株、ファストリ12連騰に危うさ 米動乱、「7月天井」も
2020/6/2 13:19日本経済新聞 電子版
2日午前の東京株式市場で日経平均株価は続伸した。米景気の回復期待を背景に、海外投資家によるショートカバー(買い戻し)が相場を押し上げた。ファーストリテイリングの連騰はまさに需給相場の象徴だが、2020年4~6月期の決算発表が近づけば、投資家はコロナ禍の傷を直視せざるを得なくなる。暴動を契機に米大統領選を巡る不確実性も高まり、株高のピークは7月ごろとの見方が急速に広がっている。
日経平均は前日比185円66銭高の2万2248円で午前を終えた。ファストリ株は一時1.1%高。午前終値でも小幅高を保った。このまま上昇して取引を終えれば12連騰となり、「アベノミクス相場」が始まった12年11月以来となる。株価も1月23日以来、約4カ月ぶりの高値を付けた。
ファストリ株は新型コロナウイルスの感染拡大で中国・武漢市が事実上の都市封鎖に踏み切った当時の水準に迫りつつあるが「業績は関係なく、先物主導で日経平均が上昇し、指数寄与度が高いファストリ株を押し上げている」(国内証券ストラテジスト)との声は多い。
日経平均もコロナ禍がそれほど市場で注目されなかった時期の水準を回復しつつある。「過剰流動性が日本株の支えになっているとはいえ、コロナ禍の影響を『なかったこと』にする株高にはリスクがある」。アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之取締役はこう警鐘を鳴らす。国内企業の4~6月期決算発表を前に、業績の「V字回復」すら織り込もうとする株式市場の過度な期待が後退するリスクが見え隠れするなかでは、株高は「長く続いたとしてもあと1カ月だろう」とみる。
世界的な株式相場の強さに違和感を覚える投資家は少なくない。1日の米国市場で、投資家心理を測る指標である変動性指数(VIX)は株高が進行したにもかかわらず上昇。直近ではコロナ禍前より10ポイントほど高い27~28の間で下げ止まっている。日経平均ボラティリティー・インデックスも5月下旬以降はほぼ横ばいで推移する。投資家のリスク選好姿勢が大きく強まっているとは言いにくい。
白人警官の暴行による黒人死亡事件で全米で暴動が起きていることも過小評価はできない。あと半年に迫った米大統領選の動向に直接、関わる話であるためだ。米政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスによると、次回の米大統領選に関するトランプ現大統領の平均支持率は1日時点で44.3%。平均不支持率は53.8%と、差は10ポイント近く開いている。
コロナ禍による経済の落ち込みで苦境に立たされるなか、社会分断もあらわとなり始めた。11月の大統領選の候補指名を固めた民主党のバイデン前副大統領が今後、リベラル派を取り込み躍進する余地が生じつつある。「金融市場に融和的」(国内証券の米国株アナリスト)とされる共和党候補のトランプ氏が敗北すれば、エネルギー株主導で米国株安が進むとの警戒は根強い。
SMBC日興証券の末沢豪謙・金融財政アナリストは「経済情勢を背景に『アンチ・トランプ』の世論は前回の大統領選よりも強まっている」と指摘。民主党の大統領候補指名を争った黒人のカマラ・ハリス上院議員の動向がカギを握るとし「ハリス氏が今夏にも副大統領候補となれば、トランプ大統領が一段と劣勢となる。その場合は米国株に調整圧力が掛かるだろう」と話す。
対中関係や抗議デモといった火種を抱えるトランプ米大統領の命運を冷静に見極める局面自体は、すでに差し迫っているのかもしれない。
〔日経QUICKニュース(NQN) 長田善行〕
2020/6/2 13:19日本経済新聞 電子版
2日午前の東京株式市場で日経平均株価は続伸した。米景気の回復期待を背景に、海外投資家によるショートカバー(買い戻し)が相場を押し上げた。ファーストリテイリングの連騰はまさに需給相場の象徴だが、2020年4~6月期の決算発表が近づけば、投資家はコロナ禍の傷を直視せざるを得なくなる。暴動を契機に米大統領選を巡る不確実性も高まり、株高のピークは7月ごろとの見方が急速に広がっている。
日経平均は前日比185円66銭高の2万2248円で午前を終えた。ファストリ株は一時1.1%高。午前終値でも小幅高を保った。このまま上昇して取引を終えれば12連騰となり、「アベノミクス相場」が始まった12年11月以来となる。株価も1月23日以来、約4カ月ぶりの高値を付けた。
ファストリ株は新型コロナウイルスの感染拡大で中国・武漢市が事実上の都市封鎖に踏み切った当時の水準に迫りつつあるが「業績は関係なく、先物主導で日経平均が上昇し、指数寄与度が高いファストリ株を押し上げている」(国内証券ストラテジスト)との声は多い。
日経平均もコロナ禍がそれほど市場で注目されなかった時期の水準を回復しつつある。「過剰流動性が日本株の支えになっているとはいえ、コロナ禍の影響を『なかったこと』にする株高にはリスクがある」。アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之取締役はこう警鐘を鳴らす。国内企業の4~6月期決算発表を前に、業績の「V字回復」すら織り込もうとする株式市場の過度な期待が後退するリスクが見え隠れするなかでは、株高は「長く続いたとしてもあと1カ月だろう」とみる。
世界的な株式相場の強さに違和感を覚える投資家は少なくない。1日の米国市場で、投資家心理を測る指標である変動性指数(VIX)は株高が進行したにもかかわらず上昇。直近ではコロナ禍前より10ポイントほど高い27~28の間で下げ止まっている。日経平均ボラティリティー・インデックスも5月下旬以降はほぼ横ばいで推移する。投資家のリスク選好姿勢が大きく強まっているとは言いにくい。
白人警官の暴行による黒人死亡事件で全米で暴動が起きていることも過小評価はできない。あと半年に迫った米大統領選の動向に直接、関わる話であるためだ。米政治サイトのリアル・クリア・ポリティクスによると、次回の米大統領選に関するトランプ現大統領の平均支持率は1日時点で44.3%。平均不支持率は53.8%と、差は10ポイント近く開いている。
コロナ禍による経済の落ち込みで苦境に立たされるなか、社会分断もあらわとなり始めた。11月の大統領選の候補指名を固めた民主党のバイデン前副大統領が今後、リベラル派を取り込み躍進する余地が生じつつある。「金融市場に融和的」(国内証券の米国株アナリスト)とされる共和党候補のトランプ氏が敗北すれば、エネルギー株主導で米国株安が進むとの警戒は根強い。
SMBC日興証券の末沢豪謙・金融財政アナリストは「経済情勢を背景に『アンチ・トランプ』の世論は前回の大統領選よりも強まっている」と指摘。民主党の大統領候補指名を争った黒人のカマラ・ハリス上院議員の動向がカギを握るとし「ハリス氏が今夏にも副大統領候補となれば、トランプ大統領が一段と劣勢となる。その場合は米国株に調整圧力が掛かるだろう」と話す。
対中関係や抗議デモといった火種を抱えるトランプ米大統領の命運を冷静に見極める局面自体は、すでに差し迫っているのかもしれない。
〔日経QUICKニュース(NQN) 長田善行〕