地方自治体は前年度の「事業決算」を12月を目処にまとめて報告する。
福岡市の平成26年度決算(平成26年4月1日~27年3月31日)も、各部局毎に分科会が開催され、詳細については資料に基づき説明がなされている。
第三分科会には、農林水産業や商工業、観光、文化などの部局が名を連ね、2015年10月14日、15日には、経済観光文化局所管の事業について決算説明が行われた。
http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/50945/1/26kessan-keizai-shiryo.pdf
資料によると、事業の3番目に「コンテンツを核とした国際ビジネスの振興」がある。予算としては2億6937万1000円が拠出され、執行されている。
資料には「クリエイティブ関連産業の振興について、…ファッション産業における民間主導による福岡アジアコレクションやファッションウィーク福岡の開催のほか…などにより、関連産業の集積を計るとともに、まちの魅力を高め、集客や経済の活性界につなげた」と記述されている。
クリエイティブ関連産業の振興として執行された予算は、3373万8000円だ。
その第二項目は、福岡アジアファッション拠点推進会議による事業展開、「福岡アジアコレクション/FACo」の開催、「合同展示会」(おそらくGOLDRUSHと思われる)、「ファッションウィーク福岡」となっている。
成果、実績は福岡アジアコレクション/ FACoが入場者数7,546人、GOLDRUSHが出展者91社・93ブランド(数回開催)、ファッションウィーク福岡の参加企業260社とある。
次年度の目標では、ファッションウィーク福岡参加企業が300社以上となっている。報告はこの程度で終わりだ。
当コラムでは、2008年の福岡アジアファッション拠点推進会議発足以来、事業計画書に書かれた本来の目的と福岡アジアコレクション/FACoを中心にした事業内容とのズレや違いを指摘してきた。背景にある利害関係者の暗躍も含めてだ。
そこで、今回は事業目的と予算執行に関する大きな矛盾、整合性を欠如を指摘してみたい。
タイムリーなことに福岡アジアファッション拠点推進会議のサイトでも、3月に開催される福岡アジアコレクション/FACoのチケット発売が告知された。
当然、平成27年度の経済観光文化局予算がFACoのためにプールされ、執行されるのはいうまでもない。
http://www.fa-fashion.jp/index.php?action_detail_index=true&doc_id=288
サイト告知では堂々と、福岡ブランドと全国の人気ブランド(NB)が繰り広げる「リアルクローズファッションショー」とある。
これは福岡アジアコレクション/FACoが初めて開催されたときから、プロデューサーが声高に叫んでいることだ。
そもそも「リアルクローズ」とは何か。我々ファッション業界で仕事している人間の間では、「パリコレのようなコレクションショーでの発表用=クリエーション(創作物)ではなく、普通の生活で実際に着られる服や、他のものと組み合わせて多用途に使える服」という解釈である。
つまり、限りなく汎用性のある、一般のショップで販売されている服をさす。
最近はパリコレでも、ビジネス優先、売れることが前提の服が大半を占めるようになった。
コムデギャルソンの川久保玲氏は、読売新聞の年頭インタビューで、「パリコレはクリエーション(創作)をぶつける場と捉え、ビジネスを考えずに作りたいものを作ると決め、突き詰めた表現をするようにした」と答えたが、そうしたデザイナーやブランドはむしろ少数派になってきている。
クリエーションと言っても、ファッションビジネスだから、売れる服とのバランスが重視されてきたのは以前から変わらない。
どうしてもコレクション発表の中で、メディアが奇抜な服を切り取って、報道するするからそんなイメージができ上がったに過ぎないのだ。
ただ、昨今は大手メゾン、ファッションコングロマリットほど、投資家やファンドが経営を支えていることがあり、単期に売上げを上げてリターンしなければならない。
だから、クリエーション一辺倒から「売れる服」を重視したリアルクローズ偏重になってきているのも事実である。
