奈良は雲一つない晴天に恵まれました。思い起こせば、昨年は同時期に台風が直撃するということで、急遽プログラムを前倒ししたりしながら、14時前に終わるように変更し、対応した記憶があります。結果オーライなんですが、各地に帰られる皆さんの新幹線等が止まる事なかったようです。1本違えばとまった、との連絡ももらい、我ながら、そのときのうちのメンバーとの意思決定には、一定の評価をしたいと今でも思っています。これこそ不確実性に対応する脳の機能だと思いました。その背景には、最大限の「おもてなし」精神があると思います。オリンピック招致で有名になったこの言葉でありますが、私たちメンバーは昔より日本人のこのおもてなしの心、すなわちこの身体的な脳の機能による他者への配慮は、もっと評価されるべきと思って、いつも議論していました。いや、評価されることを目的としていません、もっと日本人は日本人を尊敬すべきだと思っておりました。他者のために自己が責任をとる(腹を切る)、この武士道精神は代々私たちに脈々と受け継がれています。目先の自己の利益に執着せず、広い心を持ち、優雅に生きる。そういう人生を目指したいものですね。
さて、今回は応用編です。実は、この応用編が肝になります。臨床編に目が奪われがちですが、いかんせん紋切り型になってしまいます。運動麻痺や、USNや、などと。そういう細分化されたことに焦点化する前に、人間とは何か、を今一度考えるのが応用編です。私の著書「リハビリテーションのための神経生物学入門」のベースです。運動を見る前に、その人間をみよ、そして自己を省みて、他者との関係性を考えてみよ、というものです。しかしながら、いかんせん、理解を促進させようと思えば、情動、注意、姿勢などと細分化してしまっています。しかしながら、その根幹の人間のシステムというのは、実は共通なんだ。情動や社会性、はたまた上肢と道具との関係、あるいは身体性というのは、人間の脳ではシステムとして作動しているだ、と想像を膨らませてもらえればと思います。
延べ306ページの資料。7講座あります。1講座で使用するスライドはおそらく100枚程度。そのままおおよそで換算しても1.5日間で700枚の情報量。取捨選択を重ねた結果ですから、この倍以上は作成していると思います。したがって、実質的に1400編ぐらいの読破じゃないでしょうか。これは、前述したように、とても理解を促進しようとしているのか、と矛盾を起こします。しかしながら、我々教育研究者は、世界で公表されているありのままえを伝えたいと共通の認識をしています。わかった、という気持ちにさせるのは実は簡単です。脳は脳をバイアスによって操作することができるからです。錯視に代表されるように、私たちが錯覚として意識を形成しているのと一緒です。しかしながら、わからない、ということを経験させる方が科学の発展のためには、もっと重要なのです。わからないのであれば、その後自分の目で確かめる、この能動的作業を通じて、自己に概念が形成されていくのです。概念は視覚だけでも、聴覚だけも形成されません。自己の行為を通じて形成されていくのです。
いずれにしても、速い講義が展開されると思いますが、自己意識のもと、関心事に焦点化させながら、経験をつくっていってもらいたいと思います。おおよそ研究成果の出典は資料に記載していると思いますから、興味が引かれたものをその後紐解いてみてください。みなさんにとって有意義な2日間となるように。