Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

神岡鉄道は観光鉄道へ。

2006-11-30 06:35:27 | 鉄道(地方・専用線など)
今日が運行最終日となる神岡鉄道。
この記事を書いている今頃は奥飛騨温泉口発の一番列車が猪谷へ向かっている頃だろうか。
この路線には結局2002年の夏と2005年の秋、二回しか来ることができなかった。
欲を言えばあともう一回来たかった所だが、客の少ない列車に乗って夏と秋、二つの季節が織りなす車窓をほぼ独り占め出来たことが思い出として残っているし、これはこれでいいのだと思っている。

話が本題から逸れた。
今日で廃線になる神岡鉄道にはかねてから「観光鉄道」化する構想があった。
その観光鉄道化構想が具体化したことが29日の岐阜新聞に掲載されていた。

記事の要旨は次のようになる。
○神岡鉄道廃線後の観光鉄道化を目指していた飛騨市は神岡鉄道の親会社である三井金属との交渉の結果、観光鉄道化に際して10数億円の寄付を同社から受けることで合意した。
○飛騨市は廃線後の軌道を活用して神岡鉱山等の沿線の産業遺産を集客の核に、週末やイベントで不定期に列車を運行する観光鉄道化を模索してきた。線路は神岡鉄道から無償譲渡を受けて市で保有、運行は地元企業などと新設する第3セクター会社などに委ねる「公設民営」「上下分離」方式での再生を想定している。
○市は観光鉄道化の前提として市税は投入しない方針。仮に経営がとん挫した場合の軌道の撤去費と、新車両の導入など開業や当面の運営赤字に充てる資金の確保へ、三井金属と交渉してきた。
○交渉の結果は次のとおり。
 三井金属から飛騨市が寄付を受ける額
 線路の撤去費用 10数億円
 開業経費と当面の運営赤字等に充当する額 4億円前後
○飛騨市は12月市議会で観光鉄道化へ承諾を得た後、来年早々に三井金属と契約、来年3月議会で寄付金を基金として積み立てる条例を制定する予定。

 かねてからの構想だが、大株主の三井金属からここまでの寄付を引き出して観光鉄道として再生する所まで計画が進んでいたとは思わなかった。
飛騨市としては、神岡鉄道廃止後、12月に観光鉄道の運営会社を設立し、廃線から1年半後には観光鉄道の運営を開始したいという。
というで、廃止後ただちにレールの撤去は行われないことは確定。
もっとも、すぐに冬を迎えるので積雪の中レールの撤去を行うことも現実的ではないと思っていた所に、今回の決定。
「鉄道」が姿を消さなかったことにひとまず安堵すべきだろう。

そして気になるのが一年半後には姿を見せる「観光鉄道」。
観光鉄道として土日中心の運行になるとTVでも報道されているので、用務客の利用は全く考慮していない。
また、除雪車を樽見鉄道へ売却した所から見て、運行コストに対して集客が見込めない冬季は運休するのだろう。

また、「観光鉄道」ということで運賃は現行より高く設定されることは確実だろう。
現在、猪谷・奥飛騨温泉口は19.9キロの営業キロに対して580円。
一キロ当たり29円ちょっと、ということになっているが、この二倍の運賃体系も観光鉄道というのであれば自由に設定できる。
加えて沿線に点在する産業遺産を巡る回遊形の企画乗車券も設定されるかもしれないが、これらはもう少し話が具体化してこないと全容は見えてこない。
続報待ち、といった所か。 

もう一つ興味を惹くのが「車両の新造」が挙げられている点。
てっきり神岡鉄道に在籍する二両のディーゼルカーをそのまま購入するかと思っていたが、製造から20年以上を経過していることもあり、新造を視野に入れている。
観光を前面に出す以上、広く一般にPRしやすい「トロッコ形DC」の投入もあり得るような気がする。
ただ、本当に新車両を導入するのかどうか懐疑的、今の車両でも良いのでは・・・と個人的には思うのだが、安全性を考えると新車ということなのだろう。

仮に観光鉄道が軌道に乗らなくても撤去費用が既に確保済であるなど、リスクも担保されているから一安心・・・ということだが、残念なのは廃止後すぐに運行主体が継承される訳ではなく、一年半という時間がかかる点。
いや、異なる運行主体の施設継承だからこそ、その程度の時間はかかると考えた方が常識的だと思う。

いずれにしても、今日で神岡鉄道の運転は終わる。
いつもなら「さようなら、お疲れ様でした」と記事を締めるところだが、今回は「さようなら」は言わない。
神岡鉄道、お疲れ様でした。

そして一年半後、復旧なった高山線に乗って猪谷で観光鉄道に乗れる日が来ることを楽しみにしている。

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