HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

ルールは主催者が決め、主催者が破る。

2014-03-17 16:03:15 | Weblog
 本日、3月17日から「メルセデスベンツ ファッションウィーク東京2014-2015A/W」が始まったが、わが街福岡でも8日から「ファッションウィーク福岡」が開催されている。

 福岡アジアファッション拠点推進会議が主催者となり、福岡市や福岡県、福岡商工会議所が共催し、地元商業施設などの企業が協賛する、ファッションウィークの名を借りた共同販促のキャンペーン週間だ。

 商工会議所の担当者は昨年7月のオリエンで、代理店やデベロッパーを前に「ガイドブック(10万部を印刷)やWebサイトのレスポンスが低く、スタンプラリーもあまり効果がなかった(旅行の懸賞応募538件)」と、前回の反省を述べた。
 
 企画運営委員長の御仁も、「高島市長から春にも何かやれと急に言われたので、あまり準備期間がなかった」と言い訳した。その反省と十分な準備期間を元に、今年のファッションウィークは企画されるはずだった。ところが…である。

 事業予算は700万円。それを原資にイベント、ガイドブックやポスター、特設サイトの制作まで行わなければならない。当然、事業をゲットする代理店には「協賛社の獲得」「スポンサー営業」も行うという条件が課せられたのは言うまでもない。

 でも、結果的に先立つものがないのだから、規模は大幅に縮小され、参加対象はカフェ等の飲食店、インテリア関係までに拡大された。期間は1ヵ月だったものが2週間程度と短縮され、メーンイベントはオープニング、ファッションマーケット、リサイクルとなった。

 オープニングイベントにしても、3周年のリニューアルを実施したアミュプラザ博多やディズニー映画「アナと雪の女王」のプロモーションを抱き合わせたものだ。リサイクルは古着を無料回収して換金し、東日本大震災への寄付にあてられる。

 主催者としては経費を掛けない苦肉の策を取らざるを得なかったわけだ。ファッションマーケットについては、概要発表時からメーンイベントに当てられ、以下のような「出店条件」が設けられていた。


ファッションマーケット出店者の募集について
F.W.F期間中のイベント「ファッションマーケット」への出店者を募集いたします。
■開催日時:2014年3月15日(土) 10:00~17:00〔予定〕
■開催場所:福岡市役所前 ふれあい広場
■対  象:個店、学校、クリエーター、スタイリスト等ファッション業界で活躍されている方、など
■出 店 料:個店/15,000円、クリエーター・学校/8,000円
■留意事項:
※バザーではありません。洋服・雑貨・アクセサリーなどのファッション発信の場となります。
※出店にあたっては審査をさせていただきます。(お断りする場合もございます。)

※出店者の小間割りのみを行いブース施工などは行いません。テーブル、椅子の貸出しは有料となります。なお、出店場所については、事務局にて設定させていただきます。
※雨天決行となります。(出店料の返金は致しかねますのでご了承ください。)




 ところが、昨年10月から出店者の募集が始まったものの、1日限り、屋外というリスク、法外な出店料で、思ったような応募はなかったようである。

 あまりに酷いのは出店条件がゴロっと変えられたことだ。「※バザーではありません。洋服・雑貨・アクセサリーなどのファッション発信の場となります。」というのは、フリマのような「不要品の販売ではない」という意味では、理解できる。

 しかし、学生が出店するブースでは、堂々と「古着」が販売されていた。条件には「※出店にあたっては審査をさせていただきます。(お断りする場合もございます。)」とあるのだから、審査は形骸化し、条件が変更されたのは紛れもない。

 しかも、その学校とは、企画運営委員長の御仁がファッション部長を務めるところだ。自分らでルールを決めたのだから、平気で変えられると考えたのであれば、いったい何様のつもりだろうか。

 もっとも、個人の出店者レベルでは雑貨が主体で、ウエアの販売には限界がある。これも事前に予測はついたこと。店を構えていたり、卸先があるなら、こんな市場に出店する必要などない。そこで、主催者はマーケットの体裁を整えるために、地場アパレルにも出店を願い出ている。

 これまで「福岡アジアコレクション(FACo)」にも、「福岡発信」を口実に参加を請われたメーカーなどだ。別会社で専門店を運営しているところもあるが、ほとんどは小売りを取引先にする卸である。業界のルールとして、メーカーが直販することはまずあり得ない。

