Simplex's Memo

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南阿蘇鉄道・茨城交通の二社でDMV導入検討へ。

2007-05-18 07:18:20 | 鉄道(地方・専用線など)
開発者であるJR北海道で4月から試験的な営業運転が始まったデュアル・モード・ビークル(以下「DMV」)。
線路と道路を行き来できる特性と、従来の鉄道車両に比べて低コストであること等から開発段階から全国の鉄道事業者、自治体関係者等から注目を集めていた。

そんな中、熊本県立野と高森を結ぶ南阿蘇鉄道でDMVの実証実験が行われることを知る。
「線路と道路 両方走れるDMV 南阿蘇鉄道で実証実験」(西日本新聞、5/17)

要点を整理してみる。
○熊本県DMV導入実証実験協議会の初会合が開催され、来年1月から3月の間を目処としてDMVを実際に走らせる実証実験を行うことを決めた。
○熊本県では南阿蘇鉄道の駅と阿蘇の観光地を結んで地域を活性化しようと県・沿線自治体が昨年から検討委員会を作り議論を重ねてきた。今後はJR北海道から技術者を招いて現地調査を行い技術的な問題点を詰める。

南阿蘇鉄道でのDMV導入構想については昨年10月に触れたことがある。
この時は「検討」段階だったが、約8ヶ月が経過した今の段階では「実証」段階に踏み込んでおり、かなり導入に向けて具体化しつつある印象がある。
記事から読みとれる熊本県が検討しているルートを見ると、南阿蘇鉄道の駅を起点として、周辺観光地を周遊するというもののようで、JR北海道の営業運転パターンと似ている。
DMV自体の定員の少なさ、ルート設定の可否という問題点はあるものの、技術的な問題点をクリアできれば導入へ至る可能性はあるという印象を受けた。
もう一つ、既存の鉄道車両と共存できるダイヤをどう構築するかという点は興味がある所だ。

そして、もう一つDMVの導入検討に名乗りを挙げた会社がある。
正確には鉄道事業者ではなく、国土交通省と茨城県が導入検討に前向きなのだが。
「DMV導入検討へ/茨城交通湊線」(asahi.com、5/17)

こちらも要点を整理してみる。
○国土交通省関東運輸局と県は6月中旬から茨城交通湊線でDMVの導入可能性を探る共同調査を開始する。
○茨城県は今春、DMVの湊線への導入可能性を調べることを決めた。関東運輸局も、県内の地方鉄道をモデルに公共交通の活性化を調査することため、DMVのほか、鉄道、バスも含め調査を県と連携して行うことになった。
○調査は次のように進められる。
・関東運輸局が、県内の地方鉄道の現状分析を行い、沿線の公共交通機関の現状などを把握する。茨城県は、自家用車の利用動向や鉄道など公共交通へのニーズ、DMVの導入についての意向などを住民アンケートで把握する。
・前項の調査結果をもとにDMVや鉄道、バスなどの費用対効果を分析した上で学識経験者などからなる検討会で実現可能性を探る。
○茨城県はひたちなか市とも協力、DMVを想定した走行ルートの選定や、線路から道路に切り替える場所も選定する。○湊鉄道対策協議会のDMVを想定した走行ルートとして、次の案が出ている。
・阿字ケ浦駅から国営ひたち海浜公園や大型商業施設などを経て、勝田駅を結ぶ案
・那珂湊駅から那珂湊のおさかな市場やアクアワールド県大洗水族館を結ぶ案など
○DMVを茨城交通湊線へ導入する場合、次の問題点がある。
・車体の床が低いため、湊線のホ-ム高さでは対応できない。
・定員が16人と少なく朝夕のラッシュに対応できない。
・DMVの重量は通常の鉄道車両の約1/6以下であるため線路を伝わって流れる電気信号が伝わらない可能性がある。
○茨城県は新たに必要と見込まれる経費も含めてDMVの導入を検討する。

茨城県にDMVを導入する話はついこの前、約一週間前に少し触れている。
今回の新聞報道はその後追いという形になるが、今回詳細に報道されたおかげで検討状況が少し見えてきた。
こちらも南阿蘇鉄道と同様、鉄道線を軸に線路から離れた観光ポイントを周遊する形でルート検討が始まろうとしていることが読みとれる。
また、この種の記事では長所ばかりが強調されるケースが多いが、今回の記事ではDMVの欠点についても紹介されているのは注目点だろう。

仮にDMVを茨城交通に導入した場合、高さが合わないためホームの切り下げが必要になる。
この点についてはDMVの乗降対象駅を選定して工事を進めれば・・・と考えてみたりもするが、赤字の茨城交通がその手の改修工事を行うとは考えにくい。
考えられるとすれば、茨城県が全面的に費用負担する場合だろうか。
それとも、駅手前に線路・道路接続ポイントを設定し、乗降は道路でという手も考えられるが、それが果たして「駅」の構造として認められるのかは未知数だ。
それからもう一つの欠点として挙げられている定員の少なさだが、まさか茨城交通の全車両をDMVで置き換えるという非現実的な案を茨城県が考えているとは思えない。
現実的には在来車両との併用が前提になってくるだろう。
もっとも、DMVを通勤通学用に使用することは定員の少なさから見て現実的ではない。
従って先述したような観光メインの使い方になるのではないだろうか。
この点を踏まえて次に検討を要する点としては、ルート選定。
土休日の昼間時、DMVの定員で賄える程度の需要を有したルートを選定することが必要になってくるのではないかと記事を読んで考える。
ただ、「需要が少なすぎるのもも困るし、また多すぎても困る」という事業者側にとって虫のいいルートはあるのだろうか。

茨城交通の場合、鉄道事業者の意向と離れた所で話が進んでいるだけに、当の茨城交通がどのように今回の調査を捉えているかは不明。
そういった点も含めて今後の調査結果には注目していきたいと考えている。

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