Photographer: Tierney L. Cross/Bloomberg
前週末発表の米雇用統計が想定を超すペースで労働環境が悪化していることを示唆した。景気に敏感な半導体関連株が下落、銀行や商社株も売られて全面安になった。日経平均の下げ幅は過去最大だった1987年の米ブラックマンデー翌日を上回り、下げ率も歴代2位になった。株安でリスク回避の動きから債券相場が急上昇(金利は低下)、円も買われて全面高になっている。
米失業率は上昇し、「サーム・ルール」でリセッション開始の目安となる数値に達した。リスクオフを象徴すようにビットコインも急落している。9月の米利下げは決定的との見方が出ているが、遅過ぎるとの懸念から安全資産の金相場もいったん下落後、上下に荒い動きとなっている。米経済の失速は日本銀行の追加利上げに影響するとの見方も出ている。
大和証券の阿部健児チーフストラテジストは、米金融当局はインフレ再燃を過度に警戒して利下げ開始が遅れるビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)になった可能性があるだろうと5日付リポートで指摘した。一方、秋までに大幅な利下げを示唆することで世界株は年内に持ち直すとの見方も示している。
日本の株式・債券・為替相場(午後3時25分過ぎ)
日経平均株価の終値は前週末比4451円28銭(12.4%)安の3万1458円42銭
ブラックマンデー翌日の1987年10月20日は3836円48銭(14.9%)安だった
東証株価指数(TOPIX)は12.2%安の2227.15
下落率は87年10月20日以来の大きさ
長期国債先物9月物終値は前週末比2円26銭高の146円06銭
取引開始後に145円80銭と制限値幅の上限(2円高)に達して午前9時20分から取引を停止(サーキットブレーカー発動)、9時30分から制限値幅の上限を146円80銭に拡大して再開
新発10年債利回りは20.5ベーシスポイント(bp)低い0.75%と、4月2日以来の低水準
円は対ドルで3%高の142円16銭
一時141円70銭まで上昇-1月2日以来の高値
株式
東京株式相場は大幅安。午後に入って下げ幅を拡大して、主要株価指数は「弱気相場入り」の水準を割り込んだ。米雇用統計が景気の先行きに対する懸念を強め、リスクオフムードが広がった。為替の円高や中東情勢の緊迫もあり、銀行や保険など金融株をはじめ東証33業種は全て安い。
日本株が一時「弱気相場入り」、米景気懸念やポジション解消で急落
この日は金融株のほか、半導体などのテクノロジー株や輸出関連が軒並み急落。内外需ともに全面安となり、指数の下げが大きくなっている。日経平均、TOPIXともにブラックマンデー翌日以来の下落率となった。
銀行株が大幅続落、MUFGは過去最大の下落率-長期金利の低下意識
ピクテ・ジャパンの田中純平ストラテジストは、日本株はドル・円の影響を強く受けるため、米景気懸念が米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースの加速を促し、円高・ドル安が加速するという「悪循環に陥っている」と指摘。ドル・円の底打ちが確認できるまで、日本株を積極的に買う動きは控えられるとみている。
リテール証券、株価急落受け緊急顧客対応-個人マネーの動きを憂慮
日経平均の恐怖指数(VIX指数)は午後3時過ぎの時点で68.07と東日本大震災直後の11年3月16日以来の高水準となった。
アシンメトリック・アドバイザーズのアナリスト、ティム・モース氏は「ドル・円の145円台から142円台の急落によって、テクニカル上の壁がさらに破られる可能性が高まった」と指摘。多くの輸出企業が140円から145円あたりを想定していたため、投資家が織り込んでいた為替メリットもほとんどなくなったとみている。
日経平均株価の日中推移 | 午後に下げを拡大して史上最大の値下がり幅に
債券
債券相場は大幅高。米国で7月の雇用統計が予想を下回り、長期金利が急低下したことを受け買いが急増した。長期国債先物は取引を一時中断する「サーキットブレーカー」が発動された。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、米金利の大幅低下に加え、米景気懸念による国内ファンダメンタルズへの悪影響から日銀の早期追加利上げ観測が後退し、買いが強くなっていると話した。
ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は、リスク資産市場が壊れたのでショート(売り建て)ポジションが手じまわされている状況だとし、米景気指標が軟調だったので円債市場に強烈な買いが入ったと指摘。
その上で「日銀もこれだけ株安、円安が進むと、この間打ち出した政策を修正せざるを得なくなり、利上げペースは相当ゆっくりになるとのメッセージを出さないといけなくなる」との見方を示した。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
0.260% 0.375% 0.760% 1.600% 1.925% 不成立
前週末比 -15.0bp -20.0bp -19.5bp -12.0bp -15.0bp -
債券先物の日中推移 | 取引開始後にサーキットブレーカー発動
為替
東京外国為替市場の円相場は対ドルで一時3%を超す上昇で、1月以来の141円台を付けた。米国の株価指数先物や日本株の大幅下落を受けて、投資家心理の悪化によるリスク回避の円買いが続いた。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、先週末に米国株が大きく下がり、きょうは日本株がそれ以上に下がるなど、負の連鎖が続いていると指摘。「市場が恐怖にとらわれているためリスク回避の流れが止まらず、円高・ドル安もどこで止まるか分からない」と述べた。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、ドル・円相場とドル金利の相関に基づくフェアバリューは142円付近だとし、「相関以上に円がアウトパフォームし、140円まで上昇する可能性がある」と話した。
ドル・円相場の日中推移 | 円は一時3%を超す上昇
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中