話を元に戻そう。つまり、福岡アジアコレクション/FACoがリアルクローズのファッションショーなら、なぜ福岡市はクリエーションを生み出すべきクリエイティブ関連の事業と位置づけるのか。まず、ここに大きな矛盾、整合性の無さがある。
FACoを仕切るRKB毎日放送のプロデューサー、経済観光文化局の担当者は、事業の冠にある「コンテンツ」を引き合いに出して、「FACoがコンテンツを核にした国際ビジネス」には違いないと言い訳するだろう。
でも、実際にはFACoは「クリエイティブ関連産業の振興」の事業とはっきり位置づけられ、予算は執行されるというパラドクスをどう説明するのか。
服以外の企画内容も、クリエイティブ産業とはほど遠い。事業主体は福岡アジアファッション拠点推進会議になるが、福岡市が「民間主導」と言っている通り、FACoの制作はRKB毎日放送という放送事業者が行っている。
しかし、民間主導は後づけで、そうする根拠は何も示されていない。しかも、RKBは東京の芸能プロダクションやモデル事務所に所属するタレントを呼び、ステージ設営、音響、照明などはすべてイベント業者丸投げで、イベントを仕切っているだけだ。
ショーの演出なども、RKBの系列会社であるMBS大阪毎日放送が主催している「神戸コレクション」のノウハウをそのまま流用しているに過ぎない。
こうした形態を見ても、福岡アジアコレクションという名称は、自治体から関連の事業予算を引き出すための「冠」に過ぎず、放送事業が頭打ちのRKBが税金を後ろ盾に「事業収入」に確保しようという「客寄せ興行」なところが明白だ。
つまり、民間主導と言っても、それは単なるパクリ。言うなれば、クリエイティブ関連産業なんてレベルには遠く及ばないしろ物と言える。
一方で、福岡アジアコレクション/FACoには、「福岡県」からも予算が拠出、執行されている。もともとは福岡アジアファッション拠点推進会議は、福岡県の麻生元知事と福岡商工会議所が主導するという?形で発足された。
そのため、福岡県は当初、「福岡をアジアに開かれたファッション拠点都市を目指すこと」を目的として、どちらかというと地場ファッション産業の振興や情報発信、人材育成を目的にした事業に位置づけられた。
ところが、事業開始から8年もたつのに、地盤産業の振興も人材育成もほとんど見られない。それどころが、福岡市と福岡県とも事業目的で実際に行われていることに整合性が見られず、相乗効果も疑わしい。
事業者にとっては予算が降りると、いつの間にか事業目的=大義は形骸化し、事業主体の利害関係者にとっては、「予算を獲得できれば大義なんかはどうでもいい」「とにかく予算を得るためには何でもかんでも事業をでっち上げればいい」ようになっていく。
地場ファッション産業の振興と言いながら、東京から三文タレントを呼び、神戸コレクションのノウハウそのもので、シンガポールやタイのバンコクで開催する客寄せ興行が、とても地盤産業の振興、情報発信、ましてクリエイティブ産業であるはずがない。
クリエイティブと言えば、昨年、醜聞をまき散らした佐野研二郎氏が思い浮かぶ。同氏もフリーのアートディレクターだが、出身は広告代理店のH社だった。
同社は、クリエイティブ関連産業の振興で、三番目の項目に上げられている「ファッションウィーク福岡」も2年連続で民間事業者となり、イベントの企画実施に携わっている。
ところが、一昨年の事業では、市役所前広場での「ファッションマーケット」が参加者が思うように集まらず、企画として失敗に終わっている。
昨年は代理店お得意の芸能人を呼ぶ企画にシフトしたが、これとて予算の都合からギャラが安い泣かず飛ばすのミュージシャンや三流モデルをブッキングせざるを得ず、それらが事業効果を生んだかについては極めて曖昧だ。
決算報告書には、「ファッションウィーク福岡の参加企業260社・店」とあるが、この数字もサイトなどに無料掲載に応じた飲食店や理容美容店まで、すべて頭数に入れた計算である。行政がよくやる誇大な実績報告に過ぎない。
ファッションウィーク福岡が対象とするエリアは、福岡市の中心部天神、博多駅と周辺の大名、今泉、薬院と規定され、参加できる企業や店舗は限定的だ。
