9月の自民総裁選、まれに見る混沌としたレースに-市場乱高下で拍車
8/14(水) 21:20配信
Bloomberg
(ブルームバーグ): 日本の次期首相はインフレや不安定な金融市場、悪化する安全保障環境に加え、最も重要な同盟国である米国の新政権への移行といった課題に直面することになる。
9月に予定されている自民党総裁選はここ数年で最も混沌(こんとん)とした選挙戦の一つとなる見込みだが、一つはっきりとしているのは、新たな首相が現職の岸田文雄首相から大きく方向性を変える公算は小さいということだ。
岸田氏は14日、総裁選に出馬しない意向を表明した。退陣を選択することで、来年までに予定される総選挙を前に、歴史的な低水準に落ち込んだ内閣支持率を回復できる新しい顔がトップに就くことを期待している。
政治リスクアドバイザリー業務を行うジャパン・フォーサイトの創業者、トビアス・ハリス氏は、今回の総裁選は「政策の大きな違いというよりも、人柄や選挙のスタイルが大きく影響するだろう」と語った。
岸田氏は自身の決断を発表する際に、賃上げと投資促進の「アニマル・スピリッツ」を復活させることで、日本の30年にわたるデフレ経済に終止符を打つことができたと主張。米国をはじめとした同盟国との結びつきは自らの政権下で強化されたと語った。
この政策アプローチは、後継候補の多くを含む自民党内で広く支持されている。日本銀行による段階的な金融政策の正常化から防衛費の増額まで、主要な争点を巡っては総裁選の候補者のほとんどに目立つ差はない。
政治資金問題の余波を受け、自民党内の保守派が弱体化したことで、安倍晋三元首相の超ハト派的な経済政策の支持者の影響力は弱まっている。
東京大学の内山融教授は、「これだけ自民党の支持が落ちてしまうと、相当リフレッシュした感じを見せないといけない」と指摘した。
そうなれば、政治資金問題にあまり関わっていない若手候補が有利になる可能性がある。その中には、小泉純一郎首相の子息で43歳の小泉進次郎氏も含まれる。自民党はまた、上川陽子外相のような同党初の女性首相を擁立しようとするかもしれない。
8/14(水) 21:20配信
Bloomberg
(ブルームバーグ): 日本の次期首相はインフレや不安定な金融市場、悪化する安全保障環境に加え、最も重要な同盟国である米国の新政権への移行といった課題に直面することになる。
9月に予定されている自民党総裁選はここ数年で最も混沌(こんとん)とした選挙戦の一つとなる見込みだが、一つはっきりとしているのは、新たな首相が現職の岸田文雄首相から大きく方向性を変える公算は小さいということだ。
岸田氏は14日、総裁選に出馬しない意向を表明した。退陣を選択することで、来年までに予定される総選挙を前に、歴史的な低水準に落ち込んだ内閣支持率を回復できる新しい顔がトップに就くことを期待している。
政治リスクアドバイザリー業務を行うジャパン・フォーサイトの創業者、トビアス・ハリス氏は、今回の総裁選は「政策の大きな違いというよりも、人柄や選挙のスタイルが大きく影響するだろう」と語った。
岸田氏は自身の決断を発表する際に、賃上げと投資促進の「アニマル・スピリッツ」を復活させることで、日本の30年にわたるデフレ経済に終止符を打つことができたと主張。米国をはじめとした同盟国との結びつきは自らの政権下で強化されたと語った。
この政策アプローチは、後継候補の多くを含む自民党内で広く支持されている。日本銀行による段階的な金融政策の正常化から防衛費の増額まで、主要な争点を巡っては総裁選の候補者のほとんどに目立つ差はない。
政治資金問題の余波を受け、自民党内の保守派が弱体化したことで、安倍晋三元首相の超ハト派的な経済政策の支持者の影響力は弱まっている。
東京大学の内山融教授は、「これだけ自民党の支持が落ちてしまうと、相当リフレッシュした感じを見せないといけない」と指摘した。
そうなれば、政治資金問題にあまり関わっていない若手候補が有利になる可能性がある。その中には、小泉純一郎首相の子息で43歳の小泉進次郎氏も含まれる。自民党はまた、上川陽子外相のような同党初の女性首相を擁立しようとするかもしれない。
