Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

福井鉄道・えちぜん鉄道乗り入れ構想の続報。

2005-02-21 21:55:56 | 鉄道(地方・専用線など)
行政が何もしないのも問題だが、強引に事を運ぼうというのもこれまた問題ではないか。
この記事を見た第一印象はそれだった。

「県の「見切り発車」に懸念の声」

福井鉄道の電車がえちぜん鉄道へ乗り入れる構想については以前にも触れているが、今回はその続報になる。
この構想については以下に示す4種類のシミュレーションがなされている。

1案 福井鉄道の田原町行1時間1本を田原町駅からえちぜん鉄道へ乗り入れて新田塚駅まで運行する。
2案 1案と同じ田原町行を1時間あたり1本増やしてえちぜん鉄道に乗り入れて浅水・新田塚駅間を結ぶ シャトル便とする。
3案 福井鉄道はえちぜん鉄道に乗り入れず、浅水・田原町駅間のシャトル便を運転する(えちぜん鉄道の車両を用いる)。
4案 両社の乗り入れは行わず、福井鉄道とえちぜん鉄道のダイヤ調整、運賃割引を実施する。

確か前回はこのシミュレーションを検討する「乗り入れ検討会議」が開催されていることまで触れたが、3日に開催された会議の席上で福井県は1案の事業化を進めたいという考えを示した。
事業化した場合、年間利用者が2万3千人、収益が年間200万円増えるというが、これに対する事業費は田原町駅、新田塚駅、信号などの整備に5億~6億円かかるとのこと。完全にコスト的には両社の手に余るし、明らかに収支バランスに欠ける事業だが、福井県は「工事費は公費でまかなう」と説明している。

ちなみに2案では事業費6億~8億円で、年間700万円の赤字、3案では事業費1億~2億円で、年間1100万円の赤字、4案では事業費不要、年間利用者2万人、収益が600万円増える、との試算が出ている。

この4案を並べてみると、どう考えてもコストパフォーマンスが高く、しかも現実味があるのは4案だと思う。
1案は乗客が増えた段階で実施すべきだと思うのだが、記事に見る福井県の論理はちょっと違うらしい。

福井県は4案は当然実施した上で、1案の実施を求めているが、「乗り入れは知事がマニフェストでも公約している。実現の方向で知事の判断を仰ぎたい」というから驚く。

採算性は無視、知事の「公約」であるから実施したい。
本当かな、と思って福井県知事のマニフェストを見てみると、確かに「えちぜん鉄道と福井鉄道・福武線との相互乗り入れを実施」とある。
今回の動きは知事の公約を実現するべく、福井県が採算性を軽視して政治的な動きに出たととられても仕方がない。

これに対してえちぜん鉄道と福井鉄道は1案の場合、運転士の増員が求められる上に「試算の見積もりは利用者数及び単価を過大に見積もっているため、見通しが甘い」、「福井鉄道の路面電車区間の遅れがえちぜん鉄道のダイヤに悪影響を及ぼす」として福井県の考えに反対。

また、福井市も「4案を試してから慎重に対応すべき」と主張し、福井県の主張と真っ向から対立することになった。

これらの意見に対して福井県は「費用対効果ばかりでなく、公共性やまちづくりの観点から考えてほしい」と主張したが、結局、結論は出なかったという。

確かに福井鉄道がえちぜん鉄道へ乗り入れれば、確かに乗り換えの手間は省けるため便利にはなる。
ただ、それが乗客増に直結するかと言われれば、ちょっと違うような気がする。
まして、僅かな乗客増のために多大な費用、しかも税金をつぎ込むコストパフォーマンスの悪い計画は理解が得られないのではないだろうか。

まして、当の鉄道事業者も渋面を作っている上、しかも政治的な目的が見え隠れする中で計画推進というのは非常に問題ではないだろうか。知事の公約実現のために性急に計画を促進して福井鉄道とえちぜん鉄道が疲弊するのでは本末転倒も甚だしい。
もう少し慎重に考えるべきではないのだろうか。

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