HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

達成感のためであってはならない。

2012-02-18 13:17:44 | Weblog
 ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが東京証券取引所1部に上場する。ネット通販で急成長している企業だけに、これから経済誌の証券アナライズが熱を帯びてくるのは間違いない。

 同社は1部上場について「決意を新たに企業価値の向上、並びにファッションを通して、世界中の皆様に新しい体験と感動を提供すべくサービスの向上を目指す」というコメントを出したが、ネット企業が上場する主たる目的は会員企業、ユーザーの増加により嵩むサーバーやネットワーク費用のための資金調達だ。
 また、ブランド力、マルチサービスで先行する企業に対抗していくには、新たなビジネス戦略やM&Aなどが必要で、ブレーンのハンティングや技術者育成、技術の確立に上場益は使われなければならない。

 同社はバンド活動社やっていた前澤友作社長が輸入レコードやCDのカタログ販売からスタートし、若者向けのファッションブランドのネットモールに特化して、ブランド開拓から、サイトデザイン、集客、物流までをすべて自社で行なうビジネスモデルを確立した。
 ただ、社員は「ファッションに携わりたい」とか「webデザインがやりたい」などで集まってきた20歳代がほとんどだ。しかし、インターネットを事業の柱に置くベンチャーである限り、社員は刻々と変化するビジネスソリューションを見極め、その先に何が求められるかを嗅ぎ取れる人間にならなければ、すぐに後発に追う抜かれてしまう運命にある。
 マイクロソフトがOS開発でPCをリードしたか思えば、グーグルは検索プログラムでネット環境を一変させたのもつかの間、今度はフェイスブックが世界中を席巻しようとしているのを見れば、一目瞭然である。

 もっとも、最近のZOZOTOWNを見ると、拙速にブランドを集めすぎたことによるページ制作レベルの鈍化、スペックなどの提供情報の粗さも目立つ。高田純次の起用でアダルトの開拓にも打って出たようだが、本来、試着を重視する大人に対して、それを超えるだけのサービスは何も提供されていない。
 また、 受託販売手数料はモール開設当初こそ20%程度だったが、今では新規導入ブランドは30%まで上がっているというから、まさに殿様商売としか言いようがない。確かに出店すれば、写真撮影からページ作成、受注、ピッキング、配送、代金回収まですべて行なってもらえるから、その分の手数料としては決して高くないという見方もあるかもしれない。
 でも、テナントにしてみると売上げの3割も持って行かれるのなら、リアルSCと大差ないと見ることもできる。こちらは接客も試着も現物確認も可能なのだ。「ネットモールは出店コストが安い」は幻想になりつつあるということである。

 1部上場により今後の可能性が期待され、高い株価が付くことが予測される。当然、60%近くを保有する前澤社長には巨額なキャピタルゲインが転がり込む。でも、それは資産であって現金ではない。ストックオプションを導入しているなら、社員の士気もあがるだろうが、今回はそのケースもなさそうである。
 むしろ、これまで以上に経営の透明化、ディスクローズが必要で、外国人投資家などの監視も厳しくなる。資金調達に見合うだけの新たな経営戦略が必要だし、投資家に対するリターンも求められる。ベンチャー企業として1部上場は、それをやってのけたという達成感だけであってはならない。これからもっと激しくなるビジネス環境で生き抜くための「前借り」に過ぎないのである。
 
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