HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

自助で凌ぐしかない。

2021-08-18 06:39:44 | Weblog
 先日、2回目のワクチン接種を完了した。懸念された発熱や倦怠感はなく、肩の痛みも翌日には消えた。だが、ブレークスルー感染もあり、接種したからと安心はできない。福岡県にも第5波が押し寄せており、7月下旬からのデルタ株を含めた感染拡大では、50代以下がおよそ7割を占める。特に40代から50代の重症患者は、昨年の第3波ピーク時の4倍近くになっており、感染が収束に向かうとは言えない現状だ。

 マスメディアはもちろん、ネットにまで3回目のワクチン接種や抗体カクテル療法が取り沙汰されてはいるが、効能の確実性はわからない。抜本的な対策がない中で、接種後もなるべく不要不急の外出は避け、出るにしても人混みには入らず、密にならないようにしてマスクや手洗い、除菌といった基本を続けるしかないと思う。個人的には、行動スケジュールにおける人的接触の時間を10分以内とし、少しずつ動こうかと決めた。

 秋物のきめ細かなチェックまで行うのは厳しいだろう。伊勢丹の新宿店や阪神の梅田本店など13の百貨店では、7月24日から8月5日までにスタッフ370人近くが感染している。政府が11店舗について彼らが勤務するフロアを調べたところ、地下1階いわゆる「デパ地下」が約5割を占めたという。このニュースを目にして正直、ドキッとした。

 筆者の日頃の行動パターンにも、デパ地下が必ず入っている。特に夏場は暑いので、事務所に出勤したり、外出、帰宅する時は冷房が効いている百貨店の1階から地階を抜けるコースを取る。もちろん、週末に料理を楽しむため、デパ地下ではスーパーでは手に入らない食材を購入する。先日もスープカレー用に博多地鶏のぶつ切りや刺身用の魚を買った。

 専門家によると、どこで地雷を踏むか分からない状況なのだとか。東京都のモニタリング会議で指摘されたようにクラスターの発生が多様化し、デルタ株は水ぼうそう並みの感染力で、従来の感染対策では不十分なのだそうだ。

 デパ地下の対面カウンターはパーテーションで遮蔽され、スタッフはマスクとフェイスガードの2重装備。おそらくマスク着用の自分とスタッフが互いに飛沫を受けることはほぼないと思う。感染した百貨店スタッフの約4割は、デパ地下以外のスタッフだ。プライベートなど備えを解いた時に感染したケース、もしくはお客から感染したケースも考えられる。

 もっとも、専門家の指摘では、デパ地下は隅に空気が滞留する場合があり、十分に換気ができるかは疑問という。これは多層構造の駅ビルやショッピングセンターにも言えるのではないか。天井がそれほど高くなくて押さえつけられたような空間で、あまり開放的とは言えない。デベロッパーやショップが感染対策を行っても、感染したお客が来店すればどうなるのか。いちいち、入口で簡易検査は不可能だし、検温がどこまで有効かもわからない。



 福岡県では、8月12日に発表された新規感染者数が1日当たりで初めて1000人(1040人/福岡市594人)を超え、過去最多を更新した。百貨店から感染者が出たという情報はないが、東京や大阪より感染対策が優れているというエビデンスもない。デルタ株には今までの常識が通用しないというから、店舗勤務の人間は仕事以外には人と触れ合う機会や場所を避けるしかないことになる。それが本当に可能なのか。極めて難しい対応を迫られている。

 ここからはあくまで私見になるが、感染するケースは物への接触からより、人からの伝染ではないかと感じる。除菌などの感染対策が定着した中で、ここまで感染者が多発しているのは、やはり人流が最大の原因と見て間違いないだろう。会社や商業施設、学校、サークル、カラオケ、バーなどは、人との交流・接触が長時間かつ密に及ぶので、会話中での「飛沫」が一番の感染源ではないか。感染力が強いと言われるデルタ株はなおさらだろう。

 東京の感染者が多いのは通勤や通学で電車を利用し、オフィスや店舗、学校に行く人々が膨大に及ぶからだ。駅や電車の社内では、どんなに人流を制限してもラッシュ時は密になるし、オフィスや学校、サークル、私的な集まりではとの接触、コミュニケーション=会話がなくなることはない。それだけ感染するリスクは高まる。今は変異株が猛威を振る段階に入ったのだから、30分でも人的な交流・接触をすれば感染の原因となること認識すべきではないか。

 人との交流・接触をできるだけ避けるにはどうすればいいか、各自が自ら考えて行動するしかない。感染して重症化すれば、元も子もない。患者としていくら医療サービスを受ける権利があると主張したところで、自宅待機を余儀なくされれば、為す術はなく絶望の縁を彷徨うことになるのだ。


メディアの主張はコロナ感染対策にならない?

