木の葉を紅葉・黄葉させるのは時雨や露ですが、秋の風もまた作用します。
「さわさわ」と薄や葛など草木の葉が互いにすれ合うと、嘆き悲しむような溜息、咽(むせ)ぶような
やるせないような旋律にも聞こえます。
深秋、老いたる薄は斜陽を受けて銀色に輝き、さらさらと「葉ずれ」の音をたてます。
まるで馬のたてがみが靡く(なびく)ようで、身が引き締まる凛とした光景にも見えます。
春の「牧開き」に対して秋は「牧閉ざす」。秋の道すがら、見渡す花野は「繚乱(りょうらん)」の装い。
秋の草花は「綴(つづ)れ咲く」「みだれ咲く」の表現がふさわしいようです・・・
今日聴いたジャズ・・・
THIERRY LANG・・・「NIGHT WIND」
本作は、1956年、スイス、フルーブール州ロモン生まれ、モントリオール出身、スイスを代表するピアニスト、
ティエリー・ラングのリーダー作。
グレン・フェリス(tb)、MATTHIEU MICHAEL(fl)を起用したクインテット編成。
全11曲、すべてティエリー・ラングのオリジナルによる。
アルバム全体の雰囲気は、スローテンポに展開され、穏やかな曲調のものがほとんど。8、9、10は、やや軽快で
明るい印象がある。2管入りといっても、あくまでも、fl、tbはさりげなくピアノトリオに絡んでいて、微塵もうるささを
感じさせない。逆に、二人が参加していることによって、アルバムのよいスパイスになっている。
ティエリー・ラングのピアノは、リリカルで静謐感に溢れ、穏やかでロマンティック、決して弾きすぎることがない。
また、曲によっては、浮遊感漂うトラックもある。
ラングの作品では、パオロ・フレスを起用した、管入りの”REFLECTION Ⅱ”も素晴らしい。
ソロ、トリオ盤のほかには、本作でフリューゲルホーンを吹いている、MATTHIEU MICHELの「ESTATE」、トゥーツ・
シールマンスとの共演盤「BLUE PEACH」、ライブ盤の「THE WINNERS」なども一聴の価値があると思う。
”NIGHT WIND”というロマンティシズムを感じさせるタイトルからして、本盤もまた、ティエリー・ラングの心優しい
人となりを綴った作品といえる。
1・HIS SMILE・・・2・WHEN WE LAST MEET・・・3・TOO MANY MOODS AGO・・・4・NIGHT WIND・・・
5・LES PETITS YEUX・・・6・ONLY WOOD・・・7・THE MOON UNDER WATER・・・8・THE CAT・・・9・HOPE・・・
10・MY SEASON・・・11・LE SABLIER・・・
THIERRY LANG(p)
GLENN FERRIS(tb)
MATTHIEU MICHEL(fl)
HEIRI KAENZIG(b)
KEVIN CHESHAM(ds)
2012年 5月28、29日録音・・・
※ ティエリー・ラングのライブに出かけた記事を2月9日に書いていますので、よろしかったらご覧ください。