【米国市況】株続落、最近の上昇の持続性に懐疑的-ドル141円台前半
Carly Wanna、Isabelle Lee
2023年6月21日 6:00 JST Bloomberg
円は上昇、為替動向を注視と日本当局者が発言
パウエルFRB議長、半期に一度の金融政策報告で21日に議会証言へ
20日の米株式相場は続落。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言を21日に控え、神経質な展開となった。
株式 終値 前営業日比 変化率
S&P500種株価指数 4388.71 -20.88 -0.47%
ダウ工業株30種平均 34053.87 -245.25 -0.72%
ナスダック総合指数 13667.29 -22.28 -0.16%
S&P500種株価指数は4週間ぶりの続落となり、最近付けた14カ月ぶり高値を離れた。大型ハイテク銘柄中心のナスダック100指数はほぼ変わらず。テスラが堅調に推移し、同指数を下支えた。在庫を巡る懸念でナイキは安い。一方、ペイパル・ホールディングスは上昇。同社の融資債権をプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社KKRが取得することで両社が合意に達した。
人工知能(AI)を巡る熱狂は最近の株高の大部分に寄与しており、4-6月(第2四半期)決算の電話会議でのトピックになることは確実だ。シティグループのグローバル・マーケッツ・ストラテジスト、スコット・クロナート氏は「問題はそれがどの程度、企業業績に表れるかだ」とブルームバーグテレビジョンで指摘。「大きく上昇してきた相場と業績見通しの間にずれが生じるという事態に陥るだろう」と述べた。
米金融政策の軌道も不確実要素だ。パウエル議長は21日に半期に一度の金融政策報告に関する議会証言に臨む。
モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのリサ・シャレット最高投資責任者(CIO)は「時価総額加重された米国株指数の上昇の持続性について、当社は懐疑的だ。米金融当局が金利を高めの水準で長期に維持すると脅しているに過ぎないと、投資家が引き続き考えていることがその主な理由だ」とリポートで指摘。
「望まれるソフトランディングが実現すれば、米金融当局が利下げする動機はなくなる。労働市場がなお比較的底堅い場合はなおさらだ」とし、「『ゴルディロックス』シナリオがリスクにさらされている。実質金利に警戒するべきだ。それは経済のソフトランディングを背景に、じりじりと上昇する可能性が高い」と述べた。
米国債
米国債は上昇。株価や原油の下落を背景に、国債が支えられた。朝方には米住宅着工件数が2016年以来の大幅増となったことを受けて、利回りが一時上昇する場面もあった。
米住宅着工件数、2016年以来の大幅増-全ての市場予想を上回る (1)
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率
米30年債利回り 3.81% -3.9 -1.01%
米10年債利回り 3.72% -4.1 -1.08%
米2年債利回り 4.68% -2.9 -0.62%
米東部時間 16時55分
外為
外国為替市場ではパウエル議長の議会証言を21日に控え、ドル指数が3営業日続伸。一方、豪ドルは下落。世界的なコモディティー価格の下落が重しとなった。オーストラリア準備銀行(中央銀行)の議事要旨で、6月の利上げ決定は「微妙なバランス」の議論を経たものだったと記されたことも売りを招いた。
円は上昇。対ドルでは一時1ドル=141円21銭を付けた。鈴木俊一財務相は20日の閣議後会見で、「為替の動向を注視している」と発言。米国の外国為替報告書に関連し、為替政策について「今後とも米国を含む各国通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、必要であれば適切に対応していく」と語った。西村康稔経済産業相も同日の閣議後会見で、為替相場について「過度な変動、あるいは投機的な動きはしっかりと注視をしていかないといけない」と述べた。
為替政策「必要なら適切対応」、各国と緊密に意思疎通-財務相 (2)
為替 直近値 前営業日比 変化率
ブルームバーグ・ドル指数 1226.23 1.71 0.14%
ドル/円 ¥141.45 -¥0.53 -0.37%
ユーロ/ドル $1.0917 -$0.04 -0.04%
米東部時間 16時55分
テミストクリス・フィオタキス、門田真一郎両氏らバークレイズのアナリストは「日本銀行がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を変更あるいは撤廃すれば、円は一気に3-5%上昇すると予想する」とリポートで指摘。円は対ドルで7-9月(第3四半期)に137円に値上がりするとの見通しを示した。一方、円下落のスピードや度合いは為替介入のリスクで限定されるとの見方を示した。
原油
ニューヨーク原油先物相場は反落。全般的にリスク回避姿勢が強まった。
中国の銀行は20日、それぞれ基準となる貸出金利を引き下げたが、包括的な景気刺激策の導入が緩やかなペースにとどまっていることで、中国当局がどこまで景気を押し上げる意欲があるのか市場関係者の間で議論を呼んでいる。
オアンダのシニアマーケットアナリスト、エド・モヤ氏は「連休明けで取引日が1日少ない今週は、原油相場にとって厳しいものになるかもしれない」と指摘。中国景気の回復が力不足の刺激策でもたつく兆しが出ており、リスク回避姿勢が再び強まっているようだと述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で、この日が最終取引日となったウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物7月限は1バレル=70.50ドルで終了。前日は奴隷解放記念日の祝日で清算値は算出されなかった。8月限は0.74ドル安の71.19バレルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント8月限は19セント(0.3%)安の75.90ドルで引けた。
金
ニューヨーク金相場は下落。欧米株式が売られる中、金スポット価格は100日移動平均の支持線を下抜け、下げが加速した。
この日の下落で、金相場は6月ほぼ一貫して収まっていたレンジを明確に抜け出した。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合と欧州中央銀行(ECB)政策委員会以降、両中銀による追加利上げ観測が金相場の重しとなっている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時25分現在、前営業日比0.7%安の1オンス=1937.78ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は23.50ドル(1.2%)下げて1オンス=1947.70ドルで引けた。
原題:Stocks Slip as Investors Worry If Rally Has Legs: Markets Wrap(抜粋)
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