博多駅前に「マルイ博多」が開業すると言っても、オープンは4月21日だからイベントには間に合わないし、 1店ではどうしようもない。
本年度はそれを「300店に増やす目標」というから、不参加店舗の目減りを想定すれば、この数字も根拠を欠く。それでなくても、過去3回の事業を見ると、さらに何でもかんでも数字に計上するような事態も予測される。
合同展示会のGOLDRUSHにしても、もともとは地場アパレルのJACトレーディング(現リンクイット)が企画主導し、県内外のアパレルや雑貨のメーカーに呼びかけて実施していたものだ。
それを利害関係者が無理矢理に一連の事業に加え、市からの支援を取り付けるかたちで、自らの企画という風に取り繕っているに過ぎない。
来場するバイヤーは思ったほどなく、地場有力のセレクトショップや専門店が期待しているかと言えば、それも懐疑的だろう。
まあ、行政の担当者は目標が達成できなくても痛くも痒くもないだろうし、利害関係者にとっては実際の参加企業数とは異なる架空の数値をいかに計上するか、今から色々考えているだろうが。
福岡アジアコレクション/FACoが神戸コレクションの劣化コピーであるなら、ファッションウィーク福岡も、「神戸ファッションウィーク」の「パクリ」がうかがえる。
筆者は永年、業界で働いてきたので、ワールドをはじめ神戸所縁のアパレルメーカーにも知り合いが多い。その一人が昨年、送ってくれたのが表紙に「18th KOBE FASHION WEEK」とローマ字表記されたパンフレットである。
内容、ページ構成を見ると、第1回目、2回目のファッションウィーク福岡でパンフレットが制作されたと酷似している。
参加企業や店舗の紹介からエリア地図、イベント内容の告知、広告ページ、そしてスポンサー企業の紹介などにいたる割り振りもそっくりだ。まさに「パクリじゃん」って言われそうである。
発行人名を見ると、なおさらである。福岡アジアファッション拠点推進会議の発足総会の時に基調講演を行い、MBS大阪毎日放送とともにRKB毎日放送に客寄せ興行のファッションイベントを指南したT氏である。
今でこそ、福岡アジアコレクション/FACoのステージングを担当していたイベント会社の代表は辞しているが、別の形で影響力を発揮しているようである。
昨年のファッションウィーク福岡は、RKBや代理店一辺倒への予算配分を避けてか、FBS福岡放送の「情報番組」でもアピールしている。もちろん、10分程度の番組だから、パブリシティではなく、「有料」でVTR制作したのは間違いないだろう。
昨年11月には、今回のファッションウィーク福岡の参加施設、コミュニティの募集、及び企画内容が募集された。
RKBが福岡アジアコレクション/FACoに予算を使う関係から、ファッションウィーク福岡にも多くを避けないのか、昨年からイベントそのものは縮小気味である。
また、参加企業に企画を考えさせ、ウィークそのものは集客や販促の共同キャンペーンを張る程度に落ち着いている。それにしても、福岡市民の血税が使われていることに変わりはない。
問題の構図はそれだけではない。福岡市はクリエイティブ産業の振興として、福岡県は地場産業の振興や情報発信、人材育成として、それぞれ予算を拠出しながら、事業成果はいたって曖昧で何も見えて来ない。
「とにかく大義なんかどうでもいい」「事業収入が上がればいい」「イベントやプロモーションでミーハーな若者(学生)を集めればいい」
利害関係者にとっては、シンガポールやバンコクでファッションイベントを開催するのも、タレントを呼ぶのも、全く同じ感覚のようである。
そこには地場ファッション産業の振興も、クリエイティブ産業の振興もないことだけでは、確かである。
こうした問題に一切踏み込まれることなく、経済観光文化局所管の決算は素通りしていることは、やはり問題だと言わざるを得ない。
県議会や市議会の議員さんは、行政担当者に税金の使われたと事業内容や目的に問いただしても吝かではないはずである。公聴会などを開いて、利害関係者を公の場に引っ張り出してもいいのではないか。
何なら一連の事業に関して、議員さんが議会で審議するための質問状を作ってあげてもいいくらいだ。
部局の担当者も答弁に窮するくらいのものは作れると思うし、公聴会の参加できるのなら利害関係者を論破するくらいの自信はあるのだが。
