Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「オスマン帝国500年の平和」林佳世子著(講談社)

2009-02-16 | トルコ関連
「オスマン帝国500年の平和」林佳世子著(講談社)を読みました。
「イスラムの旗」を掲げながらそれを利用し、多宗教と他民族を束ね、500年にも及ぶ長期の平和と安定を可能にしたオスマン帝国。
大帝国はバルカン、アナトリア、アラブ世界を席巻した広大なものでした。
その独自の中央集権体制の仕組み。強力なスルタンが広大な地域を征服した成功のあとに続いた、大宰相を中心に官人たちが支配する長い時代。
「多民族の帝国」が、「民族の時代」の到来によって分裂するまでの歴史が描かれています。
シリーズ「興亡の世界史」の第10巻です。

歴史の部分は申し訳ないのですが、教科書的なので斜め読みしたのみ。
でも歴代スルタンの治世は澁澤幸子さんの著書で、スレイマン帝の治世は夢枕獏さんの小説「スィナン」で・・・など今まで読んできた小説の舞台があちらこちらに出てきておさらいができました。

初耳だったのが「平時の在郷騎士たちは「ティマール」という農村からの徴税権をもつ徴税官だった」ということ。
少年を兵として税のかわりに差し出す「デヴシルメ」(彼らはのちのイエニチェリ(軍兵)となる)は有名だと思うのですが、ティマールというのははじめて聞きました。スルタンから与えられる褒賞はこの「ティマール」という形で下されたと。
これにはあくまで徴税のみで、所有権は含まれないそうです。ふむふむ。
ほかにも非イスラム教徒に課す人頭税「イスペンチ」など、帝国にはさまざまな税制があったようです。

そういえば村上春樹さんの著書「図書館奇譚」で「オスマン・トルコ帝国の収税政策」を調べようとした主人公が、図書館の地下の書庫に降りていきやがて牢屋に入れられてしまったのを思い出しました。
私は「脳みそをちゅうちゅう吸われる」ことなく、この収税の仕組みを知れてよかった!?

それからもうひとつ新しく知ったことが「ハレム」。
ハレムはもちろんスルタンのものが最大でしたが、一般の富裕なエリート層も持っていたということ。
一人の男性のもとに妻(複数)、母、女奴隷、女性使用人、ごくまれに宦官、そして子どもたちからハレムは成っていたそうです。
うーん、もし自分がそういう複数の妻の中のひとりだったらと思うと辛いな。

それからオスマン帝国では女性の財産権は保障されていたそうです。
財産が夫と妻で区別されているのはイスラム法の大きな特徴だそう。
女性は女性行商人などを利用し、不動産ビジネスなどに乗り出し自身の財産を運用・蓄財していたそうです。
女性は虐げられていたのかと思いきや、経済的にもたくましかったんですね。

オスマン帝国の終焉から現在まではさらっと触れられているのみです。
巻末には年表もあります。
一緒についているミニ冊子も情報満載でなかなかお得。
林さんおすすめのトルコを舞台にした映画「タッチ・オブ・スパイス」探してみようっと。


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3/10
映画「タッチ・オブ・スパイス」を見ました。
イスタンブールを強制退去させられたギリシャ人の家族を描いたもの。
トルコではギリシャ人と呼ばれ、ギリシャではトルコ人と呼ばれ・・・ふたつの国にまたがった複雑な心境が描かれています。それからスパイスを使った料理がとてもおいしそうです。
主人公の父が「わかるだろう?特別なんだ、あの街は・・・」とイスタンブールについて涙ぐみながら語る場面が印象的でした。
私もイスタンブールは一度しか行ったことがない街ですが、新旧・東西いろんなものが混在していてとても印象深い街でした。またいつか行ってみたいなあ。

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