 推進会議の母体は福岡商工会議所だから、メーカー側も出店を頼まれれば嫌とは言えなかったのだろう。しかし、この中には別会社とは言え、このイベント会場から数百メートル先に小売店舗を構えているところもあるのだ。

 「小売店とは商品を替えて良い」「1日限りだから大目に見てほしい」と言われれば、メーカーとしては承服できなくはない。でも、主催者側が自らの都合で業界ルールを平気で曲げられると考えるのであれば、あまりに虫が良過ぎる。

 そもそも、上から目線の条件を決めたのは主催者だし、条件を受け止めて出店を断念したところもあるはずだ。主催者の目論見の甘さが露呈し、そのツケを地場メーカーが払わされるのは、あまりに迷惑なことである。



 一方、いちばん経費がかかるガイドブックは、コストダウンを余儀なくされている。広告枠を切り売りして何とか制作費、印刷費を捻出する方法は踏襲されたが、ページ数は昨年の68Pから56P程度に削減された。

 昨年は協賛しなかった商業施設にも置かれていたが、今年は印刷部数を減らしたせいか、それもない。まあ、昨年のファッションウィーク期間中も、ガイドブックが手に取られることなく大量に余っていたことを考えると、選択と集中に舵を切ったとも言える。

 問題は表現やデザイン面、クリエイティビティである。7月のオリエンでは出席した代理店から、「えっ、来年もこれを使うの」と失笑されたからでもないだろうが、 昨年の「ロゴマーク」は使われていない。

 ただ、でき上がったデザインはあまりに酷い。表紙はイージーにファッション誌の「WWD」を真似ているが、タイプフェイスの使い方などを見ると、ファッションをあまり知らない制作会社、デザイナーの仕事であるのがよくわかる。

 メーンのキャラクターもプロのモデルを起用すれば、ヘアメイク、スタイリストといったスタッフが必要になる。とてもそんな制作費はないからモデルの代わりに「リカちゃん人形」を起用。それを擬人化して商業施設やイベントを告知させる手法を取っている。

 しかし、それが全体のイメージを落としたのは否めない。ちなみに東京や大阪でファッションビジネスに携わる知人に現物を見せての評価は、「玩具雑誌みたい」「FASHION WEEKという雰囲気は、まったく感じませんね」「学芸会みたいな考え方か?中学生でも笑うよね!」「大人は手にとらないだろう」etc.だった。

 また、同じようなファッション振興事業に携わる方々からは、「やっつけ仕事なデザインで、誰が手に取るのでしょう」「人形好きですかね。費用対効果はわるそうです」という意見が返ってきた。まさに的を射た評価である。主催者はこれを真摯に受け止めなければならない。

 まあ、イベント内容や広告媒体を見る限り、ファッションウィーク福岡の「福岡に来て服を買ってもらう」という目的自体が形骸化している。「経費がないからしかたない」という言い訳したところで、資金を出し協賛した商業施設には通用しない。

 そもそも700万円もの事業原資があるのだったら、スマホでクーポンでも配布した方がよほど集客、販促につながると思う。それなら多くの商業施設も参加は吝かではないだろうし、どこもやっていないことだから、福岡発信になるのである。

 また、事業予算が少ないのであるなら、FACoへの支援をカットして、こちらに回せば良いだけの話だ。すでにRKB毎日放送の「事業」と化し、こちらは単独でスポンサーを集めているし、NB主体の客寄せ興行であるのは明白だからだ。

 奇しくも3月16日には京セラドームで「関西コレクション」が開催された。FACoが「福岡発信」を強調するなら、エリアが違うのだから同じ日にぶつけてもいいはずである。それとも、できない理由でもあるのだろうか。

 どちらにしても、福岡発信は予算補助獲得のリップサービスにすぎず、すでに安っぽい陳腐な言葉に成り下がっている。ショーイベント自体が地元消費、販促に何らつながらないのは、多くのファッション関係者が認めるところだ。

 福岡市のカワイイ区を含め、一連の事業はテレビ局や芸能事務所、代理店、イベント&デザイン会社、印刷会社に資金が落ちるだけで、とてもファッション業界の振興とは言い難い。今回のファッションウィークを見ても、主催者と周辺の利害関係者の思惑で進んだことがよくわかる。

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