」

20年以上走り続けてきた村上さんの言葉、心にしみじみ響きます。