福岡市の平成26年度決算(平成26年4月1日~27年3月31日)も、各部局毎に分科会が開催され、詳細については資料に基づき説明がなされている。
第三分科会には、農林水産業や商工業、観光、文化などの部局が名を連ね、2015年10月14日、15日には、経済観光文化局所管の事業について決算説明が行われた。
http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/50945/1/26kessan-keizai-shiryo.pdf
資料によると、事業の3番目に「コンテンツを核とした国際ビジネスの振興」がある。予算としては2億6937万1000円が拠出され、執行されている。
資料には「クリエイティブ関連産業の振興について、…ファッション産業における民間主導による福岡アジアコレクションやファッションウィーク福岡の開催のほか…などにより、関連産業の集積を計るとともに、まちの魅力を高め、集客や経済の活性界につなげた」と記述されている。
クリエイティブ関連産業の振興として執行された予算は、3373万8000円だ。
その第二項目は、福岡アジアファッション拠点推進会議による事業展開、「福岡アジアコレクション/FACo」の開催、「合同展示会」(おそらくGOLDRUSHと思われる)、「ファッションウィーク福岡」となっている。
成果、実績は福岡アジアコレクション/ FACoが入場者数7,546人、GOLDRUSHが出展者91社・93ブランド(数回開催)、ファッションウィーク福岡の参加企業260社とある。
次年度の目標では、ファッションウィーク福岡参加企業が300社以上となっている。報告はこの程度で終わりだ。
当コラムでは、2008年の福岡アジアファッション拠点推進会議発足以来、事業計画書に書かれた本来の目的と福岡アジアコレクション/FACoを中心にした事業内容とのズレや違いを指摘してきた。背景にある利害関係者の暗躍も含めてだ。
そこで、今回は事業目的と予算執行に関する大きな矛盾、整合性を欠如を指摘してみたい。
タイムリーなことに福岡アジアファッション拠点推進会議のサイトでも、3月に開催される福岡アジアコレクション/FACoのチケット発売が告知された。
当然、平成27年度の経済観光文化局予算がFACoのためにプールされ、執行されるのはいうまでもない。
http://www.fa-fashion.jp/index.php?action_detail_index=true&doc_id=288
サイト告知では堂々と、福岡ブランドと全国の人気ブランド(NB)が繰り広げる「リアルクローズファッションショー」とある。
これは福岡アジアコレクション/FACoが初めて開催されたときから、プロデューサーが声高に叫んでいることだ。
そもそも「リアルクローズ」とは何か。我々ファッション業界で仕事している人間の間では、「パリコレのようなコレクションショーでの発表用=クリエーション(創作物)ではなく、普通の生活で実際に着られる服や、他のものと組み合わせて多用途に使える服」という解釈である。
つまり、限りなく汎用性のある、一般のショップで販売されている服をさす。
最近はパリコレでも、ビジネス優先、売れることが前提の服が大半を占めるようになった。
コムデギャルソンの川久保玲氏は、読売新聞の年頭インタビューで、「パリコレはクリエーション(創作)をぶつける場と捉え、ビジネスを考えずに作りたいものを作ると決め、突き詰めた表現をするようにした」と答えたが、そうしたデザイナーやブランドはむしろ少数派になってきている。
クリエーションと言っても、ファッションビジネスだから、売れる服とのバランスが重視されてきたのは以前から変わらない。
どうしてもコレクション発表の中で、メディアが奇抜な服を切り取って、報道するするからそんなイメージができ上がったに過ぎないのだ。
ただ、昨今は大手メゾン、ファッションコングロマリットほど、投資家やファンドが経営を支えていることがあり、単期に売上げを上げてリターンしなければならない。
だから、クリエーション一辺倒から「売れる服」を重視したリアルクローズ偏重になってきているのも事実である。
