HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

経営者の発想転換が大事。

2016-01-29 10:51:03 | Weblog
 The FLAGから寄稿を頼まれたので、遅ればせながら当コラムで論じてみたい。

 若者がファッション離れしてきたと言われる。それは「買う方」だけでなく、「売る方」も減っているということだろうか。

 The FLAGの独自調査を見ると、ファーストリテイリングを筆頭に、16位のパルコまでは「従業員数」が増加している。

 だが、これらの企業は海外を含めた出店数が増えていたり、企業間の合併や同業他社の吸収などM&Aがらみもあるだろう。従業員の大半は販売スタッフかもしれないけど、MDやエリア管理なども含まれるはずだ。

 何より、本来は従業員に数えるべきパートスタッフを正社員化したことで、従業員が水増しされるという数字のマジックもあるのかもしれない。

 こうした状況の一方で、17位以下は従業員数が減少に転じる。だから、雰囲気的にはファッション業界で働く人々はトータルでは、減っていると見た方がいいだろう。

 都市部の再開発を含めて、商業施設の開発は今後も続く。販売スタッフを中心として必要なはずだ。ただ、イオンモールでは岡山市への出店あたりから、テナントがスタッフ募集をしても、中々集まらないとのニュースが流れた。

 岡山市という都市部でもそうなのだから、今後、純然たる郊外出店では販売スタッフ確保に窮するテナントが増えてくることは予測される。

 都市部は、交通アクセスやブランドの顔ぶれから販売スタッフは集めやすいと思うが、調査データを見る限りでは、知名度のある企業や人気ブランドでない限り、若者を中心とした人手不足は深刻になっていくのかもしれない。

 特に小売業は出店するにしても、販売スタッフが集まらないのでは、話にならない。デベロッパーもスタッフ不足で小売りが出店に二の足を踏むのでは、テナントリーシングもままならない。

 構造的な問題として、アパレル、小売り、デベロッパーの3社が取り組まなければならないというのが正論だろう。

 でも、それで解決策が出るかと言えば、現状のデフレが続く限り、個人的には無理だと思う。理屈として、高い賃金、良い待遇は、売上げに正比例する。

 売上げを上げるには、高い販売力やホスピタリティ、接客術などが求められる。だが、それが専門学校や大学の教育、入社後の企業研修くらいでどこまで習得させられ、本人が吸収できるか。

 一律で絶対数が揃うかどうかについては、筆者は懐疑的である。

 企業側は賃金が安い若年従業員を育てて、活用したいのだろうが、今の業界を見ている若者がそれに簡単に応じるとはとても思わない。優秀な人間ほど、高待遇な業界に流れていくし、条件として正社員などの待遇は譲れないだろう。

 日本のファッションマーケットは大半をボリュームゾーンが占める。その市場がデフレの影響を一番受けていることを考えると、企業は安い賃金しか払えないわけだから、新卒を中心にしたスタッフ確保は容易ではないと思う。

 スタッフ確保→正社員化→高賃金の約束→高度な能力→他業界、異業種に就職、転職という構図。いまのファッション業界がこれに簡単にくさびを打つことができるか。限りなく難しい状況だ。

 一方、発想を変えると、従業員は何も若者でなければならないことはない。いわゆる、主婦層の活用である。20代で、結婚、出産を経験すると、30代、40代では時間的な余裕も出てくる。

 IT業界のような業界は高度な技術を必要とする職種は無理だが、いたってアナログな接客はできなくはないという主婦層は相当数がいると思う。1日のうちで3時間でも5時間でも働けるなら、パートでも構わないという層だ。

 実際、そういうニーズは決して少なくないと思う。ブ左翼は「非正規雇用は悪だ」みたいに宣うが、働くのは個人の意思だし、働き方は多様化した方が企業にも、個人にもメリットは大きい。

 20代の若者はファッション離れかもしれないが、30代以降の主婦層が仕事に就けば街着やコスメも必要になり、需要が喚起されるのは間違いない。

 「若者向けのショップにおばさんが居ても…」というご意見もあるだろう。しかし、現実としてスタッフ不足は深刻だ。四の五の言える状況ではないはずである。

 それでなくても、日本は確実に少子高齢が進んでいる。ミドルエージを活用しなくて、誰が労働力の中心になるというのか。

 企業の中には、主婦層の起用を積極的に進めているところもある。郊外SCへのテナント出店で年商100億円を達成しつつある地場SPAだ。

 ところが、「田んぼの畦道を夜間に帰宅させるのはどうか」と、郊外店で働く主婦スタッフを案じ、経営者は脱郊外SCの必要性も語り始めている。

 現にSC業態で培った商品開発や店づくりのノウハウを生かし、昨年からは都市部でのOL向け業態の展開をスタートさせた。

 当然、ここでは郊外店での勤務経験をもつ主婦パートがキャリアアップして、店長などのポストにも就いている。

 もちろん、社内でも「主婦スタッフの取締役への登用」「店長、チーフクラスの待遇改善、その後のポストの創出」「パートから正社員への登用」と、体制整備には惜しみない投資を行っている。

 パートであっても、優秀な販売スタッフはホテルに一堂に会し、家族全員と共にディナーパーティを兼ねた表彰式も開催している。子供には母親に対する作文を読んでもらうサプライズ企画もあるという。

 もちろん、主婦向けにはどんなパーティウェアが良いか。マーケティングや企画立案にも役立てるなど、抜け目は無い。

 さらに自治体からも「子育て応援企業」のお墨付きももらうなど、主婦が働き易い環境整備には徹底して取り組んでいる。

 「世の中はスタッフ不足と言ってますが、うちは従業員募集で苦労したことはないし、働きたい人はどんどん活用していきたい」と、この企業の経営者は語る。

 The FLAGの独自調査にある16位までの企業でも、ファーストリテイリング、良品計画、三越伊勢丹、パルなどには、主婦スタッフがいることが従業員増加を後押ししているのではないだろうか。

 サマンサタバサにしても、今働いているスタッフが「無事」?に結婚、出産した後、再び働きたくて戻ってくる可能性は無きにしも有らずだ。

 とすれば、従業員が増加している会社の方針や経営者の考え方は、この企業とシンクロするのではないだろうか。

 要は企業の方針、経営者の考え方次第だと思う。
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