Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「不運な女」リチャード・ブローティガン著(藤本和子訳)新潮社

2005-12-05 | 柴田元幸
「不運な女」リチャード・ブローティガン著(藤本和子訳)新潮社を読みました。
サンフランシスコ、カナダ、バークレー、アラスカ、ハワイ、シカゴ…『アメリカの鱒釣り』から20年、47歳の孤独な男が、死んだ女友だちの不運に寄り添いながら旅をします。
日本製のノートに書きつけられた、過ぎゆく時間をみつめる旅。
ひとり娘が著者の遺品のなかから発見した小品です。
フランスでは94年に出版されていましたが、日本訳は今年の秋に出版されました。

ブローティガンの比喩の巧みさ、想像力のはばたきには本当に感嘆するばかり。
馬蹄の詰まったバケツを置いたような音ですわる。
アリスのウサギの座る陪審員席。
スーパーのレジでは前の女性が鉄道から荷をおろす。
龍が原因による骨折。

作中では主人公は首をつった女性の部屋に住み、癌を宣告され死ぬという意識になじんだ女友達に思いをはせるなど、「死」のイメージがあふれています。
この作品の直後に著者がピストル自殺したことをしのばせる作品です。





「世界の肌ざわり」柴田元幸・斎藤英治編訳(白水社)

2005-12-05 | 柴田元幸
「世界の肌ざわり」柴田元幸・斎藤英治編訳(白水社)を読みました。
編訳者が偏愛する小説を集めた、現代アメリカの短編集。収録作品は以下のとおり。

ラザール・マルキン、天国へ行く(スティーヴ・スターン)
世界の肌ざわり(リチャード・ボーシュ)
見張り(リック・バス)
アット・ザ・ホップ(ロン・カールソン)
シュロイダーシュピッツェ(マーク・ヘルプリン)
T・S・エリオット不朽の名作をめぐる知られざる真実―完全版書誌に向けてのノート(シンシア・オジック)
母の話(ジェイムズ・エイジー)
フーディーニ(シリ・ハストヴェット)

個人的にいいなと思ったのは「アット・ザ・ホップ」。
多感な少年時代の語り口の翻訳が柴田さんは本当にうまいなあと思います。
「ラザール・マルキン・・・」の天国の描写はなんだかとても温かく美しくて、印象的でした。
「世界の肌ざわり」はおじいさんの孫に対する想いにじわっとくる短編。
跳び箱飛べたのかな?
「見張り」は気の狂った息子、裸の女たちと暮らす70代の父、倦怠感を抱える自転車乗り、と不思議な風合いの短編。
どれもカラフルで面白い短編ばかりでした。




「おとなの自由研究」デイリーポータルZ編集部(アスペクト)

2005-12-05 | 柴田元幸
「おとなの自由研究」デイリーポータルZ編集部(アスペクト)を読みました。
毎日更新されるサイト、デイリーポータルZに掲載されたレポートを再構成したもの。
野草でつくるカフェ飯、八丈島に光るキノコを見に行く、糸電話で市外通話など、楽しくてマネしてみたい企画がもりだくさん。
個人的には林さんのレポートがお気に入り。