話を元に戻そう。つまり、福岡アジアコレクション/FACoがリアルクローズのファッションショーなら、なぜ福岡市はクリエーションを生み出すべきクリエイティブ関連の事業と位置づけるのか。まず、ここに大きな矛盾、整合性の無さがある。
FACoを仕切るRKB毎日放送のプロデューサー、経済観光文化局の担当者は、事業の冠にある「コンテンツ」を引き合いに出して、「FACoがコンテンツを核にした国際ビジネス」には違いないと言い訳するだろう。
でも、実際にはFACoは「クリエイティブ関連産業の振興」の事業とはっきり位置づけられ、予算は執行されるというパラドクスをどう説明するのか。
服以外の企画内容も、クリエイティブ産業とはほど遠い。事業主体は福岡アジアファッション拠点推進会議になるが、福岡市が「民間主導」と言っている通り、FACoの制作はRKB毎日放送という放送事業者が行っている。
しかし、民間主導は後づけで、そうする根拠は何も示されていない。しかも、RKBは東京の芸能プロダクションやモデル事務所に所属するタレントを呼び、ステージ設営、音響、照明などはすべてイベント業者丸投げで、イベントを仕切っているだけだ。
ショーの演出なども、RKBの系列会社であるMBS大阪毎日放送が主催している「神戸コレクション」のノウハウをそのまま流用しているに過ぎない。
こうした形態を見ても、福岡アジアコレクションという名称は、自治体から関連の事業予算を引き出すための「冠」に過ぎず、放送事業が頭打ちのRKBが税金を後ろ盾に「事業収入」に確保しようという「客寄せ興行」なところが明白だ。
つまり、民間主導と言っても、それは単なるパクリ。言うなれば、クリエイティブ関連産業なんてレベルには遠く及ばないしろ物と言える。
一方で、福岡アジアコレクション/FACoには、「福岡県」からも予算が拠出、執行されている。もともとは福岡アジアファッション拠点推進会議は、福岡県の麻生元知事と福岡商工会議所が主導するという?形で発足された。
そのため、福岡県は当初、「福岡をアジアに開かれたファッション拠点都市を目指すこと」を目的として、どちらかというと地場ファッション産業の振興や情報発信、人材育成を目的にした事業に位置づけられた。
ところが、事業開始から8年もたつのに、地盤産業の振興も人材育成もほとんど見られない。それどころが、福岡市と福岡県とも事業目的で実際に行われていることに整合性が見られず、相乗効果も疑わしい。
事業者にとっては予算が降りると、いつの間にか事業目的=大義は形骸化し、事業主体の利害関係者にとっては、「予算を獲得できれば大義なんかはどうでもいい」「とにかく予算を得るためには何でもかんでも事業をでっち上げればいい」ようになっていく。
地場ファッション産業の振興と言いながら、東京から三文タレントを呼び、神戸コレクションのノウハウそのもので、シンガポールやタイのバンコクで開催する客寄せ興行が、とても地盤産業の振興、情報発信、ましてクリエイティブ産業であるはずがない。
クリエイティブと言えば、昨年、醜聞をまき散らした佐野研二郎氏が思い浮かぶ。同氏もフリーのアートディレクターだが、出身は広告代理店のH社だった。
同社は、クリエイティブ関連産業の振興で、三番目の項目に上げられている「ファッションウィーク福岡」も2年連続で民間事業者となり、イベントの企画実施に携わっている。
ところが、一昨年の事業では、市役所前広場での「ファッションマーケット」が参加者が思うように集まらず、企画として失敗に終わっている。
昨年は代理店お得意の芸能人を呼ぶ企画にシフトしたが、これとて予算の都合からギャラが安い泣かず飛ばすのミュージシャンや三流モデルをブッキングせざるを得ず、それらが事業効果を生んだかについては極めて曖昧だ。
決算報告書には、「ファッションウィーク福岡の参加企業260社・店」とあるが、この数字もサイトなどに無料掲載に応じた飲食店や理容美容店まで、すべて頭数に入れた計算である。行政がよくやる誇大な実績報告に過ぎない。
ファッションウィーク福岡が対象とするエリアは、福岡市の中心部天神、博多駅と周辺の大名、今泉、薬院と規定され、参加できる企業や店舗は限定的だ。
博多駅前に「マルイ博多」が開業すると言っても、オープンは4月21日だからイベントには間に合わないし、 1店ではどうしようもない。