ここ数十年で最大の株価下落など最近の市場の混乱は、政権の経済政策にスポットライトを当て、これまで慎重に経済財政運営を進めてきた岸田氏のイメージは失墜した。しかし、新首相の下でこれまでの経済政策がリセットされることもなさそうだと、政治アナリストらはみている。
市場変動の引き金となったのは7月31日の日銀による追加利上げの決定だ。これに先立ち、河野太郎デジタル相と茂木敏充自民幹事長の有力者2人が日銀に利上げを進めるよう求めていた。もう1人の石破茂元防衛相もこの決定を支持している。3人はいずれも、総裁選に立候補する可能性があるとみられている。石破氏と河野氏は前回の2021年に行われた総裁選で岸田氏の対抗馬として立候補したが落選した。
前回の総裁選に出馬した際、金融緩和の継続を訴えた高市早苗経済安全保障担当相は例外かもしれない。
一方、企業に賃上げを促して支出を増やし、インフレの痛みを和らげようとする岸田氏のアプローチに代わる政策を提示する候補者も見当たらない。
外交政策では、米国との緊密な同盟関係が一環して自民党内で支持されてきた。次期首相が、11月の米大統領選挙の勝利者と緊密な関係を築こうとするのはほぼ確実だ。
エマニュエル駐日米大使は、岸田氏とバイデン米大統領が日米同盟を永続させるための強固な基盤を築いたとの見方を示した。その上で、「将来の首相と大統領は、岸田氏とバイデン氏が作成した楽譜を基に仕事をすることになるだろう」と述べた。
これまでの自民党の選挙は、派閥の領袖(りょうしゅう)の選択に左右されることが多かったが、政治資金問題のために派閥のほとんどを廃止すると自民党は決定。これが、今回の選挙をここ数年で最も予想しにくいものにするかもしれない。
ジャパン・フォーサイトのハリス氏は、「今は人気がなくても、短期間の選挙戦で火が付き、有力候補に浮上する余地は明らかにある」と語った。
原題:Japan Set for Most Uncertain PM Race in Years After Market Chaos(抜粋)
市場変動の引き金となったのは7月31日の日銀による追加利上げの決定だ。これに先立ち、河野太郎デジタル相と茂木敏充自民幹事長の有力者2人が日銀に利上げを進めるよう求めていた。もう1人の石破茂元防衛相もこの決定を支持している。3人はいずれも、総裁選に立候補する可能性があるとみられている。石破氏と河野氏は前回の2021年に行われた総裁選で岸田氏の対抗馬として立候補したが落選した。
前回の総裁選に出馬した際、金融緩和の継続を訴えた高市早苗経済安全保障担当相は例外かもしれない。
一方、企業に賃上げを促して支出を増やし、インフレの痛みを和らげようとする岸田氏のアプローチに代わる政策を提示する候補者も見当たらない。
外交政策では、米国との緊密な同盟関係が一環して自民党内で支持されてきた。次期首相が、11月の米大統領選挙の勝利者と緊密な関係を築こうとするのはほぼ確実だ。
エマニュエル駐日米大使は、岸田氏とバイデン米大統領が日米同盟を永続させるための強固な基盤を築いたとの見方を示した。その上で、「将来の首相と大統領は、岸田氏とバイデン氏が作成した楽譜を基に仕事をすることになるだろう」と述べた。
これまでの自民党の選挙は、派閥の領袖(りょうしゅう)の選択に左右されることが多かったが、政治資金問題のために派閥のほとんどを廃止すると自民党は決定。これが、今回の選挙をここ数年で最も予想しにくいものにするかもしれない。
ジャパン・フォーサイトのハリス氏は、「今は人気がなくても、短期間の選挙戦で火が付き、有力候補に浮上する余地は明らかにある」と語った。
原題:Japan Set for Most Uncertain PM Race in Years After Market Chaos(抜粋)
--取材協力:Soo-Hyang Choi、氏兼敬子、関根裕之.
(c)2024 Bloomberg L.P.
Alastair Gale, Erica Yokoyama, Yoshiaki Nohara
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