Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

営業列車で線路異常を検知するシステム、実用化へ。

2006-06-11 17:12:56 | 鉄道(地方・専用線など)
今日の朝日新聞に興味深い記事が掲載されていた。

加速度計(振動計)と全地球測位システム(GPS)、パソコンを組み合わせて走行する営業列車に伝わる微妙な振動の違いで線路を点検するシステムが実用可能と判断されたという。
しかも床に置くだけだから車輌改造費も不要、装置自体も40万円と安価。

通常、JRや大手私鉄では線路の保守点検に精度の高い計測専用車を使用するが、中小私鉄ではそんな車輌は「高嶺の花」。
で、どうしているかというと手押しの簡単な計測機械を使用しているが、年に何回も測れる訳でもなし、しかも精度はどうしても低くなる。
機械が使えなければ人力で、というのは自然な流れだが、中小私鉄の線路計測について触れられることは殆どなかったので意外にすら思えた。

今回のシステムはいずみ鉄道の協力を得て研究が進められ、最終的には異常個所を誤差約20メートル以下の範囲まで絞り込み、線路狂いの計測についても、数ミリ単位で分析できる所まで持ちこんでいる。
ただ、安価、車輌改造が不要という反面で急ブレーキで急激に速度が変化した場合振動も変化するので異常を判断しにくくなる。今後の課題として精度向上と風速計を加えた風の計測を目指すことになる。

列車の速度が大手の鉄道に比べて遅いため、つい見落としがちな中小私鉄。
赤字続きで少ない原資の中から安全投資をなおざりにすることは出来ない中、こうした「ありもの」を組み合わせ、中小私鉄でも手が届く計測技術が登場してくるのは非常に喜ばしい。

しかも、このシステムの特性として振動を記録するため万が一の事故発生時にフライトレコーダーのような役割も果たすことができる。
鉄道事故が発生するといつも事故原因の分析に長期間を要しているケースが多いが、それは車輌や施設についた傷といった「外的状況」から原因を推測せざるを得ないため時間を要しているのであって、原因の早期究明にはやはり車輌自体に何らかの記録装置が入っていることが望ましい。

その意味で「二重に効果がある」このシステム、センサーを追加すれば発展の余地はあるだけに次の展開が待ち遠しい。
広く普及すれば、40万円というコストも量産効果で更に安価になるだろう。


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