Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

高千穂鉄道、復旧ならず。廃線へ。

2005-12-10 00:00:51 | 鉄道(地方・専用線など)
台風14号で大被害を受けて運休中の高千穂鉄道。
その存廃議論に結論が出た。
非常に残念な事だが、高千穂橋梁を行く列車の姿を見ることはもうできない。

「高千穂鉄道、廃線へ 部分運行も断念」(西日本新聞・12/9)
「高千穂鉄道、廃線へ 部分運行も断念」(共同通信・12/9)

記事の要旨は次のとおり。
○高千穂鉄道の取締役会が9日に開催された。
○同社の社長である高千穂町長は記者会見で「経営ということで言うなら厳しい」と表明し、台風による被害が少なかったため部分運行が検討されていた高千穂・槙峰間約20kmの運行再開も実現が難しい事を明らかにした。
○筆頭株主である宮崎県をはじめ、出資している沿線自治体の大半が部分再開論には反対の姿勢を示し、廃線は避けられない状況になった。

記事では取締役会の結論について触れられていない。
しかし、社長記者会見の要旨を見れば結論は明らかだ。

宮崎県が議会で「存続は厳しい」とする見解を出した時点、もっと遡れば被害直後に「廃止」を臭わせる発言が宮崎県・高千穂鉄道双方から出ていた事に気づく。
この事をもっと注意して見ておくべきだった。

同じ時期に存廃が俎上に上がった愛知県の桃花台線とは異なり、存続を求める動きは地元を中心に強かった。
しかし、台風の被害を受ける前から様々な要因から乗客数は減り続けていた。
その事にもっと危機感を持って利用されていれば、「廃止」が云々される事はなかったと思う。
「郷愁」、「鉄道は環境に優しい」というイメージ論だけで線路が存続し得ない事を証明した事例がまた一つ増えた。
ローカル線が消えていく度、何度もこうした事例を見ているが、今回の高千穂鉄道はあまりにも象徴的だ。

この後は、路線の撤去を何年かけて行うかという問題、「貴重な観光資源としての価値はある」と言わしめたトロッコ列車を筆頭とする車両をはじめとする資産の処分が俎上に上がってくる。
そして、高千穂橋梁はどうなるのだろうか。撤去するにしても莫大な費用がかかる事は既に至る所で指摘されている。

代替交通については、今の代行バスを発展させる形で宮崎交通バスが走ることになるのだろう。

これから廃止に向けた手続きが始まるが、今回は全線不通となっている状況下であるため「さよなら列車」も走りようがない。
だから、「廃止」と言われても実感が今ひとつ沸かない。
何とも寂しく、やり切れない形でローカル線がまた一つ消えていく事だけは確かなのだが。


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2 コメント

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Unknown (551planning)
2005-12-10 01:06:16
先日東京であったシンポに参加してきました。

社長である高千穂町長も参加され、せめて観光鉄道での再起をという強い意志と、3セク特有の足並み揃わずの状況の苦悩を感じたのですが、やはり県が…と思わざるを得ません。

個人的にはこの方向性は予測できたものの、その会の参加者(大多数が宮崎からの上京組)のこの問題を通り越した地元に対する熱さを感じたこともあり、いささか複雑な心境でもあります。会でも出ていましたが、どうしても越美北線と比べられてしまうことにもなるわけで…。



ただし客観的に見ると、年内までに結論をとしたことそのものは、一見コトを急いだ印象は拭えないかもしれないものの、結果的に無為な出血の放置にならなかったであろう分、個人的には受け入れられるものであります。ただし、長い目で見て地域の基礎体力がどうなるか、観光流動のあるところだけに、大変気に懸かるところです。
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残念ですね (岐阜市内線復活祈願)
2005-12-10 12:33:21
やはり廃止にきまりましたね。

台風被害が出生した時に、こうなることは予想してはいましたが。

地方私鉄にとって、自然災害による被害が路線存続の経営努力への最後のトドメになるというパターンは、今も昔もかわりませんね。

JRでも高山線は復旧工事が進んでいるようですが、越美北線はどうなっているのでしょうか。心配です。

またひとつ鉄道が消える。

残念です。

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