開業2年目に入った福岡パルコ。初年度は旧岩田屋本館跡地という立地の良さ、福岡アジアコレクションとのタイアップなど、幾多の追い風で好調をキープした。
ところが、2年目に入った途端、売上げは急降下。4月は昨対34.1%減と極度に落ち込み、5月は26.2%減、6月は22%減とやや回復したものの、セールに入った7月でも15%減と、昨年実績には遠く及ばない。
このコラムでも過去、福岡パルコについては評論したが、JR博多シティが開業しただけで、この有り様である。パルコ側も事前に博多大丸との共同販促や合同ロールプレイングコンテストなどの対応はしたものの、これらが抜本的な対抗策となるはずもなく、むなしい結果をさらけ出す形となった。
ただ、なぜここまで売上げが激減したのか。それは「テナントがバッティングしたから。」という単純な答えで解決する問題ではない。厳密にみると、JR博多シティと被るテナントは「ジェラートピケ」「ドレステリア」「アーバンリサーチ」「トランテアン ソン ドゥ モード」くらいだ。にも関わらずこの4ヶ月で、平均24%以上の落ち込みは異常だ。
筆者はここまで落ち込んだ理由は、2つあると思う。一つは、パルコ進出前からわかっていたハード面の難点である。
旧岩田屋本館は呉服屋だった岩田屋が1936年(昭和11年)に営業をスタートさせたもので、建設から70年以上を経過している。空襲にも耐えた強固なコンクリート構造だが、戦前の建築で天井高が低く、8階建てとはいえ押さえつけられたように感じる。
大震災による建築基準の変更で、パルコも出店時には鉄骨の筋交いなどで補強。だが、店舗空間が従来より広がることはなかった。昨年11月、福岡市はパルコに「都市景観賞」を授与した。しかし、そんなもん「5年も空いていた物件によく入ってくれましたね。ありがとう」といった行政特有の恩情サービスに過ぎない。
所詮、イニシャルコストをギリギリまで削減した張りぼてビルであるのは、改装を担当した設計者やデベロッパーは十分承知のはず。賞なんてもらったところで素直に喜べず、どこかにジレンマがあるのは、容易に想像がつく。
リーシングされたテナントも売上げ規模によるスペース配分こそ、適正だったかもしれないが、最近建築されたビルインに比べると、店づくりやVMDの点で遠く及ばない。
何せ、JR博多シティは総事業費に600億円をかけた超近代的な駅ビル。天井高はパルコの倍近くで優れた開放感を有し、採光や通路スペースなど店舗環境にも十分配慮されている。おまけに付帯設備のパウダールーム、授乳室、トイレはどれをとっても秀逸だ。
ハードだけ見ても、中牟田一族の負の遺産、昭和の遺物に居抜きで入った福岡パルコとは比べ物にならない。お客は一度でも買い物すれば、そのしやすさに惹かれるとリピーターになるのが常。 その意味でパルコは、買い物しやすい競合店ができた途端にお客を持っていかれたのである。
もう一つは、ES(従業員満足度)不足だ。お客が心地いい接客を受けて商品を購入するには、まずテナントスタッフが元気で仕事に取り組めなければならない。パルコにはそうした環境が作られているとは、決して思えないのである。
先のハードもそうで、押さえつけられたような空間では、のびのび仕事をする気にはなれない。恐らく従業員の休憩所に心地いいソファ、ましてマッサージ機などリラクセーション設備なんて置いてはいないだろう。
また、デベロッパーのスタッフがこまめに各テナントを回り、店長やスタッフの相談にのったり、他店の取り組み等をきめ細かく紹介して、売場の手直しをするなどもほとんどしていないのではないか。現実問題として4月の落ち込み以降、V字回復は見られないのだから、そう思わざるを得ない。
言い換えれば、ハード面が充実しているJR博多シティの方がスタッフが仕事をしやすいのは当たり前だし、デベロッパースタッフの気合いの入り方も尋常ではないだろう。
各店長には精鋭の切り込み隊長が配属されているだろうから、あくまで「今のところまで」はモチベーションが違う。全館、全員が目指すは「打倒!天神」。こんなスローガンが聞こえてきそうだ。
それゆえ、パルコが売上げを回復させるには、思い切ってハードから作り直すか、それともコンセプトを変えてテナントを総入れ替えするか。
「9月以降はバーニーズニューヨークも開業するし、多少は沈静化して天神にお客が戻ってくるはず。どうせJR博多シティの人気も一過性だろう」。もし、パルコがそんなことを真顔で考えているようなら、上場企業としては失格である。
まずやることは、原点に立ち返ってテナントヘルプから見直すべきだ。ファッションビルである以上、ソフトを提供してくれるのはテナントであり、商品を販売するのはそこのスタッフたちだ。こうしたスタッフが働きやすい環境で作ってこそ、共同販促やロールプレイングも生きてくるのである。