 この1年、政府や自治体は数々のコロナ感染防止対策をとってきた。それについて業界メディアはほぼ批判のオンパレードだった。しかも、自粛でコレクションはじめ、メーカーの展示会が縮小や中止し、実店舗の売り上げ低迷、販売スタッフの自宅待機など、我慢は限界に達した。そのため、今年に入るとリアルな現場に人々の行動を促す論調さえ目立ってきた。ざっと以下のようなものがある。

 「自粛意識で消費が滞っていると経済は悪くなる一方だ。一定の線引きと基準にのっとった上で消費活動することは悪ではない。街の活気を「気の緩み」として捉えるか、「社会が適応に向かっている」と捉えるのか。この差が今後のコロナとの付き合い方を左右していきそうだ」

 「対象地域ではラグジュアリーブランドなどの路面店が営業継続しており、大型商業施設の休業が人出を減らす効果があるのか疑問(都内百貨店)という不満が多かった。休業延長は経営への打撃をはじめ、従業員の雇用不安、取引先の業績悪化などその影響は計り知れない

 「アパレル店で働く友人が「休業要請がこれ以上続くと会社がもたない」と漏らした。服は必需品であり、生活の糧でもある。それを奪い取る権利は政府、知事にはない

 「感染状況の違いがあるにせよ、国からの各知事への事務連絡には「消費者にとって何が生活必需かを最も把握している事業者の意見等も勘案」との文言があるという。必需品に〝県境〟はないはずだが

 一定の線引きと基準にのっとった上で消費活動することは悪ではないというが、その基準は各自で曖昧だからこうも感染が爆発しているのではないか。さらにデルタ株にはそれらが全く通用しない。街の活気を社会が適応に向かっている証拠と捉えるのは、あまりに無責任だ。社会は一個人の集まりで、各自は行動も生活スタイルも違う。誰かがついつい話し込むなど少しでも油断すれば、ウイルスが否応なく攻め込んでくる。そんな社会が適応できないのがコロナ禍なのだ。

 大型商業施設の休業が人出を減らす効果があるのかの疑問でも、まずはスタッフの出勤を抑え、買い物客の来店を止めることが人流の抑制の第一歩だ。百貨店が感染者を多数出したのは、自粛生活の反動でお客の方から買い物に出向いたこともある。都心は商品だけでなく、飲食やエンターテインメントも楽しめる。顧客心理として出かけたくなる。

 アパレルのショップも「わざわざ来店してくださるお客さまを『いらっしゃいませ』でお迎えして快く買い物していただき、『ありがとうございました』『またどうぞお越し下さいませ』と、お見送りしましょう」と、店長はハッパをかけているはずだ。

 確かにホスピタリティのある接客対応は、高級ブランドや高級時計、宝飾品、高級惣菜やお菓子などに有効で好調な売上げをもたらす。しかし、スタッフが感染して防止対策の見直しを余儀なくされた。接客・対面販売と感染リスクは表裏一体なのを改めて見せつけられたわけだ。百貨店は緊急事態宣言による減収を心配する暇があったら、飛沫感染防止に止まらずキャッシュレス決済や非接触の販売スタイルを整備するのが先ではないのか。

 必需品の解釈論も意味はない。県によって所得格差があるのだから、価値観が異なるのは当然だ。問題は食品や日用品だろうと、高級ブランドだろうと、購入のために人流が増えること。また、店舗での時間をかけた接客が感染拡大のリスク要因であることだ。所得がAクラスの東京では、全体的に都市部での買い物を避けてもらう。所得がCクラスの県では日用品のみの買い物に絞ってもらう。人流を少しでも減らす政策は県によって違ってくるはずである。



 国や自治体、メディア、ネット。それぞれが場当たり的な感染対策の情報を打ち出すだけで、国民は翻弄されながら自分の感覚だけで判断している。しかし、それは専門家が発するいろんな感染対策に則った上での「思考」ではない。ウイルス対策としてワクチンが一番有効なのは、過去の疫病克服が何よりの証左だ。にも関わらずネットのガセネタを鵜呑みし、エビデンスも無いのに胡散臭い輩の分断と同調圧力に巻き込まれている愚か者があまりに多すぎる。

 感染症は人から人に移っていくのだから、人との交流・接触を避けるしかないのである。アパレル各社、各店舗が売上げも失っても、ビジネス自体が将来にわたって無くなるわけではない。むしろ、重要な人材が失われる方が莫大な損失を被ることになる。そうした思考を持ちながら、今は自助で凌ぐしかないと考える。

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