HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

ブランド崇拝がアジアに浸透しはじめた。

2013-07-11 12:45:55 | Weblog
 いつものことながら、事務所前のコム・デ・ギャルソンは、バーゲンセールをダラダラ続けない。入口のドアに「SALE SALE」のPOPが貼られていたのもつかの間。今日、7月11日朝、事務所に来てみると、もう内装工事のスタッフがやってきていた。秋物第1弾の売場改装のためだ。

 9時過ぎで気温は30℃を超えている。でも、明後日には売場に長袖のシャツや梳毛のセーターが並ぶのである。その販売戦略が良いのか、悪いのか。一概には言えないけど、いつまでもクリアランスを続けて荒利を削るより、よほどマシだろう。

 昨日、ショップ前で懇意にするスタッフのMさんと遭ったので、前から感じていた「アジアからの観光客」の話を向けてみた。すると、「先ほども韓国からのお客さんを接客していました」「商品によってはアジアのお客様で完売したものもあります。特に…」とまでで、こちらから話を遮った。中国人といい、韓国人といい、開店前から店の前で待ち、ディスプレイされた「ある商品」を背景に記念撮影している。この「COMME des GARCONS PLAY」がアジアの観光客には人気があると、感じていたからだ。



 こちらが「PLAYが売れているんでしょ」と言うと、Mさんからは「ハイ、ハートマークがアジアでもたいへん売れてまして、品薄になっています」との答えが返って来た。やはり、想像していた通り。これで裏が取れた。経済的に発展している中国や韓国の大衆にとって、豊かさの象徴、排他の価値観、差別意識の具現化は、ブランドを手に入れることだ。特に彼らにとってはブランド=記号なのである。でなければ、あんなに記号ブランドの偽コピーが出回るはずが無い。

 でも、こればかりは本物を自身がお金を出して買っているのだから、これ以上話を挟むつもりは無い。ただ、日本がそうであったようにアジアでも「ブランド崇拝」が浸透しはじめたのは、間違いないだろう。それについて、かつてのメディアや識者は快く思わず蔑むように評論した。
 作詞家の売野雅勇は、自身のインタビューでこう語っている。「まずひと言。ブランド品ブランド品って騒ぐのは、日本人ばかりだ。なんて決めつけているのは、単なるディスコミュニケーション。たぶん、ファッション・オンチのマスコミが、アンチテーゼとして掲げているだけ」。

 いかにも夢を売る芸能界のブレーンらしい発言である。まあ、アイドル歌謡の作詞で稼いだ印税でブルジョワな生活をできたのだから、当然と言えば当然かもしれない。別に売れっ子作詞家をフォローするわけではないが、ブランド崇拝は欧米でもあったことである。米国の景気が良かった80年代前半、旅行客はNYでも東京でもカメラ店の前に並ぶと、「ニコン、ニコン」とただひたすらにウィンドウを見つめていた。
 そして80年代後半の円高になると、今度は日本の女性がパリやミラノのブティックに群がった。要するに、経済的に豊かで、購買力をもつ国の国民は、比較的ブランドを購入していく。 日本人が成熟して、今はそれがアジアの中国人や韓国人ということである。

 「フランス人は、他に惑わされずに、自分に合ったものを選ぶ。日本人はすぐブランド品というだけで買ってしまう」なんて卑下する日本のメディアや識者がいる。でも、今のファッションに限れば、H&MやザラなどグローバルSPAが世界中に出店し、有名デザイナーとのコラボ商品が発売されると、パリでもNYでも早朝から長蛇の列ができる。つまり、オシャレの基本として、まず流行を追いかけ、ブランド品から手に入れていくのは、世界共通の行動ということだ。




 COMME des GARCONS PLAYは、ポロシャツで1枚1万円弱。某SPAのUはノーマークだが1,980円。5倍の開きがある。だから、今のところは中国人も韓国人も、ハートマークのブランド価値だけで購入しているということだろう。

 でも、PLAYのポロシャツは、マークのワッペン一つとっても丹念な刺しゅう仕上げで、それをさらにミシンで丁寧に縫い付けている。シャツ本体は上質な鹿の子生地で、ボタンは貝ボタン、襟はしっかりしてガンガン洗濯してもヨレヨレにはならない。ワンポイントマーク、それも刺しゅうや顔料プリントというSPAとは、根本的に違う。定番アイテムだから5シーズンも持つと、コストパフィーマンスはUより優れていると言えるかもしれない。まさにメイドインジャパンだ。

 こうしたブランドの背景にあるもの作りの考え方を、中国人や韓国人が理解できるのは果たしていつのことだろうか。

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