ところが、2年目に入った途端、売上げは急降下。4月は昨対34.1%減と極度に落ち込み、5月は26.2%減、6月は22%減とやや回復したものの、セールに入った7月でも15%減と、昨年実績には遠く及ばない。
このコラムでも過去、福岡パルコについては評論したが、JR博多シティが開業しただけで、この有り様である。パルコ側も事前に博多大丸との共同販促や合同ロールプレイングコンテストなどの対応はしたものの、これらが抜本的な対抗策となるはずもなく、むなしい結果をさらけ出す形となった。
ただ、なぜここまで売上げが激減したのか。それは「テナントがバッティングしたから。」という単純な答えで解決する問題ではない。厳密にみると、JR博多シティと被るテナントは「ジェラートピケ」「ドレステリア」「アーバンリサーチ」「トランテアン ソン ドゥ モード」くらいだ。にも関わらずこの4ヶ月で、平均24%以上の落ち込みは異常だ。
筆者はここまで落ち込んだ理由は、2つあると思う。一つは、パルコ進出前からわかっていたハード面の難点である。
旧岩田屋本館は呉服屋だった岩田屋が1936年(昭和11年)に営業をスタートさせたもので、建設から70年以上を経過している。空襲にも耐えた強固なコンクリート構造だが、戦前の建築で天井高が低く、8階建てとはいえ押さえつけられたように感じる。
大震災による建築基準の変更で、パルコも出店時には鉄骨の筋交いなどで補強。だが、店舗空間が従来より広がることはなかった。昨年11月、福岡市はパルコに「都市景観賞」を授与した。しかし、そんなもん「5年も空いていた物件によく入ってくれましたね。ありがとう」といった行政特有の恩情サービスに過ぎない。
所詮、イニシャルコストをギリギリまで削減した張りぼてビルであるのは、改装を担当した設計者やデベロッパーは十分承知のはず。賞なんてもらったところで素直に喜べず、どこかにジレンマがあるのは、容易に想像がつく。
リーシングされたテナントも売上げ規模によるスペース配分こそ、適正だったかもしれないが、最近建築されたビルインに比べると、店づくりやVMDの点で遠く及ばない。
何せ、JR博多シティは総事業費に600億円をかけた超近代的な駅ビル。天井高はパルコの倍近くで優れた開放感を有し、採光や通路スペースなど店舗環境にも十分配慮されている。おまけに付帯設備のパウダールーム、授乳室、トイレはどれをとっても秀逸だ。
ハードだけ見ても、中牟田一族の負の遺産、昭和の遺物に居抜きで入った福岡パルコとは比べ物にならない。お客は一度でも買い物すれば、そのしやすさに惹かれるとリピーターになるのが常。 その意味でパルコは、買い物しやすい競合店ができた途端にお客を持っていかれたのである。
もう一つは、ES(従業員満足度)不足だ。お客が心地いい接客を受けて商品を購入するには、まずテナントスタッフが元気で仕事に取り組めなければならない。パルコにはそうした環境が作られているとは、決して思えないのである。
先のハードもそうで、押さえつけられたような空間では、のびのび仕事をする気にはなれない。恐らく従業員の休憩所に心地いいソファ、ましてマッサージ機などリラクセーション設備なんて置いてはいないだろう。
また、デベロッパーのスタッフがこまめに各テナントを回り、店長やスタッフの相談にのったり、他店の取り組み等をきめ細かく紹介して、売場の手直しをするなどもほとんどしていないのではないか。現実問題として4月の落ち込み以降、V字回復は見られないのだから、そう思わざるを得ない。
言い換えれば、ハード面が充実しているJR博多シティの方がスタッフが仕事をしやすいのは当たり前だし、デベロッパースタッフの気合いの入り方も尋常ではないだろう。
各店長には精鋭の切り込み隊長が配属されているだろうから、あくまで「今のところまで」はモチベーションが違う。全館、全員が目指すは「打倒!天神」。こんなスローガンが聞こえてきそうだ。
それゆえ、パルコが売上げを回復させるには、思い切ってハードから作り直すか、それともコンセプトを変えてテナントを総入れ替えするか。
「9月以降はバーニーズニューヨークも開業するし、多少は沈静化して天神にお客が戻ってくるはず。どうせJR博多シティの人気も一過性だろう」。もし、パルコがそんなことを真顔で考えているようなら、上場企業としては失格である。
まずやることは、原点に立ち返ってテナントヘルプから見直すべきだ。ファッションビルである以上、ソフトを提供してくれるのはテナントであり、商品を販売するのはそこのスタッフたちだ。こうしたスタッフが働きやすい環境で作ってこそ、共同販促やロールプレイングも生きてくるのである。