本年度はそれを「300店に増やす目標」というから、不参加店舗の目減りを想定すれば、この数字も根拠を欠く。それでなくても、過去3回の事業を見ると、さらに何でもかんでも数字に計上するような事態も予測される。
合同展示会のGOLDRUSHにしても、もともとは地場アパレルのJACトレーディング(現リンクイット)が企画主導し、県内外のアパレルや雑貨のメーカーに呼びかけて実施していたものだ。
それを利害関係者が無理矢理に一連の事業に加え、市からの支援を取り付けるかたちで、自らの企画という風に取り繕っているに過ぎない。
来場するバイヤーは思ったほどなく、地場有力のセレクトショップや専門店が期待しているかと言えば、それも懐疑的だろう。
まあ、行政の担当者は目標が達成できなくても痛くも痒くもないだろうし、利害関係者にとっては実際の参加企業数とは異なる架空の数値をいかに計上するか、今から色々考えているだろうが。
福岡アジアコレクション/FACoが神戸コレクションの劣化コピーであるなら、ファッションウィーク福岡も、「神戸ファッションウィーク」の「パクリ」がうかがえる。
筆者は永年、業界で働いてきたので、ワールドをはじめ神戸所縁のアパレルメーカーにも知り合いが多い。その一人が昨年、送ってくれたのが表紙に「18th KOBE FASHION WEEK」とローマ字表記されたパンフレットである。
内容、ページ構成を見ると、第1回目、2回目のファッションウィーク福岡でパンフレットが制作されたと酷似している。
参加企業や店舗の紹介からエリア地図、イベント内容の告知、広告ページ、そしてスポンサー企業の紹介などにいたる割り振りもそっくりだ。まさに「パクリじゃん」って言われそうである。
発行人名を見ると、なおさらである。福岡アジアファッション拠点推進会議の発足総会の時に基調講演を行い、MBS大阪毎日放送とともにRKB毎日放送に客寄せ興行のファッションイベントを指南したT氏である。
今でこそ、福岡アジアコレクション/FACoのステージングを担当していたイベント会社の代表は辞しているが、別の形で影響力を発揮しているようである。
昨年のファッションウィーク福岡は、RKBや代理店一辺倒への予算配分を避けてか、FBS福岡放送の「情報番組」でもアピールしている。もちろん、10分程度の番組だから、パブリシティではなく、「有料」でVTR制作したのは間違いないだろう。
昨年11月には、今回のファッションウィーク福岡の参加施設、コミュニティの募集、及び企画内容が募集された。
RKBが福岡アジアコレクション/FACoに予算を使う関係から、ファッションウィーク福岡にも多くを避けないのか、昨年からイベントそのものは縮小気味である。
また、参加企業に企画を考えさせ、ウィークそのものは集客や販促の共同キャンペーンを張る程度に落ち着いている。それにしても、福岡市民の血税が使われていることに変わりはない。
問題の構図はそれだけではない。福岡市はクリエイティブ産業の振興として、福岡県は地場産業の振興や情報発信、人材育成として、それぞれ予算を拠出しながら、事業成果はいたって曖昧で何も見えて来ない。
「とにかく大義なんかどうでもいい」「事業収入が上がればいい」「イベントやプロモーションでミーハーな若者(学生)を集めればいい」
利害関係者にとっては、シンガポールやバンコクでファッションイベントを開催するのも、タレントを呼ぶのも、全く同じ感覚のようである。
そこには地場ファッション産業の振興も、クリエイティブ産業の振興もないことだけでは、確かである。
こうした問題に一切踏み込まれることなく、経済観光文化局所管の決算は素通りしていることは、やはり問題だと言わざるを得ない。
県議会や市議会の議員さんは、行政担当者に税金の使われたと事業内容や目的に問いただしても吝かではないはずである。公聴会などを開いて、利害関係者を公の場に引っ張り出してもいいのではないか。
何なら一連の事業に関して、議員さんが議会で審議するための質問状を作ってあげてもいいくらいだ。
部局の担当者も答弁に窮するくらいのものは作れると思うし、公聴会の参加できるのなら利害関係者を論破するくらいの自信はあるのだが。