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かくして安全はカネに消えた・・・

311の災害後、原発関係の書籍も多く出ているが、あえてこの古い一冊を買った。

「原発列島を行く」 という本、鎌田慧氏というジャーナリストが書いた本だ。出版は2001年だからもう10年前に書かれたものだ。

世の中が騒いでからそのことについて書いて出版された本は、概ね儲けるための急作りで内容の浅いものが多い。こういうまじめで、話題になる前に書かれたものの方が冷静で信憑性がある。

 個々の事象の解釈はひとさまざまだが、著者はルポライターだから足で現場を歩き、実際に見て、関係する人に会い聞いた事実だからその内容にウソはないという前提でこの書を見ると 北海道から九州に至る20カ所近くもある "日本列島原発銀座" ができていくその過程とその後の本当にいろいろな面でゾッとする悪行とその被害で泣く市民のようすに愕然とする。 

田中角栄、中曽根康弘、森 喜朗といった歴代総理も利権がらみで実名で登場する。長期にわたりいかに自民党政権のもと、官僚と地方自治体とさまざまな首長らと住民の”ばらまかれたカネ”で安全を売り買うするありさま。活断層の上にもかかわらず利害優先で建設してしまう安全無視、さまざまな隠匿、就業者や近隣在住者の健康被害など その恐ろしい実態が具体的に描かれている。 

クリーンエネルギーという建前のもと、札束で頬をひっぱたき原発を広げ、日本中を危険に陥れ、その結果この人災を生み出した日本。今回の事故の根本原因はこうした政治の体質にあるにもかかわらず、少しも学習しない政治家と官僚と電力会社。彼らに側面から手を貸した御用学者の先生方。

それとなによりも こんな恐ろしい事実が 長年にわたって知らず、大事故が起きて初めて知った! という自分のなさけなさ。 

こういう悪行を 世に問わない というか 自分たちも利権上 問えないマスコミ。 こんなに危険な事実を長年クローズアップしないマスコミの存在価値とはなんだ?

原発は発電コストが安いことを売りにしてきたはずだったが、じつは発電コストもこれまで政府が提示したコストはご都合主義のもので、核燃料廃棄処分や設置後の地方交付金(ばらまきのお金)などを考慮すると単位あたり発電コストは政府試算の軽く2倍以上になり、水力発電どころか火力発電のコストよりも悪化する計算になる。発電コストが安いとはウソだったのだ。

とにかく原発が仮にどんなにすぐれていてもこの日本の国土と政治体質と電力会社の体質では危険である。

電力供給面から今すぐに原発停止とは行かない実情がある。とはいえそれを考慮した時間軸でやはり原子力発電はこの国では終幕にベクトルを向ける決断をすべきであろう。その議論と福島の原発事故の終息が急務であり、総理大臣おろしなどのお遊びどころではないのである。

日本全国、工場などの建屋には昔からどこでも緑十時のマークと共に「安全第一」と掲げられている。品質も原価も納期も安全より優先されることはない。安全はなにものにも勝るのである。 

 

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